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無限スキル使いの男〜クソザコだけど幼女と世界を救います〜  作者: ちゃこる
だからあたしは幽霊が苦手なの!【呪いの村編】
29/63

ラディアンス、再び集う

「はー!やっと着いたぜこっちの大陸に!」


美扇達はヘヴン海域を抜け、ホウルヴィルやエフォートビレッジのある大陸、ディーム大陸へ戻ってきた。


「はぁ…助かった…そう言えば私は船が苦手なんだった…」


「楽しかったね!ねえミオ。また行ける?」


途中いざこざもあったが、なんとか無事で到着でき一安心だ。


「と、とんでもねぇこといいやがるこのロリ!ま、行けるだろうな…避けられれば避けたいが…」


「ロリって言うな!」


噛みつかれた。

久々に。


「ボルダーさん。ここからどうやってホウルヴィルまで戻る?」


そこが一番の問題だ。

もしここでお陀仏になれば今までの苦労も無駄になる。

なにより、あの二人は今も俺たちを信じてホウルヴィルで待っててくれているだろう。


「…確かここからホウルヴィルまで特に難関はなかったはずだ。それというのも、ヘヴン海域に近い地域は流通が盛んで村や街、都市が発達しているからな。だが今回はスルーだ。早く二人と合流しなくてはね」


「ボルダーさんはレアドが心配なのもあるでしょ」


「無論だ」


ーーー


ホウルヴィル宿屋


リトーはレアドにツンと冷たい態度をとっている。


「リトーさん…僕何か悪いことしましたか?はっ!まさかあの時のことまだ怒ってるんですか?」


「…あの時って何よ」


「エフォートビレッジで僕の剣鞘がリトーさんの臀部(でんぶ)に触れたこと…」


「掘り返すな!」


げしっと蹴りつける。


「ち、違うんですか?」


困惑するレアドを弄ぶように怒ったふりをした。


「まったく!なんにも分かってないのね。なんであの得体の知れない冒険者にあなたの過去を教えたのに私にはだんまりなのって聞いてんの!」


「…へ?」


「それに!バルクレアは私が寝てる間に勝手に契約してるし!もう訳わかんない」


なるほど。


「…いいですよ。お話します」


ーーー


「…あんたも私と同じね」


「…確かリトーさんも大事な人を失ったんですよね」


2人は似たもの同士だ。

大切な人を身近に失った。


「まあね。私は子供の時から1人だったからさ。あのこがいなくなってからは本当におかしくなりそうな日々だった。…いや、もうおかしかったかもね」


夜の静寂(しじま)が寂しさを(まと)う。


「そんなときあんた達の楽しそうな会話が聞こえてね…正直救いになってるわ。ありがとう」


「そんな!僕は何もしてませんよ」


「してくれたじゃない。一昨日だって私のために怒ってくれた」


ふっと二人の距離が近づく。

お互いの息を確かめ合うように。

お互いの寂しさを埋め合うように。


「…リトーさん。ダメですよ」


「ふふっ。そーね!ボルダーおじさんに怒られちゃうわね!」


照れ隠しに思い切りベッドから立ち上がり、お風呂に入ってくると言い部屋を出ていってしまった。


「勘違いしちゃうだろーが…」


ーーー


「あそこにもあそこにも!王都で見たような高層ビルよりも高層な城!異世界のイメージをぶち壊す野郎どもめ…!」


「あれらもスキルによって作られたものだ。構造や構成素材なんてまるで分かっちゃいない。できるからやってるだけなんだよ」


何だかとても危なく聞こえる。

もしかしたら思ってたよりもろくて崩壊することもあるのではないだろうか。


「登ってみたーい!」


「ダメだ!危険すぎる!」


なんて危なっかしいロリだ…


ーーー


朝。

とても快適なベッドから起き上がると、少し離れた隣には細身で美人の女性がまだ気持ちよさそうに寝ていた。


「ふわぁーあ…いいのか?」


いいのだろうか?

あの夜がおかしくなったせいで、今日まともにリトーさんと話せる気がしない。

それに、もうそろそろ父さん達が帰ってきてもいいのではないか?


朝からよく回る思考回路に自分で感心するレアドをよそに、リトーはとても気持ちよさそうに寝続けている。


「…なぜだか無性にいたずらしたい」


もう朝日も登って村人達は仕事を始めている。

それなのにいつまでもグースカ寝ているこの娘を許してもいいものだろうか。


「許せん!成敗!」


無防備な脇をくすぐり起こそうと試みる。

が…


「…んっ…あっ…あん…あっ」


…まじ?

