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第23話 魔王様のカレー作り

これまでの登場人物

●神城 冬夜 (かみしろ とうや) 15歳 男性

 交通事故で死んだ後この世界にやって来て

 トマトを作っていたら2つの国の戦争を終わらせ

 5人の新規同居者に恵まれた。


●セラ・トミーガーデン 195歳 女性

 トマトの村で暮らす少女。見た目は冬夜より少し年上ぐらい。

 人間と触れ合うのは実は初めてだが

 『学校の男子たちと同じように話せばいいでしょ!』の

 気持ちで話しかけているため、時々距離感がバグることがある。

 冬夜のことがますます気になってきたようだ。


●セリカ 年齢不詳 女性

 蜘蛛族で下半身が本物の蜘蛛のように変身できる。

 額にも目が2つあり、視力はかなり良い。

 おっとりした性格で大抵はニコニコしている。


●シルビア 年齢不詳 女性

 手先が器用で裁縫が得意なダークエルフ。

 何に対しても興味を持ち、常に元気。

 作った服を村人たちに着てもらい

 喜んでもらうことを夢見ている。


●ティアール 年齢不詳 女性

 ヴァンパイア族で見た目は冬夜を除いて1番幼い。

 控えめで素直な態度をとる性格で、血を扱う魔法が使える。

 自己主張をしたがらないので

 相手に押されてばかりなこともしばしば。


●インテグラ 年齢不詳 女性

 猫耳を付けた獣人族。主に治癒の薬を作ることに専念している。

 だが用途通りに使われないことが多く途方に暮れている。

 暗い性格でよく自分を卑下するが

 本人は少しでも何とかしたいと思っている。


●アテンザ 年齢不詳(205歳以上) 女性

 元天使軍の兵士として天使の国を守っていた…が

 実際は拠点の門番役だったらしい。

 大空を飛ぶことに憧れ、自力で曲芸飛行を覚えた。

 いつか冬夜を抱えて雲の上の世界を見せてあげたいと考えている。



 あれから数日後、冬夜からスパイスとトマトをもらい

 魔王は城へと戻った。


魔王「ふむ……我も自らの手でこの“カレー”なるものを

   再現してみようではないか。」


 魔王城の厨房に立つ魔王を見て、メイドたちがざわめく。


メイドA「ま、魔王様が、お料理を……!?」


メイドB「珍しいですわね……。調理場にお立ちになるなんて…。」


 魔王は豪快に玉ねぎを取り出し、ナイフを構える。


魔王「よし、いざ……!」


 ザクッ、ザクッ――。

 次の瞬間、魔王の目にじわぁっと涙が溜まり始める。


魔王「ぐっ……な、なんだこれは……?目が……!?」


メイドC「魔王様!?お、お目が赤く……!」


魔王「ち、違う……これは……これは涙などではない!

