こんな感じで始まっちゃうの?俺の異世界冒険譚?
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俺はゆっくりと目を開く。
周囲を見回した。
天井ではなく灰色の空。
ここは自室ではない。
屋外だ。
見慣れない景色。
寝惚けているのか。
はたまた寝相が悪すぎて外まで転がってきたか。
引きこもりの俺についにしびれを切らした親がここまで連れてきて捨てたか、はありえないか。
ーーー
ここは異世界ではないだろうか?
随分と長時間の考察の末、引きこもりの俺が導き出した答えがこれだ。
起きている内ほとんどの時間をアニメやゲームに投じていた。
そんな俺が思うに、この景観には異世界という言葉がぴったりだ。
確かに異世界だ。
異世界のはずだ。
なぜなら現代の日本では実現し得ない建物が並んでいるから。
しかしそれらは、俺の期待していた異世界風情を裏切るものばかりだ。
高層ビルより高層な城。
空浮く自動車。
剰自律思考型ロボットが闊歩する空中道…
例に挙げた数々は、異世界、否、未来を意識させる。
ここが真に異世界であったとして、この事象は早速俺をがったりさせた。
「異世界って…現実こんなもんか…」
現実とは何か。
それを考える余裕さえない。
俺の発言を掬いとる者は誰一人いない。
これほどまでに進歩している世界なのに、俺の周りだけが閑散としている。
事実、今、俺が座り込んでいる地面は、舗装された公道という訳ではない。
ところどころ雑草が生えた大地そのものだ。
なぜ、目と鼻の先に非現実的な巨城があるのに。
なぜ、真上には空中道路がインフラ整備されているのに。
なぜ、俺の座り込んでいる地面は大地なのだろうか。
「さて…どうするかな…」
俺は寝ることにした。