俺達行動迅速すぎw
DEX0の近接職誕生という悲劇に涙した俺達は、とりあえず解決策を考えることにした。
「そもそもさ、DEX0で剣を振るとどんな感じで当たらないのか俺ら知らないよな。」
「確かに。他のVRMMOでもミスの時のモーションは違うしな。
あるゲームでは相手に当たる瞬間剣身の実体がなくなって当たらないって感じだし、他のゲームでは相手に当たる瞬間に急に剣筋がブレて当たらない、みたいな感じだしな。」
VRMMOはまだ発売してから4年とちょっとしか経って無い。
VRMMOのテンプレみたいなものがまだ出来ていないため、ゲームによって設定にかなりバラつきがある。
こればっかりは仕方がないね。
「成る程。じゃ、早速試してみようぜ。」
燃えてきたのか、寺本がその場でステップを踏み始める。
が、彼は重大なことを忘れている。
俺は、それを気づかせるために一つアドバイスをした。
「その前に、お前一回自分の装備一覧見てみろよ。」
「ん?何かあるのか?
って、なにィ!?」
彼の装備一覧にも、書いてあったのだろう。
『武器 なし』と。
つまり、何が言いたいかというと。
「武器、買いに行こうぜ。」
「そうだな。」
俺達は武器屋を探しがてら、様々な機能を確認し合った。
まず、フレンド機能。
これは、登録しておくとその相手の位置やレベルなどの情報がわかる、と言うものだ。
勿論、俺と寺本で登録をしておいた。
次に、チャット機能。
といっても、これは他のネトゲとそんなに変わらないものの筈だ。
種類は全体チャット、パーティーチャット、ギルドチャット、ダイレクトチャット、ローカルチャットの5種類。
まあ、標準装備だな。
あと、面白い機能があった。
その名は『攻略掲示板』。
wikiのようなETO2専用の攻略用サイトと、ETO2専用の2ちゃんみたいなのが詰め込まれた機能だ。
まだプレイヤー全体が混乱の真っ只中にあるため何も書かれていないが、何れここには大量の攻略情報やマップ、スレッドが立つことだろう。
いやあ、楽しみだ。
他には、パーティ、ギルド、メール機能もあった。
勿論、その場で俺達はパーティを組んだ。
これで、お互いに経験値が入るはず。
他にもまだ調べる所はあったのだが、丁度『武器屋』と書かれた看板を見つけたので、機能確認は後回しになった。
因みに、ここまでの道のりは全て俺の電脳に保存されている。
フッフッフ、もしかしたら一番最初にこの街のマップを『攻略掲示板』に貼ることになるのは俺かもしれない。何か燃えてきた。
ニヤニヤしながら『武器屋』に入った俺を迎えたのは、とにかくデカくてゴツイおっちゃん。
いつも思うんだが、何で鍛冶屋はゴツゴツのおっちゃんと相場が決まっているんだろうか。
美少女な鍛冶屋がいたっていいじゃないか。
遅れて入ってきた寺本が、どうでもいいことを考えていた俺の後ろで感嘆の声を上げた。
彼の目線は、完全に店に並べられた刀剣にいっている。
同じ男として、気持ちは分からないでもないが。
俺達が勝手に店内を物色していると、さっきまで動いていなかった鍛冶屋のおっさんが、声を出した。
「お前ら……。どんな得物が欲しいんだ?」
「「!?」」
モブが自分から会話をするだと!?
そんなことが出来るのは俺が知っている中ではチュートリアルのアリスくらいだった。
凄えな、ETO2。滅茶苦茶凝ってたじゃねえか。デスゲームになったのが残念だ。
「おい、お前ら…………。なぜ返事をしない?冷やかしか?」
驚きすぎて返事ができない俺らを前にして、鍛冶屋のおっさんが不機嫌感丸出しで文句を言う。
慌てて俺は、返事をした。
「いえ、すみません。余りの武器の素晴らしさにボーっとしてしまいまして。
所で大将。何か、命中率の上がりやすい剣はありませんか?」
下手なお世辞だったが、鍛冶屋のおっさんはそれで満足したようで表情が柔らかくなった。
上機嫌になった彼は無造作に剣の山の中から5本ほど選び、俺達の前につき出した。
「こいつらは、命中を上げることに心血注いだ逸品だ。
…………見ていけ。」
おっさんから剣を有りがたく渡してもらった俺は、早速剣の性能を調べる。
5本の剣の性能は、全て同じだった。
アイアンレイピア 片手剣
DEX+20%
必要 STR30
剣の性能をみた俺達は、溜息をついた。
そして、二人して呟く。
「何で%単位で上げるんだ………。」
「ステータス0は永遠にゼロのままでいろってことかよ………。」
なんということだ。酷い。酷すぎる。
この分だと防具もこんな感じで%で上がるのだろう。
なんということだ。
今、この瞬間俺達のステータスが完全に地雷であることが確定した。
「って、落ち込んでいられるか!」
