死時期
あるところに自殺志願の高校生がいました。
自殺志願といっても、この年頃というか年代というか、覇気が無いと言われる世代でしたから、
その子も漏れなく「死にたい」が口癖の高校生というだけでした。
その自殺志願の高校生には、他と少し違った部分がありました。
この年頃にありがちな妄想の類いではなく、れっきとした(科学的に証明はできませんが)
"能力"でした。
それは、"役に立つ虫の知らせ"です。
人が死んだとき、大抵一人は「虫の知らせを聴いた」なんてのたまうやつがいますが、
それを人が死ぬ前に発表することはありません。
聴いたところで粗大ゴミ以下です。生ゴミ以下です。価値皆無です。
しかし、その自殺志願の高校生は違います。
人が死ぬ前に「その人が死ぬ時期がわかる」のです。
直感的にわかるのです。
しかしそれだけです。
時期がわかるだけです。
時期がわかるだけで、死因はわかりません。
わかったところで、死を回避できるかどうかもわかりません。
そんなことをやったことがありませんから。
「死にたい」が口癖の覇気の無い、後ろ向きな高校生でしたから。
ところで、その自殺志願の高校生が自殺に踏み切らない理由は、「死にたい」は口癖であるだけで、
実際は死ぬ勇気が無いだとかそんなふぬけた理由ではなく、単に自分の死ぬ時期が、
七十年は先だと知っているからです。
そして。
目の前に、"常に明日死ぬ予定となる"少女がいたからです。