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無限スキル使いの男〜クソザコだけど幼女と世界を救います〜  作者: ちゃこる
だからあたしは幽霊が苦手なの!【呪いの村編】
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魂を抜かれた人々

「どうやらここの村人達はみんな自我を持っていないようだな。まるでNPCだ」


村中を手分けして散策し、誰も会話が成り立つものがいないとわかった。


「えぬぴーしーってなんのこと?またミオがいたっていうニホンとかいう国の言葉?」


「ああ。ま、つまりあやつり人形みたいなもんだ」


「だとすると、ゴーストフォレストの媒介虫をあの青年が怪物の見た目に変えて操っていたように、今回もマリオ(操り手)がいるってことか」


「その線もありえますね。とりあえず村の周囲を調べてみる必要がありそうね」


「リトーさんの言う通りだと思います。しかし、この村の周囲は見渡す限り草原。目立つ洞窟や森などの怪しい場所は見当たりませんが…」


「まあ、とりあえず調べて見なきゃわからんな」


「よし。まずは二手に別れる。リトー、ボルダーさんは村の周囲を。俺とレアドとフィリアは家の中を調べてみよう」


ーーー


エフォートビレッジ内某病院


病室を出たウォンの言葉を聞き、続いてブロウが疑惑とともに起き上がった。


「儀式…。あの杯を使った儀式。考えられるのはマリオネットワールド、もしくはサーチングの2つだな」


なにやらあの神杯について詳しげなブロウ。


「あれは誰の手に渡っても危険だ。事実私はあの悪夢に苛まれている。表面的な利益を得ようとすれば必ず影は濃くなる」


顔面蒼白。

自身が所有していることでその危険を回避してきたつもりであったが、まさか二方向から狙われるとは予想外だった。


「取り返さなくては…」


ーーー


ウォンの行方


「いてて…まだ痛えよ畜生…」


金の民最後の一人を連れ戻すため、傷は回復し切っていないもののエフォートビレッジを後にしたウォンは、金の民が定住していた金の村に足を運んでいた。


「こんな時間かけたんじゃ、バルト隊長に何されるか…」


夜の砂漠を歩き続けるウォンは、その砂漠の一角に違和感を覚えた。


「こんなところに…テント…?」


そこには簡易的なテントが張られていた。


「一体誰が…」


テントに触れるとそれがただの布製ではなく、できるだけ軽く、頑丈な作りをしているとわかった。


「こんな高度なテントを作る技術はこの周囲の村村にはない…まさか最後の一人が作ったのか…?」


一応金の村まで歩を進め、生活の跡を確認する。


「ここで何らかのスキルが使われた形跡がある…金の民特有の()()()()()()()()とは違うな…」


ウォンは懐からゴソゴソと何やら機械のようなものを取り出しボタンを押した。


「なっ…!『転移』だと!?そんな高位スキルを所持してる奴がこの村にいるはずがない」


自然な流れで考えれば『転移』を使ったのは金の民最後の一人ではないとわかる。

また、先程のテントで寝るにはだいたい2人が限度だろう。

突如現れた何者かが最後の一人と共に金の村を旅立ったことが一番信憑性の高い仮説だ。


「ってことは今頃我らがクレア王国に村人を探しに向かっているということか!?金の民のスキル持ち達にクーデターなんて起こされたらひとたまりもないぞ…」


また急いでその2人の行方を追うウォンであったが、巡り会うのは少し先の話。


ーーー


「ここの家にもなんの手がかりもなし」


不法侵入のようになってしまっているが、問題解決のためだ。

仕方ない。


どの家も必要最低限の装飾しかない。

しかし、ある手がかりを見つけた。


「これ…結構最近作られた食事だ。おそらく数時間以内に」


俺はキッチンに美味しそうなシチューを見つけた。

冷めてはいるものの腐ってはいなそうだ。


「味見してみる」


「ちょっと!何が入ってるかわからないのに!」


ぺろり。


「うん。普通にうまい」


呆れたような顔をして散策を続けるフィリア。

ある家に入った瞬間、悲鳴をあげて飛び出してきた。


「おい!どうした何があった」


俺とレアドはフィリアが先程踏み入った家屋を恐る恐る覗いた。


「うっ」


吐き気のする臭い。

ハエがとびまわるその部屋の真ん中には腐りかけの死体が横たえていた。


「ご冥福をお祈りします。失礼します」


礼儀正しく傾倒し、付近を探るレアド。


「え。お前気味悪くないか?」


「そうですか?平気ですよ」


あんなに内気なレアドにこんな一面があったなんて…。

少し気味が悪い。


「ミオウさん!これ!」


レアドが見つけたのは剣のような形をしたキーホルダー…?


