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第九話  ふと思いたち

登場人物


乙姫羽白オトヒメハジロ

 本作の主人公。

 性格が残念で変わり者な所がある。

 本人曰く、手先が器用な事と体を鍛えている事が長所。


●麦蒔まゆり(ムギマキマユリ)

 学校一の超絶美少女にして学年一の才女。

 しかしその正体は、性格が残念すぎる唯我独尊女。

 家から近いというだけの理由でこの高校に通っている。


●白鳥えみり(シラトリエミリ)

 茶髪でミニスカな、よくいる今風女子高生。

 顔は可愛くてスタイルも良い。誰にでも明るく接する性格。

 学内のリア充カーストで上位に位置する。


●朱鷺やよい(トキヤヨイ)

 一年A組担任にして生活指導担当教師。担当科目は国語。

 三十?歳で未だに独身。

 羽白曰く、見た目もスタイルも良いらしい。


   第九話  ふと思いたち



 昨日の話をまとめると、結局のところ麦蒔が最後に言ったセリフが正しかったらしい。

 つまり、犯人が自分じゃないと言っているから、それが正しいかどうかの判断材料として、ぼくの意見も聞いてみたということ。本当に犯罪者扱いされていたとは……。

 しかも今日はD組の和泉ん家に家庭訪問と言う名の家宅捜査に行くらしい。

 ぼくも犯罪のプロとして付き合えとかなんとか言われて……。捜査に協力はするからさ、その認識は改めて欲しいんですが……。

「あら? 乙姫くんから犯罪スキルを取り除いたら、何が残るのかしら?」

「いっぱい残るよ!」

 手先が器用とか体を鍛えているとか……。それって犯罪スキルっぽいな……。

 と言うことで、今はやよい先生の車で移動中。ぼくと麦蒔を乗せて、自宅謹慎中の和泉の家へ向かっている。

 因みに、麦蒔は一応被害者なので来ないほうがいいんじゃないかと聞いてみたのだが、

「何を言っているの? 行くわよ。直接対峙は交渉の基本よ?」

 とかなんとか。何を交渉する気だよ?

 和泉の家に着いてからのぼくと麦蒔の行動は早かった。

 まずはぼくの捜査状況から。

 和泉の部屋の中から怪しい場所を全てピンポイントに捜査した。

 彼の性癖が手に取るようにわかるDVDの山、彼愛用のカメラ、盗撮写真の山。全て発見させてもらった。そしてパソコンの中身も完璧に摘出させてもらった。

「な、なんで何重にも隠したフォルダまで見つけ出すんだ!」

 とか喚いていたが、ぼくには手に取るようにわかるよ。

 麦蒔のフォルダの中身が一番多いな。とりあえず今回の件に関係ありそうな証拠は全て押収っと。

 あとは、この写真の山だよな。デジタルデータじゃ無いので複製はされていないようだが、一応あそこも調べてみるかな。

 って事で、ぼくはやよい先生にアイコンタクトをした。

 やよい先生は有無も言わさずに和泉をコブラツイスト。「痛いです痛いです」と叫びながらも身動きは取れないようだ。

 ぼくは和泉のズボンを脱がして探ってみた。メモリーカード見っけ!

 そして、麦蒔はというと本当に交渉をしていた。

 ――あなたがいくらの利益をあげたのかは知らないけれど、私の写真を売ったのだから利益は全て私のものよね?

 ――ちょっと待ってくれ! その金は違う。写真の利益は通学鞄の中に入ってるほうで、それは次にパソコンを買うために貯めておいた貯金で――

 ――あなたのお母様の前で泣いて来てあげましょうか?

 ――どうぞ持って行ってください……。

 ――ありがと。

 鬼だこいつ。

 結局、校長の前で泣くとか警察に行って泣くとか、なんだかんだ言って有り金全部を剥いでしまった……。

 それは交渉じゃなくて脅迫だろ!



