第26話 回りだした寿司と絶品の部位
これまでの登場人物
●神城 冬夜 (かみしろ とうや) 15歳 男性
交通事故で死んだ後この世界にやって来て
トマトを作っていたら2つの国の戦争を終わらせ
5人の新規同居者に恵まれた。
●セラ・トミーガーデン 195歳 女性
トマトの村で暮らす少女。見た目は冬夜より少し年上ぐらい。
人間と触れ合うのは実は初めてだが
『学校の男子たちと同じように話せばいいでしょ!』の
気持ちで話しかけているため、時々距離感がバグることがある。
冬夜のことがますます気になってきたようだ。
●セリカ 年齢不詳 女性
蜘蛛族で下半身が本物の蜘蛛のように変身できる。
額にも目が2つあり、視力はかなり良い。
おっとりした性格で大抵はニコニコしている。
●シルビア 年齢不詳 女性
手先が器用で裁縫が得意なダークエルフ。
何に対しても興味を持ち、常に元気。
作った服を村人たちに着てもらい
喜んでもらうことを夢見ている。
●ティアール 年齢不詳 女性
ヴァンパイア族で見た目は冬夜を除いて1番幼い。
控えめで素直な態度をとる性格で、血を扱う魔法が使える。
自己主張をしたがらないので
相手に押されてばかりなこともしばしば。
●インテグラ 年齢不詳 女性
猫耳を付けた獣人族。主に治癒の薬を作ることに専念している。
だが用途通りに使われないことが多く途方に暮れている。
暗い性格でよく自分を卑下するが
本人は少しでも何とかしたいと思っている。
●アテンザ 年齢不詳(205歳以上) 女性
元天使軍の兵士として天使の国を守っていた…が
実際は拠点の門番役だったらしい。
大空を飛ぶことに憧れ、自力で曲芸飛行を覚えた。
いつか冬夜を抱えて雲の上の世界を見せてあげたいと考えている。
冬夜が言い出した回転寿司をこの世界で実現させるため
一同は天使の木材職人たちと協力して、レーン部分を加工していく。
魔王も目からレーザーを出し、何枚も重ねた木材を同じ形に加工した。
冬夜「魔王様のレーザーってものすごく便利だなぁ…。」
やがてレーンが出来上がり、台に乗せていく。
ハリアーは机の上に置かれた楕円形のレーンに
そっと小さな魔石をはめ込んだ。
すると、ふわりと光が走り……レーンが音もなく、ゆっくりと回り出した。
ティアール「うわっ、本当に回ってる……!」
魔王「ほうほう…これが回転寿司というのか…!」
魔王様はこう言っているがまだ寿司は置かれていない。
冬夜はその光景に子どものように目を輝かせ、両手を叩いた。
冬夜「そうそう、これこれ!これが見たかったんだよ!」
すぐに冬夜は魚を取り出し、次々と寿司を握り始める。
トゥーナン、サモーン(サーモン)、そしてシュルリンプ(えび)。
皿に乗せられた寿司たちがレーンに並ぶと
ゆっくりと回転しながら目の前を通り過ぎていった。
ハリアー「おお……!食べ物が、流れていく……!」
セブン「なんだか楽しくなってきた!」
そんな中、冬夜はふとトゥーナンとサモーンを切り分けていると
特に脂が多く、きらめくような身の部分を見つけた。
冬夜「……これは!」
包丁を入れ、丁寧に寿司を握り、仕上げる。
冬夜「よぉし!一丁上がりッ!」
出来上がったのは、宝石のように輝く一貫。
そう、元の世界で言うところの大トロだ。
ティアール「美しい…。もはや芸術作品みたい……!!」
ハリアー「これは……寿司の王だ……!」
冬夜「大げさな…と思いたいけど、実際間違いないからなぁ。」
ハリアーたちは、大トロトゥーナンと大トロサモーンを
恐る恐る口に運ぶ。
そして一瞬でとろけるような旨みと
脂の甘さが広がり……誰もが言葉を失った。
シルビア「う、うますぎる……!」
ハリアー「なんだこれは…肉でも魚でもない……!まるで宝石だ!」
その歓声を聞きながらも、冬夜は腕を組んで首を傾げる。
冬夜「うーん……なんか、まだ足りないんだよなぁ……。」
セラ「えっ!?もう十分すごいのに、まだ何かあるの?」
ティアール「冬夜さん…また妙なことを考えている顔……。」
冬夜はハッと目を開き、勢いよく立ち上がった。
冬夜「そうだ!軍艦が足りないんだ!!」
6人「グンカン?」
全員が同時に首をかしげる。
冬夜は慌てて両手を動かしながら説明を始めた。
冬夜「軍艦っていうのは……普通のお寿司みたいに魚を乗せるんじゃなくて
海苔っていう黒い板みたいなものでご飯をぐるっと囲んで
そこに具材をのせるんだ。イクラとかウニとか
小さいものをたっぷり乗せるのにピッタリなんだよ!」
ティアール「黒い板で囲む…寿司の船…?」
セラ「ふ、船!?食べられるの!?」
インテグラ「なるほど……形を工夫して
他の具材も使えるようにする発想なのですね…!」
冬夜は目を輝かせながら、さらに説明を続けているそのとき――。
窓の外で魔王城の幹部、ジェイクルが偶然その会話を耳にしていた。
幹部 (ノリ…黒い板…海で取れるもの……?
そんな食材が存在したのか…?)
彼は居ても立ってもいられず、すぐに冬夜のもとへ姿を現した。
ジェイクル「……冬夜殿。盗み聞きをして申し訳ない。」
冬夜「えっ!? じぇ、ジェイクルさん!? なんでここに…。」
セラ「ひゃっ……!」
インテグラ「まさか、またトマトを……?」
ジェイクルは首を横に振り、真剣な眼差しで冬夜を見つめる。
ジェイクル「いや、違う。先ほどの話……“軍艦”なる寿司に必要だという
“ノリ”とやら…詳しく聞かせてはくれないか?」
冬夜「海苔っていうのは……えっと、海で採れる植物なんです。
平べったくて黒くて、乾かして板みたいにしたものを
食材として使うんです。寿司には欠かせないものなんです!」
ジェイクル「ほう…! 海で採れる黒い植物……!
なるほど、それを使えば新たな寿司の形が
生まれるというわけか!」
彼の目はまるで新しい魔法の秘密を知ったかのように輝いていた――。




