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第十一話  ミニスカートを穿いているなら覗かれても仕方がない

登場人物


乙姫羽白オトヒメハジロ

 本作の主人公。

 性格が残念で変わり者な所がある。

 本人曰く、手先が器用な事と体を鍛えている事が長所。


●麦蒔まゆり(ムギマキマユリ)

 学校一の超絶美少女にして学年一の才女。

 しかしその正体は、性格が残念すぎる唯我独尊女。

 家から近いというだけの理由でこの高校に通っている。


●白鳥えみり(シラトリエミリ)

 茶髪でミニスカな、よくいる今風女子高生。

 顔は可愛くてスタイルも良い。誰にでも明るく接する性格。

 学内のリア充カーストで上位に位置する。


●朱鷺やよい(トキヤヨイ)

 一年A組担任にして生活指導担当教師。担当科目は国語。

 三十?歳で未だに独身。

 羽白曰く、見た目もスタイルも良いらしい。


   第十一話  ミニスカートを穿いているなら覗かれても仕方がない



「女の子を泣かせたのよ。責任取りなさいよ」

「お前はどこの委員長だよ! 瞬間で心を重ねればいいのかよ!」

 麦蒔が有名なセリフを言ってきたので、こちらもナイスなツッコミで返しておいた。

 あの後、白鳥は十分くらい泣き続けていた。

 隣に座っていたぼくは、ハンカチを貸したり背中をさすってあげたりと、色々とした。

 白鳥が泣き止んだ少し後に、やよい先生が白鳥の事を連れて部屋から出て行った。先生の車で家まで送ってあげるんだそうだ。

 そしてぼくと麦蒔はというと、机の上の写真やホワイトボードを片付けて、学生会室を後にした。

 三号館に下駄箱のある麦蒔と、二号館のぼくは、いつもこの二号館入り口前で別れるのだが、今日はどちらからとも無くそこで立ち止まっていた。

「ねえ、乙姫くん。何か言いたい事があるのなら言っていいのよ? 今は私しかいないから。だから何を言っても咎められる事はないわよ?」

 そう麦蒔が問いかけてきたのだが、ぼくは少し無言で考え込んでいた。

 遠くから聞こえる部活動の掛け声が、ぼくらのBGMとなっていた。

「……言うべきかどうか悩んだんだけどさ。でも、これが自分の考えだから、言わないでおく事ができそうにないんだ……」

「ええ。いいわよ。……なんでも聞いてあげるわ」

 そう言って麦蒔は、ハッキリとぼくの目を見つめていた。

「ぼくはさ、今回の件について、短いスカートを穿いているのなら覗かれても仕方が無いって思っているんだよ……。だってさ、そうだろ? あんなに短いスカートを穿いているんだ。それは男に対する誘惑とか挑発と同義だろ? それを理解したうえで短いスカートを穿いているんだ。ちょっと覗かれたり写真を撮られたり、もっと言ってしまえば触られたりしたって、そんなのはしょうがないだろ? 思春期の男はもちろん、大抵の男は女に対して性欲があるんだよ。しかも、若さとは全ての女が平等に持って生まれる最大の魅力だろ? 若くて一番可愛い盛りの女子高生という世代の子が、短いスカートを穿いてるんだ。誘惑された男が手を出してきたって仕方がないことだろう。これはどう考えても、自明の理なんだよ……」

 ぼくは麦蒔の目をしっかりと見つめ返して、秘めていた自分の考えを述べた。背にした夕焼けが目にしみる。

「ええ、乙姫くんの言う事は正しいと思うわよ。私も白鳥さんのような極端に短いスカートはどうかと思うもの」

 そう言うと自分のスカートをみて「この長さだって恥ずかしいのよ?」と言っていた。

 麦蒔のスカートは膝の少し上くらいにかかる程度の長さだ。今時の女子高生にしては長いほうの部類に入るであろう。

「それでも、男の人に性的な関心を向けられるというのは、恐いと思うわよ」

 しかしその後に「私は慣れているけどね」と軽口を挟んで苦笑した。

 ぼくも少し気がそがれて、釣られて笑みをもらしていた。

「うん、それもなんとなくわかるんだよ……。さっき白鳥が涙を流すのを見ていて、少し怒りすら感じたんだ……。執拗なまでに白鳥にだけ向けられた性的関心に対する恐怖心。それを想像すると、ぼくだって泣いてしまうかもしれない……」

 ぼくはそのまま俯いて黙り込んでしまった。

 しかし麦蒔は、黙って待っていてくれた。

 ぼくの次の言葉が出てくるのを……。

「でも、だけど……。だから……」

 足元へ投げ捨てるように声を発する。その声は、誰に向けたものでもない。

「……だから?」

 とても優しい麦蒔の声。

 ぼくはその声に向けて顔を上げる。

 そして今度は、秘めることのない、秘める必要のない、心の底から湧き上がる素直な感情を、言葉に紡いだ。

「だから、ぼくは、白鳥を泣かせたやつの事を、許せないんだと思う……」

 麦蒔は「そう……」とだけ言った。

 長い黒髪がふわりと舞う。

 後ろに向きを変えて、ゆっくりと歩き出す。

 そして、三号館の前で立ち止まり、再びこちらを向いて、最後に言い残した。


 乙姫くん、あなたってやっぱり、優しいわよね――




読んでいただきまして、ありがとうございました。


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