第21話 土下座 (残酷描写あり)
これまでの登場人物
●神城 冬夜 (かみしろ とうや) 15歳 男性
交通事故で死んだ後この世界にやって来て
トマトを作っていたら2つの国の戦争を終わらせ
5人の新規同居者に恵まれた。
●セラ・トミーガーデン 195歳 女性
トマトの村で暮らす少女。見た目は冬夜より少し年上ぐらい。
人間と触れ合うのは実は初めてだが
『学校の男子たちと同じように話せばいいでしょ!』の
気持ちで話しかけているため、時々距離感がバグることがある。
冬夜のことがますます気になってきたようだ。
●セリカ 年齢不詳 女性
蜘蛛族で下半身が本物の蜘蛛のように変身できる。
額にも目が2つあり、視力はかなり良い。
おっとりした性格で大抵はニコニコしている。
●シルビア 年齢不詳 女性
手先が器用で裁縫が得意なダークエルフ。
何に対しても興味を持ち、常に元気。
作った服を村人たちに着てもらい
喜んでもらうことを夢見ている。
●ティアール 年齢不詳 女性
ヴァンパイア族で見た目は冬夜を除いて1番幼い。
控えめで素直な態度をとる性格で、血を扱う魔法が使える。
自己主張をしたがらないので
相手に押されてばかりなこともしばしば。
●インテグラ 年齢不詳 女性
猫耳を付けた獣人族。主に治癒の薬を作ることに専念している。
だが用途通りに使われないことが多く途方に暮れている。
暗い性格でよく自分を卑下するが
本人は少しでも何とかしたいと思っている。
●アテンザ 年齢不詳(205歳以上) 女性
元天使軍の兵士として天使の国を守っていた…が
実際は拠点の門番役だったらしい。
大空を飛ぶことに憧れ、自力で曲芸飛行を覚えた。
いつか冬夜を抱えて雲の上の世界を見せてあげたいと考えている。
背中に7本の矢を受けた冬夜は
ティアールの手を優しく握った後に再びこの世を去った。
そして──
目を覚ますと、前にも見た白く眩い地面。
そして目の前には2人の神様、創造神と看護神が土下座をしていた。
冬夜「えっと…。」
創造神と看護神は無言のまま一向に頭を上げる気配がない。
冬夜「あの…どうして土下座を…。」
2人の頭付近には涙と思われる水たまりがだんだん大きくなっていく。
そして創造神が地に頭を付けたまま口を開いた。
創造神「ほん"っとぉ"~に"も"ォオ"しわ"げな"い"とう"や"ぐぅん"!!」
そして創造神は顔を上げる。
その顔には滝のように流れる涙が両目からあふれていた。
創造神「最初にここへ来た時に『もう痛いのも苦しいのも味わわせない』って
言ったばかりなのにィ…!!」
創造神は再び顔を地に付けて大声で懺悔の言葉を述べる。
創造神「本当にすまない!!この私を煮るなり焼くなり斬るなり
殺すなりなんなりしてくれたまえ冬夜くん!!
でないと……君は満足しないだろぉ!?」
創造神は自分の身すら捨てる覚悟のようだ。
だが、冬夜は創造神に右手を差しだす。
冬夜「あの、僕は怒ってないですよ。
というか…アイツらの狙いは僕だけみたいでしたし…。」
すると創造神はいきなり立ち上がって下界の様子を見せてきた。
創造神「…確かに、君が死んでしまってからアイツらは
襲い掛かる覚悟が見られないな…。」
すると創造神も驚く光景が起きた。
創造神「はっ…。あれは…大天使コスモノス!!なぜこんなところに…。」
──────
雷雲を切り裂くように現れたのは、白い羽を大きく羽ばたかせながら
神々しい雰囲気を放つ金髪ロングヘアーの男性、コスモノス。
アテンザの元上司に当たり、天使の国を治める大天使だ。
大天使が地面に降り立つと、アテンザは槍を地面に置き片膝をついて跪く。
大天使コスモノス「おや、アテンザ。こんなところで会うなんて。
どうだい、新しい暮らしは充実しているかい?」
コスモノスはアテンザに優しく問いかける。
アテンザ「はい、それもたった今、充実してる真っ最中でございます。」
アテンザは不敵な笑みを浮かべて槍を拾い、残った悪党に突き立てる。
アテンザ「さて…貴様ら、命を捨てる覚悟はできた?」
コスモノスは少し様子を伺い、状況を把握するとこんな提案をしてきた。
コスモノス「ボクも加勢していいかい?」
悪魔の国でも大天使の強さは誰もが知っている。
そんな圧倒的強者が敵に回る。悪党にとってはこれ以上ない不運だろう。
アテンザはコスモノスの方を向いてニヤリと笑った。
アテンザ「もちろんです。大天使様。」
──────
一方天界では、現在の異世界についての状況を把握した冬夜だが
もう1つ気になることがあった。
冬夜「少し気になってたことなんですけど…
前の世界で死んだ僕は、その後どうなったんですか?」
そう言うと、創造神は指を鳴らし、チャンネルが変わるように
上空の映像が切り替わった。
そこに映っていたのは、ニュースの映像だった。
男性キャスター「おととい未明に雛枝市で15歳の少年が轢かれ死亡した事件で
