第27話 試行錯誤
これまでの登場人物
●神城 冬夜 (かみしろ とうや) 15歳 男性
交通事故で死んだ後この世界にやって来て
トマトを作っていたら2つの国の戦争を終わらせ
5人の新規同居者に恵まれた。
●セラ・トミーガーデン 195歳 女性
トマトの村で暮らす少女。見た目は冬夜より少し年上ぐらい。
人間と触れ合うのは実は初めてだが
『学校の男子たちと同じように話せばいいでしょ!』の
気持ちで話しかけているため、時々距離感がバグることがある。
冬夜のことがますます気になってきたようだ。
●セリカ 年齢不詳 女性
蜘蛛族で下半身が本物の蜘蛛のように変身できる。
額にも目が2つあり、視力はかなり良い。
おっとりした性格で大抵はニコニコしている。
●シルビア 年齢不詳 女性
手先が器用で裁縫が得意なダークエルフ。
何に対しても興味を持ち、常に元気。
作った服を村人たちに着てもらい
喜んでもらうことを夢見ている。
●ティアール 年齢不詳 女性
ヴァンパイア族で見た目は冬夜を除いて1番幼い。
控えめで素直な態度をとる性格で、血を扱う魔法が使える。
自己主張をしたがらないので
相手に押されてばかりなこともしばしば。
●インテグラ 年齢不詳 女性
猫耳を付けた獣人族。主に治癒の薬を作ることに専念している。
だが用途通りに使われないことが多く途方に暮れている。
暗い性格でよく自分を卑下するが
本人は少しでも何とかしたいと思っている。
●アテンザ 年齢不詳(205歳以上) 女性
元天使軍の兵士として天使の国を守っていた…が
実際は拠点の門番役だったらしい。
大空を飛ぶことに憧れ、自力で曲芸飛行を覚えた。
いつか冬夜を抱えて雲の上の世界を見せてあげたいと考えている。
ジェイクルは冬夜の説明を聞いて、深く感銘を受けていた。
ジェイクル「普通なら捨ててしまうような海の草を……
大事に使って、新しい料理に変えてしまうとは……!
貴殿は、やはり只者ではない!」
セラは苦笑しながらも、誇らしげに冬夜を見た。
冬夜「では、海苔を取って乾燥させてもらえると助かります。
条件はしなやかで、でもパリッと割れる感じにしてほしいです。
報酬は……僕のトマトでどうですか?」
ジェイクルの目がさらに輝く。
ジェイクル「トマト……!あの伝説のトマトを!?ありがたき幸せッ!」
ジェイクルからすぐさま魔王城に連絡が飛び
探索隊の精鋭が集められた。
隊員たちはやる気に満ちた声を上げ、黒い翼を広げて
王都近郊の海へと向かっていった。
隊員たち「行ってきまーす!」
その姿を見送りながら冬夜は、心の中で呟いた。
冬夜 (これで……軍艦寿司が完成するかもしれない……!)
────────
数日後。
探索隊が戻ってきた。手には黒々とした海苔の塊。
隊員A「取ってきました!…が、正直どう扱えばいいのか…。」
隊員B「生で食べると、ちょっとこう…海の味が濃すぎてですね…。」
冬夜は海苔を手に取り、しばらく考え込む。
冬夜「やっぱり乾燥させないと。太陽の光でじっくり干せばいいんだけど……
時間がかかるんだよなぁ…。」
そこにジェイクルとハリアーがやってくる。
ハリアー「では、試してみましょう。『魔法乾燥機』を!」
ズラリと並んだ魔法陣付きの装置。
どうやら火と風の魔法を組み合わせたものらしい。
試しに海苔を中に入れてみると――
ボッ!
いきなり黒焦げに。
隊員A「ぎゃーっ!!」
冬夜「ちょちょちょ!やりすぎやりすぎぃ!」
次は弱めに調整。
すると今度は生乾きで、ペタペタして丸めても軍艦どころじゃない。
ハリアー「ぐぬぬ…温度と風量のバランスが難しいな……。」
ジェイクル「だが……必ず成功させる!我らが冬夜殿にトマトで報いるのだ!」
失敗を繰り返しながらも、やがて――
パリッと音を立てて割れる、香ばしい乾燥海苔が完成した。
冬夜は試しにご飯を握り、周りに海苔を巻き、上にトゥーナンを乗せる。
冬夜「できた!これが軍艦寿司、マグ…トゥーナンの切り身乗せ!」
ジェイクルたちが軍艦寿司を食べて大興奮していたその時。
探索隊員Cが遅れて戻ってきた。
隊員C「遅れてすみませ~ん!