これやっちゃいけないやつだった?

こ、これは僕の方こそ許されないな…。


レアドは顔を洗いに行くことにした。


ーーー


「…おはよ」


「やあリトーさん!おっはよーございまーす!いい天気ですね!鍛錬でもしませんか!?」


くそう…妙なテンションになってしまう。


「…私が寝てる間になにかしてないよね?」


ギクリ。

まずい顔に出たか?


「いやー!んなわけないじゃないですか!?僕は起きて直ぐに顔を洗って剣技の腕を磨いていましたよ!」


「まーいーや。もうそろそろフィリアちゃんたちが戻ってきますかね。ボルダーおじさんにもあなたの愚行をお伝えしなくてはいけないしね」


「り、リトーさん!わかってておちょくってます!?」


思わず吹き出すリトーに釣られてレアドも笑う。


そんなのんびりとした空間に朗報が入った。


「レアド様、リトー様。パーティーメンバーの方々がお目見えです!」


「…やっと!帰ってきたー!」


ーーー


「やあ、レアドくん、リトーちゃん。御機嫌よう。美扇だよ」


「フィリアです」


「お前の親父だが」


久しぶりに見てよそよそしくしてしまう。

それになんだろう。

2人とも大人びた気がする。


「お、おいレアド…リトーと何かあったりしなかったよな…な!?」


「え、は、はい。なんにもなかった…ですよ?」


「なんかあったなてめー!」


レアドの困惑顔から全て悟った。

あーこいつらやらかしてますね。


「ちち、違うのよフィリアちゃん。私たちそんな深いところまでいってないから。そもそも仲良くもないの!」


「そんな…うちの息子が。…成長したなぁ」


「誤解です父さん!もうミオウさんもやめてください!」


こんなやり取りさえ愛おしく感じる。

この後一泊して村長さんに挨拶してから、俺達はホウルヴィルを発った。


ーーー


「よし!次こそまっとうに!時の村を目指そう!二人はもう行っただろうけど俺達はまだ行ってないんだからな。ネタバレすんなよ」


ホウルヴィルから時の村までの旅路はゴーストフォレストや白金の山のような障害はなく、多少猛獣が襲ってくる程度らしい。


「それに、今はスピノスもバルクレアもいますし、きっと大丈夫ですよ」


それがあまり大丈夫でもない。

様々な修羅場をくぐりぬける中で、装備や武器、お金はほとんど無くなっていた。

俺がエフォートビレッジで買ったダガーもテレポートしてる時にどこかに落としてしまったらしい。

手持ちの武器はゴーストフォレストの蔓で作ったスリングショットだけ。

因みにエフォートビレッジでフィリアに買ってやったころすけくんのぬいぐるみも無くなっていた。

言わないでおこう…


心許(こころもと)ない…」


「確かに、ホウルヴィルを急いででたのは得策ではなかったな」


「父さん、どうします?」


ギリギリ大丈夫な気がするが。


「大丈夫かもな…。フィリア嬢ちゃんのレベルも上がったらしいしな」


「えへへ。遂に39!もうそろそろ40だよ」


すごいな!

成長速度がけたたましい。


「そう言えばフィリアのスキルレベル限界値っていくつ?」


「うんとね。75!」


なかなかすごいぞ!


「レアドとリトーはどうなんだ?」


「私はレベル30」


「僕は36です」


「私は全然上がらんね。スキルレベルが高いほど上がりにくくなるのもあるが、あまり使っていない上もう歳だからね」


レベルアップの速度には歳も関係するのか!

となると、体調とか精神状態も関係しそうだな。


「そう言えば。リトーのスキルって何?」


「え!言ってなかったっけ!?切風(カマイタチ)よ」


切風(カマイタチ)