「なんだこれは」


「わかりません。後で父に聞いてみますね」


すっかり腰が抜けたフィリアを起こしてボルダーさんとリトーに事を伝えに行った。


ーーー


「おーい!ボルダーさーん!リトー!」


村の周囲の探索を頼んでいた2人は何も無い草原にいたので簡単に見つかった。


「なにか見つけたのか、ボウズ」


「ああ。この剣のようなキーホルダー?徽章(きしょう)?に見覚えないかと思って」


「お父さん、それにこれを見つけた家には死体があった。まだ白骨化してないから亡くなって間もないと思う」


いよいよ事件性が増してきた。

探索を続けるにしてもそれ以上何も見つからず、『ラディアンス』だけでは手が足りなかった。

次の村へ進み、そこで傭兵に調査を委託するしかない。


「この剣…どこかで見たような…」


「お父さん。なにか思い出した?」


「いや、あとすこしで思い出せそうなんだ」


ボルダーさんは確かに元A級冒険者であり人の輪は広かった上情報網もあったが、今となっては隠居のように小さな村で商売をしていたので仕方が無いことだ。


「ではこれから私たちどうするんですか」


まだ怯えているフィリアの頭を撫でながらリトーが聞くも、美扇は答えを返せずにいた。

この場を去るか否か、それを決断するのはなかなか難しい。

すぐにでも立ち去り他人に委託したいが、それには美扇達は深く関わりすぎていた。

事実ボルダーは元々村長と面識があるためここで去るのは気が引ける。


「もう少し原因を探ろう。もしかしたらこの事件には犯人がいるかもしれない」


ーーー


エフォートビレッジ


ブロウ・ターボランス。

56歳。

配偶者、子供なし。

スキル『暴風』Lv78。

現在は小さな村で「サン・イン」という宿を経営している。

つい先程神杯を巡り、王都直属冒険者のグループ『ブレッシングズ』竜殺のブレア、謎の男ウォンと戦いを繰り広げていたところである。

彼は昔、A級冒険者を生業としており、各地で様々な事件やクエストを解決してきた。

その時に着いた二つ名が鬼。

鬼のように片っ端から仕事をこなすその姿を畏れた人々がつけた名だ。

しかし今ではその名を口にするものは少ない。

彼は隠れるように小さな村で経営している。

因みにボルダー・フイッシュとは旧知の中で、昔はA級冒険者同士仲良くしていた。

そんな2人は同じ村にいながらも、何十年も互いを認知していなかった。

そのことに気づくのは少し先のお話。


ブロウは病院を出ると、すぐさまサン・インに戻り、何やら身支度を始めていた。


「何やってんすか?どこかいくんすか?オーナー」


店員に聞かれるとそちらを向きぼそっと一言残すとサン・インを出ていってしまった。


「散歩」


ーーー


「なんだろう。これ」


リトーが差し出したのは先程の剣のキーホルダーと同じような代物。

ただしこれは剣ではなく槍だ。


「剣と槍…なんの関連性があるんだ?」


熟考するも答えが出ない。

すると突然ボルダーがあっ!と思い出したように発した。


「それは魔道具だ!武器精霊を呼び出すことが出来る魔道具だよ!」


説明を終えるとスッキリしたような顔をして剣のキーホルダーを取り出す。


「これは剣世界の扉を開通させるアンロックキーだ」


「使ったらどうなるんだ」


「まあ見ていなさい。皆下がって。その力を我に顕現せよ!来い!剣鬼!バルクレア!」


すると巨大な魔法陣のようなものが現れ、眩しく光り輝いた。


「うわっ!眩しっ!」


そこから煙幕とともに現れたのは屈強な男。


「久しいな。下界。我を呼んだのは貴様か」


「ああ。ボルダー・フイッシュだ。よろしく」


睨み続ける鬼の形相にたじろんでしまう。


「ふん。我は貴様らに力を貸そうとは思っていない。図に乗るな」


随分と上から目線な野郎だなー…


「ところでどうしてアンロックキーがこんなところに。とても珍しく高価なものなのに…」


「ふむ。貴様の前に我を顕現した者がこの小さな村にたまたま滞在していただけだろう。あいつはなかなか骨のあるやつだったが。お前はどうなんだ?」


「ところでその前任者って誰だったの?」


「お前らに力を貸す気は無いがあいつの仇のことだ。これだけは教えといてやる。我の前の使い手の名はクレイ・バスケット。武器精霊系魔法を究め、尚且つ沢山の体技を習得していた。あいつは元S級冒険者。様々な恨みを買っていたからな。村ごと襲われてそのままお陀仏だ」