この海苔にトゲトゲしたものが引っ付いてましてぇ…。
全然取れないんですヨォ~!」
手の中にあるのは丸くて黒い物体。
トゲトゲだらけで、誰が見ても扱いにくそうだ。
ジェイクル「またソイツか…!よく網に引っ掛かるんだよなぁ…。
コイツは中身を取り出すのは危険でいつも海に返してるんだ。」
隊員A「トゲで指を刺した者もいますし…。」
ジェイクルは眉をひそめ、そのまま投げ返そうとする。
すると――
冬夜「待ってください!」
その声に幹部は手を止め、驚きで目を見開く。
ジェイクル「まさか……冬夜殿、このトゲだらけの厄介者まで……?」
冬夜「はい。これも食材になるんです。」
ジェイクル「な、なんだとぉ!?」
冬夜は軍手代わりに厚手の布を使い、器用にウニを割っていく。
中から黄金色の輝き――濃厚な身が現れた。
セラ「な、なにこれ……!?」
ティアール「宝石みたい……」
インテグラ「すごい香り……海の……!」
冬夜は軍艦寿司にウニをたっぷり乗せる。
冬夜「これが本当の『ウニ軍艦』だよ」
セラたち「おぉぉぉぉぉっ!!!」
大興奮の声が響き渡り、村がまた新しい食の革命に湧き立っていった。
軍艦寿司に「ウニ」が登場してから数日後。
魔王城の幹部は早速、王都近郊の海辺に集まる漁師たちを呼びつけた。
漁師A「で、今日は何の用で呼ばれたんですか?」
ジェイクル「お前たち、最近網にやたらと引っかかる
“トゲトゲした黒い物体”を知っているだろう?」
漁師B「あぁ、あの刺さって痛いだけの厄介者か。すぐ捨ててますよ。」
漁師C「そりゃそうだ、あんなもん触るだけで手がボロボロになるんですぜ。」
ジェイクルは拳をドンッと打ちつけ、身を乗り出す。
ジェイクル「実はアレは……最高の食材なんだ!!」
漁師たち「「「…………は?」」」
漁師B「ジェイクル様?気でも狂われたのですか?」
漁師Bはジェイクルを心配するが、ジェイクルは気にせず話を進める。
ジェイクル「確かに外は痛い!だが中身を見たか!?
黄金に輝く宝石のような身が詰まっている!
しかも味は、この世の物とは思えぬほど濃厚で甘美!」
漁師A「は、はぁ……。」
漁師B「ジェイクル様、ついに幻覚でも見えるように…?」
漁師C「潮風にやられたのかもしれんな……。」
ジェイクル「それでも信じられぬなら――これを食うがよいッ!」
張りきった声でジェイクルは
ドンッと桶いっぱいのウニ軍艦を出してきた。
漁師A「なんだこれは…!?」
漁師B「まさしく黄金に輝く宝石…!」
そして漁師3人がひと口食べた瞬間――
漁師A「な、なんだこの濃厚な味は!?舌にとろける…!」
漁師B「信じられん……あの厄介者がこんな宝になるなんて……。」
漁師C「うまい!船の上で1人で全部食べたくなるほどだ!!」
漁師A「なっ!独り占めはよくないぞ!」
漁師たちは大興奮で手を取り合った。
ジェイクル「これからはあのトゲトゲを海に返すな!
すべて回収して冬夜殿に届けるのだ!」
漁師たち「「「おおおおーーっ!!!」」」
こうして「痛いだけの厄介者」だったウニが
一転して漁師たちにとって“海の宝”として扱われるようになったのだった。
────────
そして────。
鳥人の国では、帝都城の地下にて巨大な魔法陣が展開されていく。
鳥人神官A「いいな?3つ数えたら魔力を解き放つんだ。」
鳥人神官B「いくぞ…。いち、にの…」
鳥人神官5人「さんッ!!」
5人が魔力を込めると、光が魔法陣に吸い込まれていく。
そして光が小さくなるとともに、3人の人間が姿を現した。
鳥人神官A「おぉ…なんと3人も…!!」
男子高校生A「なんだここは!お前ら誰なんだ!!」
神官たちは歓喜、人間は突然の出来事に状況が飲み込めていない。
その少し前、鳥人の国にある平原にまた1人、人間がやって来た。
少女「……ここ、どこ……?」
どうやらこの人間は召喚儀式とは関係がないようだが…
本人にもわからない不思議な力を秘めているようだ。




