第24話 海洋の心を使った新料理
これまでの登場人物
●神城 冬夜 (かみしろ とうや) 15歳 男性
交通事故で死んだ後この世界にやって来て
トマトを作っていたら2つの国の戦争を終わらせ
5人の新規同居者に恵まれた。
●セラ・トミーガーデン 195歳 女性
トマトの村で暮らす少女。見た目は冬夜より少し年上ぐらい。
人間と触れ合うのは実は初めてだが
『学校の男子たちと同じように話せばいいでしょ!』の
気持ちで話しかけているため、時々距離感がバグることがある。
冬夜のことがますます気になってきたようだ。
●セリカ 年齢不詳 女性
蜘蛛族で下半身が本物の蜘蛛のように変身できる。
額にも目が2つあり、視力はかなり良い。
おっとりした性格で大抵はニコニコしている。
●シルビア 年齢不詳 女性
手先が器用で裁縫が得意なダークエルフ。
何に対しても興味を持ち、常に元気。
作った服を村人たちに着てもらい
喜んでもらうことを夢見ている。
●ティアール 年齢不詳 女性
ヴァンパイア族で見た目は冬夜を除いて1番幼い。
控えめで素直な態度をとる性格で、血を扱う魔法が使える。
自己主張をしたがらないので
相手に押されてばかりなこともしばしば。
●インテグラ 年齢不詳 女性
猫耳を付けた獣人族。主に治癒の薬を作ることに専念している。
だが用途通りに使われないことが多く途方に暮れている。
暗い性格でよく自分を卑下するが
本人は少しでも何とかしたいと思っている。
●アテンザ 年齢不詳(205歳以上) 女性
元天使軍の兵士として天使の国を守っていた…が
実際は拠点の門番役だったらしい。
大空を飛ぶことに憧れ、自力で曲芸飛行を覚えた。
いつか冬夜を抱えて雲の上の世界を見せてあげたいと考えている。
その日の昼頃、冬夜の家のベルが鳴る。
冬夜が扉を開けると、そこには黒い翼を持つ幹部が立っていた。
ジェイクル「お届け物です。魔王様から、あなたにとのことです。」
そう言って差し出されたのは、氷の魔法で冷やされた木箱と、一通の手紙。
冬夜が手紙を開くと――
『我が友、冬夜よ。
あの“カレー”という料理は、我が城の者たちから大好評をいただいたぞ。
幹部もメイドも兵士たちも、皆が涙を流しながら「美味い」と叫んでいた。
まさか料理で軍の士気まで上がるとは思わなかったぞ!
ところで、あの村には海産物が無かったよな。
お礼と言っては何だが、王都近郊の海で取れた新鮮な魚を送ろう。
ぜひ料理に使って、皆で楽しんでくれ。
感謝する。
――魔王』
冬夜「……魚!?海の魚まで手に入るのか!」
木箱を開けると、銀色に輝く魚がぎっしりと並んでいる。
セラや移住者の5人も集まってきて、目を丸くする。
セラ「すごい…こんな綺麗な魚、見たことないわ!」
シルビア「焼く?煮る?それとも干す?やだ、やってみたいこといっぱい!」
アテンザ「海産物を食べられるのは戦場を渡り歩く兵士ぐらいだけ……
それを村で食べられるなんて…!!」
冬夜は頭を抱えながらも笑ってしまう。
冬夜「……魔王様、やることが豪快すぎるよ。」
────
7人は魚の使い道について考えていた。そこで冬夜はある料理を思いつく。
冬夜は一気に魚を使うとすぐに無くなってしまうことを考慮した。
冬夜「ここは魚をあまり使わなくて、たくさん作れるような料理にするよ。」
冬夜はタオルをきゅっと巻き、白衣を羽織る。
まるで本格的な料理人のような姿に、セラたちは思わず息をのむ。
シルビア「なんか、雰囲気が違う……。」
シルビアがぽつりとつぶやく。
炊き立てのお米に、酢をふわっと回しかける。
ティアールは顔を少し青ざめて不安そう。
ティアール「お、お米に何かかけた…!?腐らないよね…?」
冬夜は笑いながら木のしゃもじで切るように混ぜ
ひと掴みして手のひらでぎゅっと握る。
その上に――トゥーナン(現実世界で言うマグロ)。
深紅に輝く切り身をそっと置くと、あまりの美しさに全員が目を奪われた。
冬夜「これで完成だよ。寿司って言うんだ。」
短い時間で作られたとは思えない、宝石のような料理。
セラはごくりと喉を鳴らす。
セラ「……お、お魚を生で食べちゃうの?」
冬夜「うん。でも大丈夫。酢飯と組み合わせると、これがすごく美味しいんだ。」
冬夜が差し出した寿司を恐る恐る口にすると――
セラ「んっ!?な、なにこれ……!ふわっとしてて、口の中でとろける……!」
ティアールも後を追い、驚きで目を丸くする。
ティアール「し、信じられない……血を吸った時みたいな濃厚さなのに
嫌な重さがまったくない……!」
6人は冬夜の作った料理に大絶賛。
そして冬夜も1つ食べてみると……。
冬夜「うーん!そうそうこれだよこれ!!」
セラは冬夜にワクワクした表情で話しかける。
セラ「ねぇねぇ!この料理はなんて言うの!?」
冬夜「これは、"寿司"って言うんだよ。
僕が住んでた世界の名物…とでも言うのかな。」
こうして村に“寿司”が誕生した。
最初に寿司を食べたセラやティアールたちが感動の声を上げたことで
あっという間に「冬夜がまた新しい料理を作った!」という噂が村に広まった。
村の人々がぞろぞろと冬夜の家に集まってくる。
冬夜「す、すごい人だかりだ……。」
冬夜は苦笑しながらも、みんなの期待に応えようと再び寿司を握り始める。
お酢の香り、炊きたてのご飯、そして輝く魚の切り身。
村人A「生の魚なんて…食べても大丈夫なのか…?」
村人たちは最初こそ戸惑ったが、一口食べた瞬間――。
村人A「む!?こ、これは……!」
村人B「トマトの時の衝撃を超えてるぞ……!」
村人C「お米がこんな風に変わるなんて……!」
村中が大絶賛!子供たちも夢中になって寿司を頬張る。
老年村人「こんなにおいしいものが食べられるとは…若返った気分だ。」
と、年配の村人までも笑顔を見せる。
村長も目を細めて言った。
村長「……トマトに続いて、また村の象徴が生まれるとはな。
冬夜、お前はまるで神様が遣わした恵みのようじゃ。」
その言葉に冬夜は思わず赤面し、手に持っていたシャリを崩しそうになる。
セラはそれを見てニヤリと笑い、小声でからかう。
セラ「ほんと、あんたって褒められ慣れてないのね。」
こうして寿司は村中に広まり、トマトに次ぐ「冬夜印の奇跡の料理」
として定着していくのだった――。




