プロローグ
子供の頃、世界は夢であふれていた。
どんな事もでき、何にでもなれると本気で信じていた。
大人になるにつれて、それが根拠の無い幻想だとわかっても認める事はできなかった。
だから、ゲームやアニメといったサブカルチャーに傾倒していったのも当然といえる。
あの中は夢で溢れている。
今ではオタクの聖地とも言える電気街に新作を漁りにくる毎日。
この街では「いい年した大人が何をしているんだ」といった差別的な目で見られる事はない。
同じ趣味の仲間が集う街。そこでは良識ある大人は逆に少数派だ。
未来の展望どころか現状の把握すら放棄し、偽造の夢にひたることで自分を保とうとする人々にあふれている。
そんな居心地の良い街の空気に触れながら、日課の本屋巡りを終えて、ふと暗くなり始めた空を見上げると・・・そこには太陽が二つあった・・・
・・・20××年 7月×日
謎の隕石落下により1つの街が消滅し、死傷者・行方不明者合わせて1万人を超えた。
・・・
そこは見渡す限り黒い部屋だった。
不思議と明かりが無いのに天井や壁がはっきり見える。
自分の体は無いらしく、意識と周りの状況だけがわかるようだ。
体が無い事から、死んだのだろうが、何の感情もわかない。
これが、生前の性格によるものか、この空間のせいなのかは、わからない。
不思議と心が落ち着いていた。
その時、どこからか声が聞こえた。
『あなた達を転生させますので、一つだけ希望を言って下さい』