第28話 異変
冬夜たちの家ではうに軍艦寿司が出来上がり、大盛り上がりだった。
だが次の瞬間、窓の外を映す空が突然分厚い雲に覆われた。
そして────
セラ「うわっ…!!」
ジェイクル「ぐぉおぉ…ッ!」
セリカ「あ、頭がぁ…いたい……!」
インテグラ「ひっ、ひぃ……頭の奥が…焼けるみたいに……!」
冬夜以外の人たちが激しい頭痛に襲われたのか
両手で頭を押さえ、地面に身をかがんでいる。
冬夜「ど、どうしたのみんな!?」
だが冬夜は平然と立っている。
シルビア「冬夜…!なんで立っていられるの…ッ!?」
この場にいる冬夜以外、この現象はすでに知っている。
ゴロゴロゴロ────ッ。
遠方で落雷が轟いた。
ジェイクル&ハリアー「またこの時期か…。」
冬夜「また…って何ですか?」
雷鳴が数度轟き、やがて嘘のように空は晴れ始める。
頭痛も、潮が引くように消えていった。
しばらくして、全員がゆっくりと体を起こす。
セラ「はぁ……はぁ……また、これね……。」
冬夜「また?」
近くで額を押さえていたハリアーが、苦笑混じりに言った。
ハリアー「……30年前にも、同じ現象が起きた。」
ジェイクル「実はな、遠く離れた鳥人の国で30年に1度
異世界から勇者召喚の儀式を行ってるんだ。」
冬夜「異世界から召喚…?」
ティアールがゆっくり立ち上がり、優しく説明する。
ティアール「世界の外から魂を呼び寄せる、大きな儀式なんです。
その時だけ……世界の魔力の流れが乱れて
私たちは強い頭痛に襲われるんですよ。」
ティアールは少し困ったように微笑んだ。
ティアール「長く生きている人ほど、影響を受けやすいみたいで……。
だから皆、『ああ、またか』って思うんです。」
そこにアテンザが説明を付け加える。
アテンザ「あの時コスモノス様がおっしゃていたことですね。
確か、召喚された勇者は洗脳されて戦闘狂になる……
と聞いたことがあります。」
次第にアテンザの表情が曇る。
アテンザ「ですが…現状最後に召喚された勇者は洗脳に失敗し
戦闘員のツメで容赦なく引き裂かれたと…。」
それを聞いた冬夜は自身の拳を強く握り、怒りをあらわにした。
冬夜「突然召喚されただけでなく、洗脳されて…
失敗と判断されたらその場で引き裂くだって…!?
おかしいよそんなの…!!」
憤怒する冬夜を見て、ジェイクルも怒りを少し見せる。
ジェイクル「人によっては、これからいい調子ってところから
一気に死まで持って行かれますからね……。
良心のカケラすらありません。」
ハリアーも続いて発言する。
ハリアー「こういうあまりにも非人道的すぎる行為が
もう3900年も続いてるんですよ。
なので、国によっては鳥人の国を滅ぼして
異世界の住人を守ろうという動きもあるぐらいなのです。」
するとハリアーは下を向き歯を食いしばるような表情で話す。
拳が力強く握られている。
ハリアー「これまで3つの国が鳥人の国を滅ぼそうと動いたのですが…。
あちらの戦闘力が強大すぎて、1年もしない間に
3つの国の兵士が全滅したとの記録が残っています。」
恐ろしい戦力。前の世界ではそんなことは考えられなかった。
インテグラ「お願いだから、もうやめてほしい…。」
インテグラは両手を握って祈るように目をつぶっている。
こうして、いつ来るか分からない野盗の襲撃だけでなく
洗脳された勇者の襲撃にも備えなければならなくなった一行。
悪魔と天使の平和の次は、鳥人の脅威が迫っていた────。




