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迷信狩り 第二部 設定および後書き

 本連載作品「迷信狩り」の第四、五章をまとめて第二部とし、設定および後書きをまとめた。

 本編のネタバレはないので、最初に適当に読み流していただいても構わない。

 投稿時点で五章の連載中ではあるが、設定が多くなってきてしまったのでまとめておく。

 後書きとしては長くなってしまうため、一編分を以下に記載する。



主要な登場人物:

 カミル:

  王冠諸邦コルヴィナから帝都の大学に留学している、平凡な大学生。本作の語り手。

  同年代の男性よりも長身。

  辺境で関わった事件をきっかけに、引き続き怪現象を調査することになる。

  帝都の大学に戻った後も、ワーズワースや教授たちの雑務を引き受けてしまう。

  慎重に推理を組み立てるタイプだが、ピンチでは場当たり的になってしまうことも。


 ミシェル・ワーズワース:

  アルビオンの連合王国出身で自称、博物学者。通称・先生。

  可憐な少女の顔に、深いバリトンの声を持つ、性別も年齢も不詳の怪人物。

  コルヴィナの王立アカデミーの委任により、怪現象の調査を担当している。

  師匠のルークラフトの下でも、辺境と変わらず人を食ったような言動を取る。

  いい加減な一方で、素早い計算とハッタリで危機を乗り切ってしまうタイプ。


 松本 卯月:

  カーロイ家に仕えていた松本夫妻の一人娘で、庭師の少女。

  眉の近くで切り揃えた艷やかな黒髪と切れ長の目を持つ東洋人。

  アルデラ伯領を離れて帝都に来たものの、まだまだ人付き合いには不慣れ。

  それでも持ち前の勤勉さと知識を活かして、新たな状況に適応していく。

  どんな課題も根気よく、秩序を保って最後まで成し遂げようとするタイプ。


 ランドルフ・ルークラフト:

  アルビオンの連合王国出身で、帝国大学の教養学部で教鞭をとる教授。

  長身痩躯に面長の男。

  准男爵の爵位を持っているが、社交界には関心がない根っからの研究者。

  弟子のワーズワースの勝手な言動を(たしな)めつつも、その成果は認めている。

  大の猫好きで、ウルタールという猫を飼っている。


 皇女:

  皇帝の次女。本名はマリアンネ。

  皇后譲りの絹のような金髪に、濃紺の瞳。

  両足を患っており、特注の車椅子を使っている。

  皇帝への御進講の折に、皇后や廷臣たちと共に帝国大学を訪れる。

  幼いながらも聡明で理解力が高く、子供らしい好奇心に溢れる。

  

 ボルネミッサ・イグナーツ:

  ジェピュエル総督府のトルダ市を治める子爵。通称:子爵。

  右目は義眼で、左手を失っている。壮年の男。

  クルジュスコール女伯、ハラー・ヨゼフィンの実兄でもある。

  総督府議会に参加する大貴族の一人であり、『皇帝派』大貴族の筆頭。

  傲慢で冷淡な言動のため敵も多いが、政治家としては現実主義を貫いている。



国家:

 帝国:

  大陸の東側を支配する帝国。しかし、各地の帝国領邦への支配力は緩んでいる。

  先帝の死後、選帝侯と呼ばれる領邦君主が台頭し、反皇帝の内戦を引き起こした。

  内戦に対して先帝の皇女、現在の皇后は王冠諸邦コルヴィナ女王として即位し、

  コルヴィナの大貴族(マグナート)とともに選帝侯同盟軍を迎え撃った。


 王冠諸邦コルヴィナ:

  帝国の東方に位置する領邦。カミルと卯月の祖国。

  女王の即位後、王立アカデミーを構えるなど、科学の啓蒙に邁進している。

  しかし、実相としては選帝侯同盟軍との内戦を通じて、既得権益者である

  大貴族(マグナート)に有利な施政が行われていると噂されている。


 北方の連邦共和国:

  帝国の北方に位置する連邦共和国。スヴィーデン男爵の祖国。

  大国に挟まれた小国でありながら、科学と交易の発達した共和国。

  各地の友好国に対して多くの知識人や技術者らを派遣しているが、

  出身者が各地から本国への連絡を行い、国の発展を実現している。


 アルビオンの連合王国:

  大陸の北西に位置する島の王国。ワーズワースとルークラフトの祖国。

  新大陸の植民地の開発に熱心な国であり、多くの冒険者や探検隊が誕生している。

  その一方で、帝国と同盟を結ぶことで、大陸への影響力を保持している。

  議会の影響力が強く、国王の立場は単なる権威として形骸化している。


 ガリアの王国:

  帝国の西に位置する王国。 ニコラス・レミュザの祖国。

  優れた博物学者を擁する国家だが、その知識の多くが軍事転用されている。

  選帝侯同盟軍を裏から支援し、帝国の支配力を削ごうと画策している。

  また、ジェピュエル総督府の独立を支援すべく、王室との婚姻を狙っている。


 南方の共和国:

  帝国の南西に位置する共和国。ヴィルジニア・オットボーニとアウレリオ司祭の祖国。

  かつては交易で栄え、内海を支配するほどの強国だった。

  しかし、今では新大陸の富を利用する列強の影響力によって見る影もない。

  それでも諜報活動や教皇庁との関係によって、他国への影響力を維持している。



組織:

 選帝侯同盟軍:

  帝国内で皇帝に反旗を翻した選帝侯たちの同盟軍。

  選帝侯は選挙によって次代の皇帝を選ぶ、帝国内で最も重要な領邦君主である。

  その半数が帝国から離反し、選帝侯同盟を結んで内戦の端緒を開いた。

  現在では内戦が膠着状態に陥り、帝国との和平工作に奔走している。


 帝国大学:

  帝都にある大学。カミルが留学している。

  神学部、法学部、医学部、教養学部の四学部が設置されており、

  遠方の国や土地から招聘された大学教授たちが教鞭を執っている。

  海外から様々な博物が集められ、標本だけでなく実験動物も飼育している。


 枢密内閣官房ゲハイメ・カビネッツ・カンツライ:

  帝都を本拠地とする帝国の諜報機関。バルテンシュタイン男爵が官房長を務める。

  帝国に対する防諜および他国への諜報を行う組織。

  密偵の任務や暗号の解読によって、帝国への陰謀を未然に防ごうとしている。

  その諜報網は、西はガリアから東はジェピュエルまで、広範囲に及ぶ。


 ジェピュエル総督府:

  王冠諸邦コルヴィナの東に位置する土地。かつては独立した公国だった。

  元々は王冠諸邦の一部であり、コルヴィナ王を選出するほど由緒ある土地だった。

  現在は帝国が異教徒から支配権を取り戻し、総督府を置いて支配している。

  かつて公都だったベルグラードの他、クルジュヴァール市、トルダ市などの街が存在する。


 クルジュスコール:

  クルジュヴァールにある謎めいた学舎。数々の知識人を輩出してきた。

  秘密に満ちた場所であり、外国からの学生は一切募っていない。

  元々は異教徒に対抗できる宣教師を育成していたが、いつからか屍霊術の研究が始まった。

  医学によってジェピュエル公国を支えた原動力であり、現在も優れた医師を擁する。



後書き:

 この作品の第二部は怪現象を調査するという体で陰謀に関わっていく、いわゆる推理小説である。

 しかし一方で、第一部と同様にモデルとした一八世紀中葉の中欧および東欧の風俗を主眼においた歴史小説でもある。

 ただし、厳密な歴史小説としての構想は、筆者自身の考証不足や一部のトリックの整合性のため、近世ヨーロッパ風ファンタジーという形へ変化せざるを得なかった。

 歴史上実在の人物も数多く登場するが、それらを一種の作風として理解していただければ幸いである。


 そんな混沌とした中で、第二部の通底にあるのは当時の愛と偽りであり、これは各話の事件にも共通するテーマである。

 民衆の関心と言えば、結局、愛と偽りに収斂する。これはどのような時代でも変わらない。読者も勿論、これらの要素を求めていると、筆者は確信している。

 作中の舞台は、帝都から辺境、謎めいた学舎と移り変わっていくが、それぞれの場所で異なる視点からこのテーマを扱っている。


 恋愛、慈愛、友愛。家族愛に兄妹愛、そして師弟愛や愛国心。とにもかくにも、人間関係と社会性の中には愛がある。愛はあらゆる形で再認識されるが、そこには多少の偽り、あるいはすれ違いも存在する。

 皇后のモデルとなったマリア・テレジアの宮廷は多くの愛に溢れていた。彼女は父である先帝が世継ぎに恵まれなかったこともあり、より良い夫婦生活を心がけたと言われる。出産について殆ど安産であり、一六人もの皇子と皇女をもうけた。

 また、先帝の時代から地位を維持しようと躍起になる老臣にも気を配りながら、宮廷の若返りを図った。マリア・テレジアはフランスとの外交革命を達成した貴公子然としたカウニッツ伯爵や、スヴィーデン男爵らオランダの医師など、優秀な人々を次々に招聘したが、その登用には彼らの愛国心があってこそだったと言える。


 彼女の時代には選帝侯の中からプロイセン王国が台頭し、殆ど海外植民地を持たないハプスブルク帝国は窮地に陥った。

 そのような世界情勢の中で、他国と渡り合うには諜報や暗号による連絡が不可欠だったと言えよう。植民地政策で遅れを取ったハプスブルク帝国は、皇帝の権威と諜報によって、その命脈を繋いだのである。

 フランツ一世の次に皇帝となったマリア・テレジアの息子、ヨーゼフ二世はポーランド割譲という形でプロイセンと結んだが、それは母であり共同統治者であるマリア・テレジアの反対を押し切った形で成立した。

 政治は家族関係をも上回る形で人々を翻弄し、やがてマリア・テレジアがフランスへ嫁がせた皇女、マリー・アントワネットはギロチンの露と消えることになる。


 以上のような簡単なまとめではあるが、愛と偽りこそが、第二部の隠れたテーマである。


 のんびり農業して料理を作ったり、ハーレムで女性を囲ったりなどといった、なろう系ノベルとして人口に膾炙する展開は皆無だったが、如何だっただろうか。

 執筆に関して、このようなテンプレから外れた初心者の処女作に対して、様々な助言をくださった某掲示板の皆様には本当に感謝している。

 当初、各章で登場する女性キャラや重要人物は旅に加わる予定だったが、結局ゲストキャラとして各章で別れることになってしまった。章を跨いで登場するキャラはその例外となる、作者にとっても出しておきたいお気に入りキャラだったと言える。

 結果的にこうした設定と展開の良し悪しは、筆者自身も分からないが、書いていて楽しかったことだけは確かである。


 長々と書いてしまったが、すべての読者の皆様に、最大の感謝の思いをお伝えして、後書きも終わりとさせていただきたい。

 今回も、復職が決まってドタバタしながら執筆を開始したため、土壇場でトリックや推理手順を考えるなど酷い状況だったが、皆様のおかげでなんとか走り切ることができた。

 ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました。良いお年をお過ごしください。


 追伸:第三部は新大陸でネルギガンテを狩ったり、夢の世界で神話生物を狩ったりすると思います。

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