素早い風が全てを切り裂く。

高レベルになれば料理から鉄割りにまで使える。


「切風…俺それ使ったことあるけどなんせレベル1だったからなぁ…ちょっと使ってみてくれよ」


「いいけど…」


そう言うとリトーは近くにあった気に向かって構えて。


「カマイタチっ!」


一瞬にして大木を塵に変えた。


「…怖」


なんて威力だ…

なんで今まで使わなかったんだろう。


「見ておわかりの通り。仲間がいると仲間ごと切っちゃうの。だからパーティープレイには不向きね」


やっぱり不便だ…


ーーー


王都中央宮中


「ったくよぉ!モールのじじい!下手なこと言うから捕まっちまうんだぜ!?」


「それにしてもミアスちゃんも心配なのです…」


「心配するだけ無駄っしょ!あいつ神経太そうだし」


ケラケラ笑うスパルと涙ぐむエルトワ。


「それもそぉだけどさぁ。結局俺らってなんなのぉ?」


メイズはこの一団の中で一番不思議な存在である。

唯一名前がなかったため、適当につけられたそうだが。

なぜ囚人だったのか、出身、年齢、性別さえもすべて不詳だ。

というよりは、自分の意思でコロコロ変えていた。

メリーナ戦では若い青年、今は成人女性のような見た目をしている。


「なんででしょうね。私もびっくりしてるのです」


「ま!いいじゃねえの!俺らこうやって晴れて、公式に務所から出れてるわけだし」


悪魔の下僕に仲間の絆などない。


ーーー


美扇達は依然、王都に向かって旅を続けていた。

フィリアはいなくなった村人を探しに。

レアドは王都直属の騎士になって母親の仇をその手で討つため。

リトーはヘヴン海域中央にあると言われる『ライフ』を手に入れピリーを蘇らせるため。

ボルダーはレアドを守る為。

そして美扇は寿司Tシャツを取り戻すため。


美扇の希望の低さは置いておいて、もうそろそろディーム大陸を抜け、ヘヴン海域を渡れそうであった。

事実、美扇、フィリア、ボルダーは一度ヘヴン海域を渡っている。

順調に行けばこのまま王都に直進できる。

が、そう甘くないのが現実。

ヘヴン海域を抜ければそこは新たな地。

様々な難関がある上、美扇は何故か指名手配を受けている。


ーーー


「あれ?ボルダーさん。リモ電確認しようかと思ったんだが起動しないぞ?」


「…ついに来たか。故障だ」


「え?どーすんですか!?やばいですよ!これまで結構リモ電には助けられてますからね!」


「仕方ないですよミオウさん。でも安心してください。ここいらでそれぞれリモ電持っといた方がいいかと思って…」


そう言ってレアドが取り出したのは5台のリモ電。

相当値が張りそうだが、メリーナを追い払ったことで王都から謝礼金が出たらしいのだ。


「もちろん、この5台は既にイデア更新してあります。それに、誰かが登録すれば全員と登録したことになります。そしてこの機種は最新型なので!通話とメッセージ送信ができます」


「もうほぼスマホじゃねえか!」


「すまほ…とやらはわからないけど、とても便利になったのね!いいじゃない!」


リトーは素直に喜んでいるが。


「フィリアは扱えるのか?」


「だ、大丈夫…だと思う」


「分からなかったらマニュアル読んでください」


「ところでレアド。ボルダーさんが今まで繋がってた人達はどうなるんだ?」


「あっ」


「?」


「そうだ、故障したのか…僕、故障してない腹積もりでいたのに…」


「悪い。だって荒波だったんだもん!機械壊れるじゃん!」


「うぅ…ブレア様…」


竜殺のブレアとはボルダーの旧式リモ電でイデア更新していたので、確かにもう連絡は取れない。


「また会った時にお願いしようぜ」


「そんな簡単に会えたら苦労しないんですよ!」


泣きながら発狂するレアドを宥めようとするも失敗。

どうしたものか。


ーーー


確かに期は近づいていた。

時の村より先に林檎川がある。

それを渡ると美扇達がスルーした西の都市がある。

更にその奥に背伸び村があり、その近辺にはある重要な地が存在する。

その次に美扇達が目指すのは『破邪神の誕生地』。

ヘヴン海域に出るための岬もそこにある。

『破邪神の誕生地』は一年に一度開かれる。

美扇達が上陸したのはそこよりも南なので通ることは無かったが、その扉は少しずつ着実に開いていた。

時は成った。

祭りが始まる。


ーーー


「ゴルフォール大橋もなかなかデカイな。感動するよ」


俺も久々に感動を覚えた。

これ程までに洗練された橋を今まで見たことがない。

それに渓谷には虹が架かっていて、とても幻想的だ。


メリーナが逃げたことにより、荒れていた周辺地域には日常が戻り、獣達も大人しかった。


「さあ、もうすぐ時の村だ!」


時の村のシンボルの風車が見えてきた。


「今度こそ!楽しむぞー!」

徐々に王都に近づいているところですが、ここから大事件が立て続けに起こります。

『時の村』のストーリーは箸休めになればな、と思います。

ご愛読ありがとうございます!次回も読んでね!

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