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宴の終わりに

歓迎の宴も終わり、その部屋にはヴィヴィとドーラだけが残されていた。

いつものようにフィアはヴァロを見送りに行ったのだ。

おそらくしばらくは戻ってこないだろう。

例の聖都の一件以来フィアは理由をつけては一緒に居ようとする。

フィアの考えもわからなくはなかったので、ヴィヴィは見て見ぬふりをしていた。

「いやー、仕事も紹介されて、今日はなんて日だろうネ」

窓辺に腰かけながら、元魔王は葡萄酒を片手に夜空を仰ぐ。

足元には酒瓶が数本転がっていた。

ヴィヴィは、この男と出会ってからこんなにはしゃいでいる様をみたことがない。

酔っているようには見えないが、ドーラも相当飲んでいる。

「ふーん、紹介されたんだ」

机にだらしなく這いつくばりながら、ヴィヴィは相槌を打つ。

すでに彼女も酔いが体全体に回っていた。

三人で小樽とはいえ一つ飲み干し、さらにいくつか地下から引っ張りだしてきている。

既にどれだけ飲んだかわからない。

「ヴァロの兄さんのところサ」

ヴィヴィは思わず吹き出してしまう。

「…ああ。なるほどね…。大変だろうとは思うけど、がんばって」

ヴィヴィはにやけ顔で適当な返事を返す。

これ以上危険因子が増えたところで大差はないだろう。ヴィヴィは既に達観の領域に達していた。

「…ああ、がんばるサ。新しい人生の一歩じゃないカ」

希望に打ち震えた新入団員のような言い方だ。

明日の楽しみが増えた。ヴィヴィは意地の悪い笑みを浮かべる。

そこでふと疑問に思ったことを口にしてみる。

「前から一つ聞きたかったのだけど、あなたにとっての王とは何?」

以前から聞いてみたかった質問だ。

彼は自身のことをなんと思っているのだろう。

「すべてを統べる存在だネ」

ドーラはその問いに即答する。

「それをいうならばあなたは王とは呼べないわね」

「もちろん、僕はただ魔王に仕立てられただけサ。僕自身魔王と名乗ったことはないヨ。

もっとも仕立て上げられたと気付いたのは封印された後だけれどネ」

ドーラの言葉に妙な引っ掛かりを覚えた。

「…あなたのその言い方だと、魔王は何者かの意図…」

ドーラはヴィヴィの口に手を当て、首を振る。

「そこから先は言わないほうがイイ」

ドーラの顔は笑っているものの、何も言わせないという拒絶の意思があった。

「時が来れば自然と知ることになる」

「それは…」

ヴィヴィの問いを遮るようにドーラは続ける。

「そうそうヴァロ君には彼の躰のことを話さなくていいのかい?

彼は君が何かかくしていることに薄々気づいているみたいだったヨ。

彼は自身の寿命のことだと思っていたみたいだケド」

「…機を見ていずれ話す」

机に寝そべりながら彼女はドーラと目を合わせようとしない。

「早くしたほうがイイ。巻き込まれてからでは遅いんだヨ」

「私がそんなことをさせると思う?」

平静を保ってはいるものの、ヴィヴィの言葉には冷気を纏った凄みのようなものが込められていた。

「君にとってはどうせすぐ死ぬそこらにいるただの人間の一人ダロ?

