共に旅に出るもの
「今日は、鍛錬所に行こうと思う。そこで王都直属騎士大会を受けるためにこれから王都へ向かう予定の比較的強くて俺達を守ってくれそうな人を探そうと思う」
仕事が早く終わったので、旅の準備を進めようと奮起した。
そうでもしないとこの先二人のパーティーではやっていけない。
「ええぇ〜?ミオだけでいってよ〜」
ぐうたらな言葉を返すフィリア。
しかし確かに、こいつと一緒に行くと碌でもないロリコンが付いてきそうなのでやめた。
ーーー
「し、失礼しま〜す」
えいっ!えいっ!と訓練生の声が外まで響く鍛錬所におずおずと入る。
すると、一人の古参のようなマッチョが近寄ってきた。
「なんだなんだ!?お前みたいにヒョロいやつが冒険に出たいってか!?ひゃははっ!ふざけた世の中だぜ!」
少しイラッときた。
王都方面のメディアが届かないここには俺の強さを知る者はいない。
ここはひとつギャフンと言わせてやるしかない。
無駄に張り切ってみた。
「俺のことを知らないらしいな。俺は卯月美扇!全スキルを所持せしもの!」
「全スキル?アホかこいつ!」
「ばいんどばいんどばいんどばいんどばいんど」
『拘束』をここ数日で身につけた高速詠唱で段々と効果を強めていく。
俺のスキルは一発の威力は弱いが、重複できるのが強みだ。
まあ敵対モンスターは待ってくれないので油断してる相手にしか使えないが。
あっ、拘束と高速をかけてる訳では無いぞ。
「はっ!なんだこいつのスキル!弱すぎる…ちょ、なんか強まってない?いててててて!」
「はっ!これが俺のスキルだっ!」
周りの訓練生も周りによってきて、アドレナリンドバドバの俺はさらに大胆になった。
俺にはこういうところがある。
「俺と王都へ行きたい奴はいないか!今なら12歳の激カワロリもいるぞ!」
あ。
言ってしまった。
途端、半数の訓練生が俺の周りによってきて、胴上げを始めた。
「バインド…解いて…」
ーーー
「はぁ〜」
様々な訓練生を見たが、なかなかめぼしい人がおらず、落胆して帰っている道程。
帰りに夕飯の食材を買って帰ろうと中央道を歩く。
すると、裏路地から男の苦しそうな声が聞こえた。
アドレナリンが収まっていない俺は、気になって見に行った。
ーーー
「ゆ、許してくれぇ」
そこには金髪が特徴的な、トゲトゲヘアーの青年と、細身の女の子が居た。
普通頭に思い描くシチュエーションとは違い、青年の方が跪いて女の子に謝っていた。
「許すわけないでしょ!公衆の面前で痴漢して!このクソ野郎!」
どっ!っと脇腹に蹴りを入れる。
「ち、違くて!剣のさやが当たっちゃって…」
一生懸命に自分の無実を証明しようとする男。
「もう!なんなのよー!」
女の子の方も頭がこんがらがっているようだ。
ここに介入しようかどうか迷う。
別段大問題という程でもないようだ。
「ってちょっとあんた!何見てるのよ!私とても困ってい…る…」
女の子が戸惑う。
なぜだろう。
俺は女の人に困惑されるような姿をしているだろうか。
不思議に思い女の人の顔を目を凝らして見る。
と、その女の子は武器屋にいたスレンダーお姉さん系の女の子だったのだ!
ーーー
「まさか君が!恐喝は良くないよ?」
「違うんです!この人が急に痴漢したと思ったらそれが持ってた剣の鞘で…ってもう!何が何だかわかんない!」
彼女の名前はリトーというらしい。
また、痴漢容疑をかけられていた青年はレアド・フイッシュというらしい。
ん?フイッシュ?
確か、この前食べた魚の刺身、あれ、リーフフイッシュだったよな。
出来心から聞いてみる。
「リーフフイッシュって知ってる?」
「フイッシュ家の売上NO.1商品ですね!あの臭みが堪らないでしょう!?」
まずかったなんて言えない。
このまま裏路地で話すのもなんなので、リーフフイッシュの出るお店以外で、フィリアも呼んでなにかつまみながら話し合おうと思い、一度フィリアを呼びにサン・インへと帰った。