「おっさん!命中じゃなくて、攻撃力が上がる剣はないか!?」
「…………あるぞ。」
鍛冶屋のおっさんは俺等から剣をひったくり剣の山に混ぜた後、3種類の剣を剣の山から出した。
「攻撃力に特化した剣だ。それぞれ特徴があるから見ておけ………。」
「「あざっす!」」
早速、3本の剣を鑑定する。
結果は、こんな感じだった。
ヘヴィソード 両手剣
STR+20%
DEX-10%
AGI-10%
必要 STR100
ブロンズバスターソード 両手剣/片手剣
STR+15%
AGI-5%
必要 両手/STR50 片手/STR100
アイアングラディウス 両手剣
STR+25%
DEX-10%
AGI-5%
必要 STR135
「アイアングラディウスは使えないな…………。
かと言って、STR以外の-が意味を成さない俺にとってヘヴィソードを選ばない手はないな。
よし、おっちゃん!ヘヴィソードを買うぜ!いくらだ?」
「…………。3000ゴールドだ。」
因みに、俺等が最初の所持金として持っている分は5000ゴールドだ。
大体、最初に買えるポーションの値段が500ゴールド位だった筈なので、この値段はかなり良心的だ。
「いいのか?それ、普通だったら倍の値段がするだろう。」
「いや、いいんだ。こいつは売れ残りだからな……………。
使われないよりはマシだろう。」
おお、こんな受け答えができるまでAIが進化してるのか。
すげぇな、オイ。
「んじゃ、遠慮なく買わせてもらうぜ。ほい、3000ゴールドきっかりだ。」
「毎度あり。他に、欲しいものはあるか?」
よし、やっと俺の武器が買える。
「火属性の杖を一本。」
「判った………………。」
おっさんは店の奥にいきなり入ったかと思うと、杖を幾つか抱えて持ってきた。
「火属性の杖でも素早さも上がる奴を持ってきた。
お前、実は素早さを上げている魔術師だろう?」
「ッ!?わかるのか?」
「ああ。見ていればな。」
ぶっちゃけただ単にステータスを見ただけなのかもしれないが、それでもそれを見て使用者に合いそうな武器を自分で考えられるというのは結構凄い。
AI万歳。科学万歳。
俺は、開発者の手腕に感心しながら、杖を見ていった。
ホットジェルの杖 杖
INT+3%
AGI+3%
火属性+5%
必要 火属性魔法 レベル1
フレアバードの杖 杖
INT+4%
AGI+6%
火属性+5%
必要 火属性魔法 レベル3
レッドスネークの本 本
INT+7%
AGI+2%
火属性+7%
必要 火属性魔法 レベル3
フレアバードの杖とレッドスネークの本で迷ったが、結局俺はレッドスネークの本を選ぶことにした。
前作のETOでは本の方が個人的に使いやすかったからだ。
因みに、杖と本の利点をそれぞれ言っておくと、
・杖
魔法を少しだけ貯めることが出来る。
最大まで貯めて撃つと、威力が1.5倍になる。
・本
魔法のクールタイムがない。
連続して同じ魔法が使える。
こんな感じだ。
俺は比較的連射タイプだったので、本を愛用していた。
レッドスネークの本に掛かった金は、3500ゴールド。
若干ヘヴィソードよりこっちのほうが高かったな。
が、これも滅茶苦茶良心的な値段だ。この店、覚えておこう。
こうして装備を新調した俺達は、混乱から落ち着き始めたプレイヤーを眺めながら、野生モンスターの居るであろうフィールドへ向かうことにした。
他のプレイヤーはやっと状況整理を始めだしたところなのに、やっぱ俺等行動早いなぁ。
1日目
シルト 男 レベル1
HP 100/100 MP 163/163
STR 0(0)
VIT 0(0)
INT 40(47)
MND 0(0)
DEX 0(0)
AGI 60(49)
スキル
火属性魔法 レベル3
ファイアーボール フレイムバレット
魔力探知 レベル1
危機一髪 レベル1
空間魔法 レベル1
跳躍強化 レベル1
中二病 レベル3
スキルポイント 0
武器 レッドスネークの本 本
INT+7% AGI+3% 火属性魔法+6%
上防具 ノービスウェア(上)
下防具 ノービスウェア(下)
アクセサリ1 なし
アクセサリ2 なし
†TERROR† 男 レベル1
HP 262/262 MP 100/100
STR 100(120)
VIT 0(0)
INT 0(0)
MND 0(0)
DEX 0(0)
AGI 0(0)
スキル
剣術レベル4
スラッシュ ワイドスラッシュ
歩行術レベル3
ステップ
危機一髪レベル3
スキルポイント 0
武器 ヘヴィソード 両手剣
STR+20% AGI-10% DEX-10%
上防具 ノービスウェア(上)
下防具 ノービスウェア(下)
アクセサリ1 なし
アクセサリ2 なし