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冒険者への目覚め

よろしくおねがいします。


 現実では未だ車は地上を走り、個人での飛行手段は無い世界。IT技術の発展により少しずつ空想の未来に近づいた世界の中で、一大イベントが世界中で発生した。


 世界に神は在り、神は言い給うた。世界は新たなる段階へ入った、と。


 同時に世界各国で発表される数々の新技術、魔法という未知なる技術。そしてダンジョンと言う回廊が世界各地に現れた。


 ある人は言った。『リアルがゲームに擦り寄ってきた』と。


 世界は魔法を、ダンジョンを、未知なる技術の探索を始め、日々新たな世界との邂逅を果たす。


 そうして世界は、ダンジョンを己が力によって踏破せんとする者たちをこう呼んだ。


 『冒険者』と。


 * * *


 現実に神が現れ、ダンジョンが姿を見せてから三ヶ月の月日が経った頃。


 彼──島長秀平は食卓を囲む両親と弟、妹の前で宣言する。


「父さん、俺来月から冒険者になるから」


 その言葉に父は箸を止め、母はお替りのご飯をよそう手を止めた。


「冒険者、か。お前受験はどうするんだ」


「別に、大学には行くよ。今のままでも模試の成績は問題無いし、何より推薦で受験できる。まぁ推薦に落ちたら一般受験でセンター受けてってやらないといけないけれど、先生とも進路の話をして、推薦で問題ないだろうって」


「問題ない、のか。それで、何で冒険者に?」


「だって、今の世の中冒険社会だよ。冒険者に関連する各種社会制度に法改正、保険から優遇施策から技術保証。今の生活は冒険者で成り立ち始めている世の中で、冒険者にならない選択は無いと思うんだ」


 秀平の言葉に父は再びむう、と唸ると母を見る。母はご飯をよそった茶碗を秀平へ渡しながら、問いかけた。


「でも、秀平。冒険者は危険な職業よ。命の危険がすぐ側にあるのだし、その、ダンジョンでモンスターと戦うのよ。モンスターに負ければ人は死ぬ。そんな世界で生きていけるの?」


「母さん。確かに危険はあるけれど、その分旨味もある世界だよ。モンスターの素材はモノによっては高値で取引されるし、何より未だにダンジョンでは新しい発見がある。フロンティアを開拓するには、それなりの犠牲はつきものだよ」


「母さんはね、あんたがその犠牲にならないか心配なんだよ」


「大丈夫、とは言い切れないけれど、一度限りの人生、冒険者をやってみたいんだ」


 秀平のその言葉に、母は困った顔で父を眺める。父は一つ頷いてから、秀平に言った。


「──言いたいことは分かる。だから、一つ約束をしろ。一年経ってもやっていけないと思ったら、冒険者は辞めるんだ。いいな」


「分かった、約束するよ」


 こうして秀平は冒険者となる手はずを整えた。


 世界にダンジョンが現れてから、社会は少しずつ変わった。魔法という新たな技術の導入に、ダンジョン、モンスターという概念の実装。今の社会は秀平の言う通り冒険社会と世間では言われている。


 未だ世界から紛争は無くならないが、貧困は解消されつつある。


 世界にはどこにも平等にダンジョンが現れ、モンスターという『資源』が存在し、魔法という『技術』が導入された。


 それこそはるか昔から黒魔術と称されていたものや祈祷、占いなどの技術が『本物』になった世界で、その技術が日進月歩で世界を進歩させる。それが今の世の中だった。


 秀平は両親からの承諾を得た後すぐに自分の部屋へ戻り、インターネットで申し込みを行う。


 それは冒険者互助組合──通称冒険者ギルドの開催する冒険者登録研修への参加申し込みだ。


 サイトでは毎週のスケジュールを公開し冒険者登録を行う為の研修を開催し、研修へ参加した満18歳以上の市民への冒険者資格を発行している。


 秀平の申し込んだ時点で翌週は既に埋まっている。次に申込み可能なのは翌々週であった。


 秀平は迷いなく翌々週の冒険者登録研修へ申し込みを行うと同時に、サイト上に用意されている各種様式のテンプレートをダウンロードし、記載していく。


 テンプレートの中身は満18歳以上20歳未満対象の保護者・被後見人同意書と冒険者登録用紙、そして遺言書テンプレートだ。


 遺言書に関しては社会制度の変更により冒険者に関しては冒険者ギルドが遺言書預かり窓口となる事で遺言書に正当性、法的拘束力を担保し、然るべき段階で冒険者ギルドが遺族へ開示する手はずとなっている。


 冒険者は危険と隣合わせの職業である。こうした配慮は当然に行われていた。


 同意書、登録用紙、遺言書を作成した秀平は自分の部屋から再びリビングへと戻る。そこでリビングで食後のお茶を飲んでいる父へとタブレットに表示された同意書を手渡した。


「父さん、これ保護者同意書。電子認証で承認して」


「あぁ、分かった。印鑑とかじゃなくていいのか」


「今どき印鑑なんて意味ないでしょ」


 秀平の言葉に「時代も変わったもんだなぁ」と言いながらタブレットで電子認証を行い承認する父に、さもありなんと思いながらタブレットを受け取る。


 父が育ってきた時代には正規の書類には印鑑が何でもかんでも必要で、現在のように指紋や目の虹彩での認証などで電子決済などを行う事は出来なかった。今では印鑑を持ち歩かずとも指紋や音声、虹彩での電子認証が主流であり、これも時代の一つの流れであった。


 同意書を受け取りすぐに各種書類を冒険者ギルドへと送信する。これで後は、申込み完了の連絡と研修への参加の正式な承諾が行われるのを待つだけだ。

 

 そうして待つ事数日。高校での授業が半分終わり昼休みを迎えた時に、秀平の持つガジェットにメールの受信を知らせる通知が来た。


 タイトルは『冒険者登録研修参加申し込みの承認について』


 メール本文にはつらつらと申し込みの挨拶から始まった後にサイトへのリンクが貼ってあり、リンクへ飛んだ後電子認証を行い正式に参加登録完了を行う手順が記されていた。


 秀平は手順通りに参加登録を完了させると、すぐに新たな電子メールの着信を確認する。


 新しいメールには研修場所が記載されていた。


 東京都新宿区新宿三丁目。現在冒険者ギルド東京本部が置かれている東京ダンジョン──正式名称・新宿御苑前階層型ダンジョンへの案内だった。



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