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プロローグ

 日が昇り始め、小鳥の(さえず)りが響く朝。

 とある屋敷内の廊下にカツ、カツとブーツの足音が響き渡る。歩く度、黒と白を基調としたエプロンドレスがフワフワと(なび)く。

 初めてこの服を着たときは違和感しかなかったが、今では毎日着ているからもう慣れたものだ。


 目的の部屋の前へとやってきた()は、重厚な造りのドアをノックする。一度、二度、三度。――返答はない。ノブを回しドアを開き、部屋の中へと入る。


 部屋の中は薄暗い。窓際に掛かっているカーテンの隙間から覗く光を頼りに、窓際まで足元に気を付けながら慎重に歩いて行く。まあ、足元につまづくようなものは置いてはないことは分かってるが。昨日もその前の日も俺が掃除したから、分かっていることだ。

 そして窓際へと辿たどり着き、勢い良くカーテンを開けた。部屋中に日光の暖かな光が差し込んだ。光を体に浴びると体に感じていた怠さが更に増すが、それは(こら)える。これぐらいはあの痛み(・・・・)に比べれば遙かにマシで、我慢できる範囲だ。


 ベッドの方に目を移すと、目的の人物がそこにいた。まだ上掛けを体に被ったままの人物をじっと見つめる。動きは、ない。

 ベッドの前へ移動した俺は、上掛けの上から体を左右に優しく揺すって、こう言った。


「ご主人様。朝です。起きて下さい」


 しかし、目的の人物からは反応がない。もう一度揺すって声を掛けるが、相変わらずの無反応。それを何度か繰り返したあと――溜息を吐く。

 俺はこの行為は無意味だと判断した。いつも通りのことだ。


 そしてベッドから一歩後ろに下がり、指をパチンと鳴らす。その瞬間、上掛けが吹き飛び、ベッドが暴れ馬のようにガタガタと前後へ揺れ出す。その揺れでベッドの上の人物は目を覚ましたようだけど、ベッドの動きは止まらない。

 最後はベッドが横に傾き、乗っていた人物が滑り落ちていく。そして俺の目の前に落っこちてきた人物に対して、お辞儀をしてこう言うのだった。


「おはようございます、ご主人様」


   ※


 俺はこの屋敷に住み込みで働いている。名前はリリス。元々名前はなかった――いや分からなかったのだが、ご主人様に付けてもらった。

 

 俺には前世の記憶がある。とは言ってもほとんどないに等しいが。分かっているのは年齢と性別と、死ぬ最後の瞬間。他の記憶はぼやけていて、ほとんど分からない。

 前世は大学生で男だったはずだが、現世ではどういう訳か――幼い少女になってしまっていた。

 

 ――吸血鬼で奴隷の、という前置き付きで。


   ※

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