そこまで肩入れするものかネ」

「ここに来る前の私ならこれほど肩入れすることもなかったかもね。

…変わったのよ。がっかりさせてしまったかしら?」

最後には皮肉を込めているのがヴィヴィらしかった。

「…いいや、というか期待以上ダ。やはり君は素晴らしいネ」

ドーラは自然な笑みを浮かべる。

この体の本当の持ち主は絶対にこんな笑みはしないだろう。

「…変な男」

ヴィヴィはそう呟いた。

「そうだ。一つ間違いを指摘させてもらってもいいカイ?」

「…ええ」

ヴィヴィは思わず身構える。

それというのも数日前にヴィヴィはドーラと魔法の式について口論になった際、

この目の前の男に完全に論破されているのだ。

「そう身構えなくてもいいヨ。ただの答え合わせダ。

ヴィヴィ、僕が脱出用にあらかじめ三冊の本を用意していたと君は言っていたネ。

君の推論はおおむね正しいヨ。

あの三つの本に魔法式を分割して、脱出用にあらかじめどこかに隠しておくのはありえることだヨ。

場所、時代背景、そして当時の状況から見ても僕がその三つの本を作ったと考えるのは至極当然の流れだネ」

「何が言いたいの?」

「ただその推論だといくつか矛盾が出てくる。

僕が封印される座標をあらかじめ知っていると思うカイ?それに分割型魔法式なんて、四百年前の僕は知らなかったんだヨ。

一体全体知らないものを誰が使えるっていうのサ」

「…」

その言葉の意味が分からずヴィヴィは口を開けたまましばらく動けずにいた。

あまりにも自身の予想を超えた答えを突き付けられヴィヴィは軽く混乱していたのだ。

「つまり三つの本は僕が封印されてから作られたものだってことサ。

もっとも僕が作ったのなら分割式なんて面倒なことはしないで、一冊に完成した式を描くけどね」

ドーラのいうことが本当ならば、あの三冊の本を作った人間は他にいるということではないか。

『分割型』と『三次』そんなものを当時両方使えるとなれば使える者もおのずと限られてくる。


一人の魔女がヴィヴィの脳裏によぎる。


それは断じてない。彼女は封印した当の本人のはずだ。

ヴィヴィは頭を振る。

「ただ、作った当の本人は立場上それを使うことはできなかったのサ」

ヴィヴィはドーラの言葉に頭が真っ白になる。

例えるなら竜巻で家ごと吹き飛ばされた感覚だ。

「魔法式に付け足されてた符牒にはね、『バカドーラ、帰ったら真っ先に来い』って書いてあったヨ。

ハハハ、全くあいつらしいよネ。もっとも君らの世代だと実際に会ったことはないだろうケド」

その言葉が決め手になる。

わからないことだらけだが、一つだけはっきりしたことがある。

彼を解き放つことはあらかじめ決められていたことなのだ。目的はわからないが。

「僕は君らには感謝してるんだヨ。おやすみ、また明日」

男が去った後、ヴィヴィはテーブルに頭をぶつけた。

自身の無知さと未熟さに腹がたった。

「どうしたんですか?額から血が…」

状況が呑み込めずフィアは

「フィア、また少し研究室に籠るわ。なんかわからないことがあったらあれに聞いて?

食事はいつもと同じように頼むわ」

そういってヴィヴィはすっと立ち上がる。

あの男たちの鼻を明かして見せる。『紅』はその怒りの矛先を研究に向ける。

彼女はその点でひたすらに前向きだった。

こんにちは、上総海椰です。

最近やはり自分は書く側の人間だと理解。

楽しみがほぼこれだけになってるのってすでに終わってるよね…。下手だけどw

たとえそれが評価されなくても書くのは楽しい。すごく楽しい。まじで楽しい。

…なんか最近いろいろ楽しめなくなってきたのですよ。

ソシャゲも…漫画も…小説も…。

なんかその先を予想してしまう病気になってきておる…。

暇つぶしに掲示板に漫画の先の予想とか書いたら制限かかったしw

もう書きません。ごめんなさい。

音楽はドラポのやつ聞いてます。今のとこ覚醒の旧支配者の道中、ボスがお気に入り。あれは音楽は最高に好き。ソシャゲとしては…だけどw


本編の話をしましょう。聖都事変の後日談で、前の話を補完する内容になっております。駆け足で終わりにしてしまった感がある…。

ネタバレするとアビスに堕ちた大魔女カーナが聖都事変の発端を作ったことになります。はた迷惑な話ですね。

ドーラ君いい奴ですが、結構やんちゃもします。

怒らせるとなかなかに怖いです。何せ元魔王なので。

本当はもう一つ、第一王女カーナと魔法庁長官ドーラルイの話を予定していたのですが、あまりにネタバレになるため、短編は取りあえずこれで終了ってことで許してください。

カーナの決断、ドーラルイの苦悩、それを取り巻く宮廷の人間模様、さらにクファトスとドーラの三百年ぶりの再会などなど…。

書いてたら終わらなくなる…。一重に自身の能力不足が原因なんですがねw

この話はまた後で描くことにします。

次からはササニーム編に突入します。ワールドワイドな話になっております。

異邦の魔軍がササニーム地方、遺跡都市ミィドリイクを包囲。

人間界と異邦の緊張が高まります。

ヴァロたちはそれをどうにかするために遺跡都市ミィドリイクに向かうことになります。それには第三者の思惑も絡んでいて、ヴァロたちはその渦中に巻き込まれていく。

よろしければ聖剣破壊でお会いしましょう。

感想とかあればmomongacofe@gmail.comまでお願いします。

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