表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悲観楽土 〜高天原には、神はいない〜  作者: 光合セイ
2章 将門夜行編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/30

27話 異常な出力

 ――その風は、俺の首を狙った打撃だった。


 当たれば死ぬかも?

 いやでも殺しは御法度だよな?

 なんて、いつもなら考えるだろうが、今回ばかりはそうもいかない。


 寸でのところでしゃがみ、回避に成功した。

 だが頬を掠める。少し痛い。

 攻撃者である難波先生は、第二撃、第三撃を続けて出してきている。早い打撃だ。避けれるか?


 落ち着け、焦るな。

 やるべきは分析。まずは回避。


 二、三撃は単調だ。

 一つは、頭上から振り下ろされる右拳。

 そして、左脇腹を狙い、隠された左フック。


 なるほど、肉弾戦か。クールな見た目によらず武闘派だ。

 赤鬼が迫ってくる様子はない。背中に天秤を抱えているところを見ると、恐らくサポーター……陰陽師がアタッカーなのだろう。


 ……OK。なら、やりようはある。

 春休み中、毎日師匠にボコられた末に身につけた『マジカル⭐︎護身術』なら、人の身からの攻撃を避けられるだろう。


 頭上からの拳を後退して回避。さらに突き出される拳を左に逸れることで避け――



「オごッ――!?」



 殴られた(ヒット)

 何が? なんて思う暇もない。

 頭上から振り下ろされた拳は、俺の頭に当たることはなかった。だが外れた拳は右フックへと変貌し、俺の左脇腹を凹ませ吹き飛ばした。


「おっと、すまない。フェイントのつもりだったのだが」


 何がフェイントだ、避けられるかこんな速度(モン)

 ゲホゴホと息を吐き出しながら分析を再開する。


 視覚で見えてる物だけが全部じゃないな。

 ……いや、だとして、どうしろと?

 左右上下を見て、可能性を考えきゃ、ってこと? 人外しか出来ないんじゃない? いや、本当にどうしろと?


「シトナイ」

「――ばぁ」

「攻撃準備」


 押してダメなら引いてみろ。

 この場合、多分逆なのだろうが。

 俺は胸元に懐刀を忍ばせる。


「大丈夫、ではないですけど……死んではないんで」


 痛みなら、慣れている。

 いつも師匠に殴られてるし……それに――



 ――橙色の炎が、脳裏に過ぎる。



「じゃあ、今度は俺から――」


 俺は一歩、前に踏み出す。

 心を前傾し、首を突き出し。

 先程は、先に攻撃して来たのだから、今度は譲ってくれるだろう。



 そんな淡い期待は、()()()打ち砕かれた。



 文字通りの一打撃。

 途轍もない速度の正拳突きが――俺の腹部を襲った。


「うぐっ……!」


 痛くはない。当たってないからだ。

 ギリギリで寸止めされている。

 当たっていたらと考えると、肝も背筋も凍りつく。


「平気だろう?」

「強者の余裕、ですね」

「君たちよりも優れてなければ、教師など出来んさ」

「まぁ、それもそうですけど……一応、こっちも死線を超えた経験持ちなんで」


 俺の胸元が光り出す。

 ニタァ、と諧謔的(かいぎゃくてき)な笑みが浮かんだのを、我が事ながら(おぞ)ましくも自覚した。


 強者とは、余裕を持て余す者を指す。

 逆説的に言えば、強さという名の傲慢を膿んでいるとも。

 油断大敵、好事魔多し、勝って兜の緒を締めよ。

 いつの世も、油断・慢心こそが命取りとなる。


 予備動作なしで攻撃してくる相手に、先手攻撃が通用するとは思っていなかった。

 遅い(トンビ)は肉を食えない。ならば動きが遅い俺が、受けに回るのは必然。それを予期した行動が要となる以上――



「シトナイ」



 ――忍ばせた懐刀は、最上の起死回生となるはずだ。


「今だ」

「ダァ!」


「――っ!?」


 懐に潜ませた極太の光線が、総図内を青白く塗り替えた――!



◆◇◆◇◆



「やり過ぎだ」


 その後、俺の霊力放出に耐えきれず、砕け散った人工総図の中から投げ出された難波クラス一同は、地下運動場へと戻って来た。


 もちろん身体測定は中断、人工総図の復旧員が現在、総図発生装置の復旧を急いでいる。


「ごめんなさい……」


 師匠(安倍明美)曰く、俺の霊力の放出量は、基準値の倍以上なのだという。

 つまり普通の陰陽師が出せる倍以上。

 総図内での戦闘も考慮されている人工総図が、壊れてしまうのも頷ける霊力の密度になっている、とも言える。……納得できるかは兎も角として。


 霊力の放出だけで人工総図が破壊された事以上に、それを間近で受けても無傷の難波先生にこそ、驚愕するべきではなかろうか。


 これ、本当に大丈夫なのだろうか。

 ……その、賠償金とか、諸々とか……


「……人工総図発生装置は、内部が少し崩壊しただけだ。復旧員に任せれば、次のクラスが来ても問題なく発生させられるだろう」

「ご迷惑を……」

「とりあえず、君に関しては霊力放出も、当面の間は禁止だな。威力が洒落にならん」

「え」


 唯一の攻撃手段が……!?

 うぅ、すまん、シトナイ。俺が考えなしなばっかりに……


「それと、一応この後すぐに保健室に行くように。あれだけの放出量だ、脳に異常をきたしていてもおかしくはない。何かがあってからでは遅いからな」

「はい……」


 俺がシトナイと共にシュン、としていると、見兼ねたらしいクラスメイト達が集まってきた。


「ま、まぁまぁ。高原(ごうはら)も予想外だったのだろう? なら仕方ない!」

「そだよぅ。間違えてこその学び舎、だからねぇ。落ち込むことないさぁ」

「……でも、ちょっと怖かったです!」

「コラ、思っても言わない!」


 最初に駆け寄って来た長門に肩を貸してもらい、俺はピリピリする膝を伸ばして立ち上がる。


「ありがとう、長門くん」

「大丈夫さ、助け合いだよ!」


 本当に助かる。正座していたせいで、足が思うように動かないのだ。


「だが本当に、あれだけ放出して無事なのか? タフなんだな、高原は……」

「タフっていうよりは、式神頼りっていうか……」


 霊力の放出の仕方を、俺は知らない。

 だけどシトナイは知っている。なら任せる他ないだろう。……お陰で、出力の調整は出来ないけれど。


「なるほどな。課題が出来た、と思う方が良さそうだな!」

「そうだね……頑張ろうな、シトナイ」

「――ダァ!」


 元気いっぱいのシトナイの声を聞いて、俺は微かに口角を上げる。

 やはりシトナイは癒し枠。式神万歳。


 俺は長門に肩を貸してもらいながら、保健室までゆっくりと歩を進めるのだった。



誤字脱字報告、感想、ブクマ待ってます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