   魔王たる我が、この程度で泣くものかぁ!!」


 しかし次の瞬間――

 ブワァッと涙があふれ出し、包丁を握る手がぷるぷる震える。


魔王「ぐぬぬぬぬぅぅぅ……ッ!なぜだァァァァァ!!」


 幹部たちは固唾を呑み、メイドたちはハンカチを差し出そうとするが

 魔王は首を振る。


魔王「よい!これは修行だ……!カレーを作るための

   避けて通れぬ試練なのだ!!」


 こうして魔王城の調理場には、威厳を捨てて

 玉ねぎと戦う魔王の姿が広がっていた。


 魔王は涙でぐしゃぐしゃになりながらも

 スパイスを炒め、玉ねぎを煮込み、トマトを加えていく。

 やがて調理場いっぱいに、濃厚かつ刺激的な香りが広がった。


幹部A「こ、これは……!嗅いだことのない芳香だ……!」


幹部B「魔王様が……玉ねぎと戦ってまで完成させた料理……!」


メイドA「香りだけで胃袋を鷲掴みにされそうですわ……!」


魔王「ふふ……完成だ! これが“カレー”という料理だ!!」


 豪快に皿へ盛り付け、幹部やメイドたちへ差し出す魔王。

 恐る恐る口に運んだ瞬間――


幹部A「な、なんという旨さだ!!」


メイドB「スパイスの刺激とトマトの酸味……!体の奥から力が湧いてくるようです!」


メイドC「お、美味しすぎます、魔王様ぁぁぁ……!」


 その場にいた全員が目を潤ませ、感動に震える。


 魔王は誇らしげに腕を組むと――


魔王「だが誤解するな。この料理の考案者は我ではない。」


幹部・メイドたち「えっ……!?」


魔王「このレシピを我に与えてくれたのは

   あのトマトを育てし人間――冬夜だ!」


幹部B「な、なんと……魔王様にレシピを与えるなど……!」


メイドA「まさか……あの村のトマトを作った少年が……!」


メイドB「魔王様が涙を流してまで受け継いだレシピ……

     それほどの人物なのですわね……!」


 魔王はニヤリと笑みを浮かべる。


魔王「冬夜……我が友よ。お主の名は、この魔王城に永遠に刻まれるであろう!」


 そして、カレーの存在が王都で広まると市場には

 カレースパイスセットが銀貨5枚で取引されるようになった。


 だが、冬夜の生活が忙しくなることはなかった。

 なぜなら───


 魔王がコピー魔法でスパイスを大量コピーしていたからであった。


 カレーの作り方とスパイスが王都で広まり

 王都6番街にはなんとカレー専門店が開店したという。


 魔王は冬夜へのお礼の品を考えていた。


魔王「お礼の品…。一体何を送れば…。」


 魔王は真剣に考え、城を右往左往する。

 そこに1人、屈強な肉体をした幹部が顔を出す。


幹部「魔王様、ご報告です。」


魔王「あぁ、ジェイクルか。どうした?」


ジェイクル「明日、王姫様が修学旅行からお帰りになられます。

      ところで…何をそんなに考えているのですか?」


魔王「それがだな…。」


 魔王は幹部ジェイクルに事情を説明する。

 そしてジェイクルはこんな提案をしてきた。


ジェイクル「トマトの村ですか…。

      あそこには川はありますが、魚どころか藻すらありません。

      なので、新鮮な海の魚を送ってみてはいかがでしょうか?

      彼ならそれを使った新料理を作ってくれるかもしれませんよ。」


 それを聞いた魔王は眼を輝かせる。


魔王「新料理…!!冬夜なら必ず作るだろう!すぐに今日獲れた魚を確認だ!」


 その言葉と共に、ジェイクルは城を出て王都の港エリアへ向かった。


 ────


 王都の港町、アクア。そこの1番の港にジェイクルは漁師を数人集めた。


漁師A「どうしましたか?幹部様。」


ジェイクル「魔王様が、今朝獲れた新鮮な魚を冬夜様に差し上げたいと。

      出来れば高級な魚を頼みたい。」


 その声に漁師たちはすぐに動く。


漁師B「よし!早速今日の分を確認するぞ!!」


漁師C「大物をたくさん差し出しましょう!!」


 そして数十分後、漁師たちの目で

 厳しい基準をクリアした魚が6種類、計42尾選ばれた。


漁師A「これでどうでしょう。本当はもっと送りたかったのですが…。」


 漁師Aは少し不安そうな表情をするが、ジェイクルは笑顔を綻ばせる。


ジェイクル「いいえ、十分です。これだけあれば

      魔王様も冬夜様もさぞ喜ばれることでしょう。」


 ジェイクルは漁師たちにお礼を言い、転移魔法で魔王城へ戻った。


ジェイクル「魔王様、ただいま戻りました。」


 魔王はジェイクルが運んできた魚を見ると、眼を輝かせる。


魔王「おぉ…素晴らしい…!!

   今日はこんなにたくさんの上質な魚が獲れたのか!!」


 魔王はジェイクルの方を向く。


魔王「ではジェイクル、我と一緒に氷魔法を使え。」


 ジェイクルは頷き、木箱に入れた魚の前で手をかざす。

 すると魔法陣が現れ、冷たい空気が部屋を覆う。


 そして数秒も経たず木箱はきれいに凍り付いた。


魔王「ではこれを冬夜の家に送って欲しい。」


 魔王は木箱の上に1通の手紙を置いた。

 その魔王の表情はどこか申し訳なさそうだった。


魔王「本当は我が行くべきところだがな…。

   生憎(あいにく)書類の山が溜まっていて行くことができないんだ。」


 その言葉を聞いたジェイクルは承諾した。


ジェイクル「分かりました。魔王様、最近かなりの多忙ですよね…。

      過労にはどうかお気を付けて。

      明日には王姫様…いえ、娘さんも帰ってきますので

      どうかご家族の時間を大切にしてください。」


 魔王はジェイクルの言葉を聞いて優しい表情になった。


魔王「そうだな。明日は家族の時間を満喫する日にする。

   では、その魚を頼んだぞ。」


 魔王がそう言った後

 ジェイクルは転移魔法を使って冬夜の家に向かって行った。




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