クルマを運転していた鬼頭英輔容疑者60歳と
同乗していた佐々木夢柚容疑者22歳を
危険運転致死と道路交通法違反の容疑で逮捕されました。」
ニュース映像を見た冬夜は何とも言えない感情になる。
映像が切り替わり、2人の男女が警察に連行されていく。
キャスターが事件内容を喋っていく中、こんなことも報道された。
男性キャスター「また、亡くなった被害者の両親が遺体の受け取りを拒否したため
警察は、被害者が虐待を受けていたことも視野に
捜査を進めているとのことです。」
今の冬夜にとってはもうどうでもいい事なのかもしれないが
親の虐待事情が他の人に伝わってくれた。
それだけでもとても嬉しい事だったのだ。
創造神「これが冬夜くんが死んで2日後に来たニュースさ。
次のニュースはちょっと意外な展開だぞ。」
そう言って創造神は再び指を鳴らす。
映像が切り替わり、先ほどのニュースから3日後の映像になった。
男性キャスター「雛枝市15歳少年轢殺事件の続報です。
被害者の両親は冬夜さんに日常的に
虐待を繰り返していた痕跡が見つかり
警察は両親を逮捕しました。」
なんと両親が逮捕されたというニュースだったのだ。
それを聞いた冬夜は安堵の表情を浮かべた。
冬夜「そっか…捕まってくれたんですね。」
これまで自分にとって居場所なんてなかった。
親によって居場所が失われていた。
だけど、そんな親が逮捕された。
冬夜「僕はもうこの世にはいないけど、親はせめてこの世で
罪の意識をしっかり持ってほしいな。」
そう言った冬夜は穏やかな顔をしていた。
そして冬夜は振り返り、看護神にお願いをする。
冬夜「では、発動方法を教えてください。」
看護神は驚いた顔をしたがすぐに承諾する。
看護神「え、えぇ…!」
看護神は大きく足を開き、腕を前で交差させる。
看護神「腕を交差させて、足を大きく開いて力を入れてね。
後は大きな声で『ガード!』とか『守れ!』みたいに
守りの言葉を言うだけで発動できるわよ。」
冬夜は看護神に言われた通りのポーズをする。
だが、看護神はストップをかける。
看護神「待って、その加護の効果は1時間。
今発動しちゃうと、復活した時に効果が切れちゃう。
前にも話したけど、発動したら5日間はまた出せないからね!」
5日間のインターバル。しかもまだ冬夜を殺した悪党が
去って行ったかも分からない。
だが発動方法が分かった今なら、少しでも自分の身を守れる。
それだけでも安心感が段違いだ。
冬夜「ありがとうございます。これで…みんなを守れるかもしれない。」
看護神「肝に銘じてね。いざという時に使うのよ。」
2人の神様に感謝を告げると、冬夜の身体が光に包まれて消えていった。
創造神「…伝えるべきことも伝えたし、元いた世界での様子も知れたな。
これで安心して見守ることが出来るな。」
──────
再び村に戻った冬夜は、悪党たちがいないことに気づく。
そして冬夜が右を向くと───
ボタッ
頭部のない悪党が道端で倒れている。
その光景に冬夜は足がすくんで固まってしまった。
しかも────
アテンザ「あ、冬夜…!!帰って来たんだ…!」
コスモノス「まさか本当に生き返ってくるなんて…。」
返り血を大量に浴び、笑顔になった2人の天使と
12人の悪党全員がさらし首状態にされていたからだった。
冬夜「あ、あぁ……っ…。」
同居者の中で最大の狂気を感じた瞬間だっただろう。
冬夜はあまりにも恐ろしい光景を目の当たりにしてしまい…。
冬夜 (神様。どうやら僕は、精神も鍛えられる必要があるみたいです…。)
膝から崩れ落ちて気絶してしまった。
血まみれのアテンザとコスモノスが冬夜に駆け寄る。
アテンザ「大丈夫…?冬夜…。また死んじゃったとかない…ですよね!?」
冬夜は顔が青ざめ白目をむいてかすかにうめき声を出している。
コスモノスは冷静に彼の状態を分析した。
コスモノス「うーん。戻ってきて最初に見た光景がこれだと
さすがの真人間でも倒れちゃうよね。」
その後コスモノスが笑顔でこう言った。
コスモノス「大丈夫。気絶してるだけでまた死んだわけじゃないよ。」
その曇りのない笑顔を見たアテンザは安堵と恐怖が混ざった
何とも言えない表情になった。
アテンザ「コスモノス様…血まみれでそんな笑顔になると
逆に怖いです……。」
そう言われたコスモノスはきょとんとした顔になった。
コスモノス「あれ?あぁそう…。ふむ…ボクが怖いだなんて言われたの
天使族ではキミが初めてだよ。」
のんきなコスモノスを見て少し呆れたアテンザは
冬夜を抱えて家に向かって行った。
アテンザ「とにかく、冬夜を家に入れないとです。
何があったかお話しするのは目覚めてからにしましょう。」
アテンザの後ろをコスモノスはついて行く。
コスモノス「そうだね。彼には感謝も伝えなきゃだし。
ちょっとでも早く目覚めてほしいからね。」
その2人の歩みに狂気は感じず、優しい雰囲気が漂い始めていた。




