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第十七話  謎は解けたよ、ワトソン君。

登場人物


乙姫羽白オトヒメハジロ

 本作の主人公。

 性格が残念で変わり者な所がある。

 本人曰く、手先が器用な事と体を鍛えている事が長所。


●麦蒔まゆり(ムギマキマユリ)

 学校一の超絶美少女にして学年一の才女。

 しかしその正体は、性格が残念すぎる唯我独尊女。

 家から近いというだけの理由でこの高校に通っている。


●白鳥えみり(シラトリエミリ)

 茶髪でミニスカな、よくいる今風女子高生。

 顔は可愛くてスタイルも良い。誰にでも明るく接する性格。

 学内のリア充カーストで上位に位置する。


●朱鷺やよい(トキヤヨイ)

 一年A組担任にして生活指導担当教師。担当科目は国語。

 三十?歳で未だに独身。

 羽白曰く、見た目もスタイルも良いらしい。


   第十七話  謎は解けたよ、ワトソン君。



 その日の午前中、ぼくは考え続けていた。

 情報が漏れるとしたらどこだろう。先生の会話とかを立ち聞きしちゃったりする事もないとは言えないし、完全に隠す事は無理なのかもしれない……。

 そんなことを考えながら、ぼくは体育の授業のためグラウンドに向かっていた。

 体育は男女別でA組B組の混合で行う。そのため、A組B組の男子の中には、クラスを超えて仲良くなった人もいるようだ。ぼくには関係ない話だが。

 そんなぼくの前を歩いている二人組の会話が聞こえてきた。

「うっそ、マジで? B組でも白鳥さん狙ってるやついるの?」

 白鳥? ってあの白鳥の話をしてるのか。まあリア充な男なんて、年がら年中、女の話ばっかりしてるしな。

「ああ。彼女は可愛いし性格もいいからな。狙ってる人は多いね」

「まあ、そうだよなー。白鳥さん可愛いからなー。それに明るくて話しやすいし……。A組でも既に二人フラれてるしなー」

 そうだったのか……。白鳥もかなりモテるんだな。

「同じクラスだとフラれた後が大変そうだな。それに比べて、うちのクラスの奴らは、当たって砕けろみたいな雰囲気でてきたし。もうすぐ水無月祭だから、その前にって奴は多いと思うよ?」

 水無月祭って言うのは、うちの学校の部活発表会みたいなものだ。六月にやる文化祭という感じ。タイミング的に、どの部活も新入部員の最初の発表の場として使われる事が多い。有志で発表とか出店とかをやる事もできる。

「水無月祭かー。やっぱイベントとかあると、彼女と回るやつも出て来るよなー」

「そうだな。うちの美術部の女の子も、それまでに彼氏作りたいって言う子いたな」

「それって、柊に誘って欲しいって言ってるようなもんじゃんかよ! お前はイケメンだからなー」

「いや、別に普通だろ」

「はあ? ふざけんなよ! 柊、お前がイケメンじゃなかったら、俺なんてダンゴ虫じゃねーかよ! 俺もお前くらいイケメンなら白鳥さんに告るんだけどなー」

「なんだよ。お前も彼女のこと狙ってたのかよ」

 柊って呼ばれている男は相当なイケメンだった。人気モデルとかドラマの俳優とかなんかに比べても、負けず劣らずどころか普通に勝っちゃいそうなくらいのイケメンだ。ちょっと身長は低めだけど……。

 こうゆうイケメンに限って、女をとっかえひっかえやってるんだろ。どーせ。

 まあB組のそいつ(もう名前を忘れた)の容姿とか、どーでもいいんだけどさ。

 白鳥が可愛いのはわかってるのだが、あいつってどれくらいモテるのだろうか?

 よくよく考えてみれば、麦蒔と白鳥を狙ってる犯人は、麦蒔と白鳥の事を好きな男って事だろ? つまり、二人のうち、どちらかしらに告白するとか何かのアプローチをしている可能性はあるんじゃないのかな?

 いや……。でも最近は草食系男子とかいう言葉が流行っているくらいだからな……。盗撮とかしちゃう残念を通り越したチキン野郎は、直接口説いたりしないかな……。

 これは考え込んでも仕方がないので、直接本人に聞いてみることにした。

 昼休みが始まってすぐ、白鳥が女子数名と教室を出るところで声をかけた。

「なあ白鳥、ちょっといいか?」

「んえ? オッツーから声かけてくるなんて珍しいね? なにか用?」

 白鳥は変な声を出して驚いていた。いや、同じクラスなんだから声かけたことくらい……無かったっけ?