 次の日。朝のホームルームが終わったので、一時間目の数学の宿題を机の上に出して、見直しをしていた。最近になって気がついたのだが、授業の前に予習をするのは休み時間を潰すのに最適なのである。

 そんな風に過していると、ぼくの席のすぐ隣に人の気配を感じた。

「ねえ、昨日はどうだったの?」

 隣の席のやつらは昨日どこかに遊びにでも行ったのであろう。それを話のネタにして休み時間を潰してるんだろうさ。べ、別に羨ましくなんかないけどさ、ぼくなんてやよい先生に連れて行かれて放課後が潰れてるというのに――

「オッツー! なんで無視するの!?」

 ドン! と音を立てて、ぼくの机が誰かの両手で叩かれた。

「えっ!? な、なに?」

 ぼくは顔を上げて机を叩いた人を確認した。ああ、なんだ。白鳥か。

「どちらさまですか?」

「一日会話しなかっただけで忘れるな!」

 いやいや冗談ですよ。とか笑って答えようとしたら、周りがザワついていることに気がついた。「おい、白鳥さんが変なやつに話しかけてるぞ」「あいつ誰?」「他のクラスのやつじゃね?」「くそっなんで白鳥さんに話しかけてもらえるんだよ!」「俺なんて白鳥さんに毎日一回話しかけるのを目標に生きてるのに」「あいつ誰?」「白鳥さんのこと口説いてるのか?」「俺聞いたぞ。あいつって麦蒔さんに告ったらしいぞ」「嘘だろ。友達はいなにのに恋人は欲しいのかよ」「それにしても麦蒔さんとか理想高すぎだろ」「あいつ誰?」「それで次は白鳥さんかよ」「うわーなんなのあいつ、死ねよ」「うざいな」「あいつ誰?」「殺っちゃう?」とかなんとか。これは流石に迷惑だな……。

 てなわけで白鳥の事は「後で話す」と言って追い払った。

 白鳥は「もぅ、休み時間なんだから会話くらいしようよ」とかなんとか言って渋々戻っていった。なんだあいつ。ぼくのこと好きなの?

 なんだか気になってしまい、数学の時間中、チラチラと白鳥の方を見てしまった。

 べ、別に白鳥がぼくのこと好きだからってなんとも思わないんだからね!

 べ、別に隣の席の女と話しながら練習問題を解いてる時の笑顔を見て、ときめいてなんかないんだからね!

 べ、別に数学教師のおっさんが白鳥の席の前で立ち止まって解き方を教えてるのとか見て、ヤキモチなんて焼いてないんだからね! 

 白鳥を見下ろす形になれば、ワイシャツの隙間から谷間が見えているだろう。羨ましい職業だよね教師ってさ。教師って言ったって男なんだからさ、白鳥にだけ何回も解き方を教えちゃう気持ちもわかるよね。

 その後の日本史の授業では、指名されて教科書を読んでいた。白鳥は声も綺麗なので凄く聞き取りやすかった。

 べ、別に白鳥のこと褒めてる訳じゃないんだからね!

 板書時間中に日本史のおばちゃん教師が「白鳥さんは字も声も綺麗で羨ましいわ」とか話しかけてた。どうやら白鳥はどの教師とも仲が良いみたいだ。

 ほんと、リア充ですね。

 昼休み。ぼくは白鳥と二人で購買へ行った。

「やよい先生から今日の昼食はオッツーに奢ってもらえって言われたんだけど」

「ああ、うん。正確には麦蒔の金なんだけどね……」

 今あいつの懐はパンパンだからな……。

 購買で二人分のパンとお茶を三つコーヒー一つプリン四つを買った。

 購買を出てすぐの階段にたどり着いたところで、ふと思いたち、白鳥の手を掴んで立ち止まってみた。

「えっ? いきなり何なの?」

 驚く白鳥を無視して、ぼくは振り返ってみた。パンを買った生徒や教師が数人、立ち止まっているぼくらを追い抜かして階段をのぼっていく。考えすぎかな?

「オッツー、恥ずかしいからさ。手、離してよ……」

 顔を赤らめた白鳥がボソボソと言ってきた。きっと、ぼくのこと好きだから照れているんだろう。可愛いやつめ。

「…………いい加減に離せっ!」

「ぐふぁっ! ごめん、ちょっと調子のっただけで、って待って、ミドルは止めて!」

 白鳥がバットも砕けるんじゃないかと思えるほど鋭いローキックでぼくに攻撃を仕掛けてきた。ちょっと手を繋いだだけで酷い目にあった。

 白鳥が階段をのぼる時を狙ってスネークする奴もいるのかな? とか考えて立ち止まってみたんだよって言い訳をしながら、別館四階を目指した。

 学生会室に着くと、やよい先生が廊下で一服していたのでコーヒーを渡した。

 部屋の中に入ると、麦蒔が読んでいた文庫本に栞を挟んでぼくらに向き直った。

「遅いわよ。何をしていたの?」

「いや、白鳥がチンタラしてるからさ」

「オッツーのせいでしょ!」

 蹴ったのはお前だろが!




読んでいただきまして、ありがとうございました。

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