「クレイ・バスケット…。私が昔所属していたギルドのトップに近かった男。まさかこんな所に隠居していたとは」


「そうか貴様。あいつの仲間か」


ボルダーは首を横に振る。


「いや、私が一方的に知っていただけだ。それほどまでに強いと噂がたっていたのでね」


「なるほど。ともかくあいつは沢山の恨みを買っていた。そしてその仇とは魔王軍の事だ」


「また古典的な…この世界にもそんな悪役がいたんだな…」


「魔王軍のことも知らないなんて本当にミオは世間知らずなんだから」


またフィリアにお説教されてしまった。


「それで。その魔王軍とやらがなんなんだ」


「あいつが受けた数々の依頼の中にはその魔王軍を相手にしたものもあった。あいつは何人もの幹部や部下を切り捨て、一時は本部近くまで迫ったものだ。結局本部に乗り込むには至らず、そのまま冒険者を引退。ここの村に隠居していたところ刺客に襲われたわけだ」


「また随分とありがちな異世界的な話だな」


よくよく考えてみれば大抵の異世界系作品には魔王軍がいて、それを倒すように仕向けられる訳だが、今までそんなことは無かったな。

そもそも目覚めた場所がばりばり未来感の強い王都だからな。

美しい女神とかチート魔法とかそんなもの無かったしな。

うん。


「そんで。俺たちにその魔王軍を倒して欲しいと」


やっと始まってきた異世界系ストーリーにハマりこもうとした。


「いや、そんなわけないだろ。お前達なんかに魔王軍は倒せないし。それに魔王軍に挑んでるヤツらはごまんといるぞ」


「いや違うんかいっ!そこは魔王軍殲滅を促すところだろがっ!」


まあそうでしょうね。


「大人しく寿司Tシャツ取り戻しに行けってか!?」


「すしてぃー?なんだそれ。貴様何のために王都を目指してるんだ?」


「もちろん俺の寿司Tシャツを取り戻すために…」


「すしてぃーしゃつとやらは知らんが、大した理由もないなら王都に行くのはやめとけ。どうせ無駄死にすんぞ」


「なんでお前にそんなことが言えるんだよ」


「当たり前だ。我はこの下界に初めて召喚された頃からお前のようなやつを山ほど見てきた。結果王都に辿り着いたのは強い野望を持つもののみ。適当な心持ちで挑んでいい旅じゃない」


なんだこいつ。

何が武器精霊だよ。

決めつけやがって。

どいつもこいつも勝手に決めつけやがって。


「あーあー!わかってるよ!そんなこと。異世界来て浮かれて無理やり理由作って冒険に出てることくらいわかってるよ!でも今は大事な仲間たちがいるんだ!その仲間のために…」


「まあそう熱くなるな。もう時期貴様にも王都へ行く理由ができる。これは重要なことだ」


ふと我に返る。

俺はなんて短気なんだろう。

元ひきこもりの癖に。


「んだよ。訳わかんねぇ。ボルダーさん、もうこいつから聞くことは無い。ロックしていいぞ」


ボルダーがアンロックキーに手をかざすと、再び魔法陣のような円があらわれ、剣の精霊、剣鬼バルクレアは煙幕と共に消えた。


「…悪いかっとなっちまって」


「いいんだ。今日はここで野宿しよう」


ーーー


朝だ。

雨の匂い。

懐かしい匂い。

とても幸せな夢を見た気がする。


今日は村に起こっている異変を解決しようと思う。

昨日バルクレアが語った通り魔王軍の仕業なら、余程温厚な魔王軍と言えるだろう。

命までは奪っていないのだから。

昨日確認した限りでは死者はバルクレアの前契約者、クレイ・バスケットのみ。

残りの村人は魂が抜けたように数パターンのシークエンスを追うばかりだ。

手元には剣と槍のアンロックキー。

誰が契約するかが肝だ。

そもそも契約してくれるのだろうか。


「おはよー」


「おはよう。フィリア」


さあ、今日も俺の異世界冒険譚が始まる。

いろんな名前が出てきて混乱してしまいますね。

筆者も混乱してきています。

なのでこの話を気に登場人物(重要)の名前を並べていきたいと思います!


【ラディアンス】

卯月 美扇

フィリア・ホーエンツ

レアド・フイッシュ

ボルダー・フイッシュ

リトー・バッツェ

【ブレッシングズ】

ブレア

ミリア

ザンテツ

カリゴ

【謎】

ウォン(クレア王国)

バルト(クレア王国)

リビア(???)

悪霊のペザトリア(ゴーストフォレスト)

スピード(王都)

ブロウ(エフォートビレッジ)

バルクレア(剣鬼)

スピノス(槍乙女)

クレイ・バスケット(ホウル・ヴィル)

一途 神谷(白金の山)

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