「いや、ちょっと話があって。時間いいかな?」

「え? え? お昼、一緒に食べるって事?」

「ああ、まあ。そうなるな」

 白鳥は「え? あれ? そうなんだ……」とか言ってちょっと考え込みだした。気のせいかもしれないが、ほんの少し頬が赤く染まっているような気がする。なんなんだこの反応は? 昼飯なんてこの間も一緒に食べただろ? そんなにぼくと話すの嫌だったのか?

「ああ、ごめん。なんか迷惑だったら別にいいや。後で話すし」

「っええ? 迷惑とかそう言うんじゃなくて! いや、あれ? えーっと……。あ、そうだよう。まゆりんの所にお茶を買って行かなくていいの?」

「今日は白鳥に用があるから行かないって、さっきメールしておいたよ」

「えええ? あーそうなんだ……。へぇー。そっか、そっか……」

 と言って、白鳥はさらに考え込みだした。少し顔をうつむけて、右足のつま先を地面にグリグリしだした。さっきから、なんなんだこいつ? なんかモジモジしてる様に見えるんだが……。ああ、トイレに行きたいのか?

 そんなこんなで、白鳥と二人で食堂にやってきた。

 白鳥は日替わりA定食、ぼくは日替わりB定食を頼んだのだが……。「B定食サンプルより美味しそうじゃん! 詐欺だよ! 交換してよ!」と言って白鳥がぼくのおかずを奪おうとしてきた。なんて卑しい奴だ! なので、ぼくは必殺の「こっちのがカロリー高いだろ」の呪文を唱えて撃退した。白鳥はショボーンとした。ざまぁ。

 そんな漫才をしながら昼飯を食べていたら、ぼくは本題を切り出すのをすっかり忘れてしまっていた。おいおい、何のために昼飯を一緒に食べてるのか……。

 タイミング逃しても仕方ないので、本題を切り出そうとしたのだが……。


 誰かに見られている気がした。


 ぼくは直感的にキョロキョロと周りを見渡した。隣のテーブルには食事をしている教師や学生達がいる。なんの変哲も無い昼食の風景だ。特にこちらを見ている人がいるわけでもない……。なんだったのだろうか?

「ん? オッツーどうしたの? 急にキョロキョロしだして……」

「ああ、ごめん。何でもないんだ」

「? まあ、いいけどさ。そう言えば、何か話があったんじゃないの?」

「あーうん。そうだよね……」

 なんだろうか? ぼくはさっきの視線が気になってしまっていた……。

 今ここで事件についての会話をするのは、まずいのか? 良く考えれば、誰かに聞かれている危険性もあるかもしれない。

「ぼくは白鳥に何を話すつもりだったっけ?」

「えー? 知らないよそんなの!」

 白鳥は「オッツーが馬鹿になったー」と言って、笑っていた。ぼくも釣られて笑ってしまった。

 そうして食事が終わり、ぼくらは食堂を後にして教室に向かう。のだが……。

 ぼくはまたも考え込んでいた。

 白鳥は可愛い。だからモテる。白鳥がモテるという事実を目にした。だから今、白鳥にそれを聞こうとした。

 白鳥は可愛い。だから盗撮をされた。盗撮は白鳥を狙って行われた。

 白鳥は可愛い。だからさっき、誰かに見られてる気がした……のか?

 ぼくはふと思いたち、食堂を出てすぐの階段にたどり着いたところで、立ち止まった。

「あれ? オッツー、どうしたの?」

 不思議がる白鳥を無視して、ぼくは振り返ってみた。食事を終えた生徒や教師が数人、立ち止まっているぼくらを追い抜かして階段をのぼっていく。

 その瞬間、ぼくは既視感に襲われる。

 先週、白鳥と二人で購買に来たときにも、ぼくは同じように立ち止まった。

 あの時に感じた違和感、ぼくの考えすぎだと思い、それ以上は深く考えなかった。

 でも、今回は違う。


 この違和感、偶然とは思えない。



 その日の放課後。ぼくは急いで別館四階へ向かった。

 学生会室に入ると、すでに麦蒔が文庫本の読書に勤しんでいた。

「乙姫くん、息を切らしてどうしたの? って、ちょっと、何をしているの?」

 ぼくは麦蒔を無視して、先週押収した盗撮写真の束を取り出した。

 そして、白鳥が盗撮された写真を全て、二つのカテゴリーに仕分けし始めた。

「ちょっと、あなた。それは白鳥さんの下着が写った写真じゃないの。あまりそればかりを見るのは感心しないわよ……」

 麦蒔はぼくに非難がましい視線を向けてきた。無理もない。

 しかし、ぼくが全ての写真を仕分けし終わると、それを見て顔をしかめた。

「これって……。あら?」

 さすが麦蒔は頭が良い。この二つのカテゴリーの意味に瞬時に気がついたようだ。


 そして、ぼくの中で、全ての謎が一本の線に繋がった。


 謎は解けたよ、ワトソン君。




読んでいただきまして、ありがとうございました。


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