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第19話 足りない添え物

これまでの登場人物

●神城 冬夜 (かみしろ とうや) 15歳 男性

 交通事故で死んだ後この世界にやって来て

 トマトを作っていたら2つの国の戦争を終わらせ

 5人の新規同居者に恵まれた。


●セラ・トミーガーデン 195歳 女性

 トマトの村で暮らす少女。見た目は冬夜より少し年上ぐらい。

 人間と触れ合うのは実は初めてだが

 『学校の男子たちと同じように話せばいいでしょ!』の

 気持ちで話しかけているため、時々距離感がバグることがある。

 冬夜のことがますます気になってきたようだ。


●セリカ 年齢不詳 女性

 蜘蛛族で下半身が本物の蜘蛛のように変身できる。

 額にも目が2つあり、視力はかなり良い。

 おっとりした性格で大抵はニコニコしている。


●シルビア 年齢不詳 女性

 手先が器用で裁縫が得意なダークエルフ。

 何に対しても興味を持ち、常に元気。

 作った服を村人たちに着てもらい

 喜んでもらうことを夢見ている。


●ティアール 年齢不詳 女性

 ヴァンパイア族で見た目は冬夜を除いて1番幼い。

 控えめで素直な態度をとる性格で、血を扱う魔法が使える。

 自己主張をしたがらないので

 相手に押されてばかりなこともしばしば。


●インテグラ 年齢不詳 女性

 猫耳を付けた獣人族。主に治癒の薬を作ることに専念している。

 だが用途通りに使われないことが多く途方に暮れている。

 暗い性格でよく自分を卑下するが

 本人は少しでも何とかしたいと思っている。


●アテンザ 年齢不詳(205歳以上) 女性

 元天使軍の兵士として天使の国を守っていた…が

 実際は拠点の門番役だったらしい。

 大空を飛ぶことに憧れ、自力で曲芸飛行を覚えた。

 いつか冬夜を抱えて雲の上の世界を見せてあげたいと考えている。



 畑から取れたスパイスや、移住者や村の住民から貰った材料。

 さらにはアテンザが用意してくれたケンルタスの肉。


 そしてとうとうカレーが完成した。が…


冬夜「アレがない…!!」


冬夜は随分慌てている。


インテグラ「何がないんですか…?」


冬夜「お米…もしくはナンだ!!」


 冬夜はパンの1種を想像したが、6人には何のことなのかさっぱりだ。


セラ「冬夜、どうしちゃったの!?」


冬夜「ナンが欲しいんだ!!」


シルビア「ナン……?一体何なの?!」


 6人はまだ理解が出来ていない。

 そこで冬夜はカレーレシピのページをめくり

 さらなる材料を用意する。


 畑で収穫した小麦を粉状にした小麦粉

 微量の塩、そしてこれまた畑で収穫したオリーブをろ過した物。

 いわゆるオリーブオイルだ。


 冬夜は移住者がやってくる前から、このような調味料や

 様々な料理に使える食材を植えて育てていたのだ。


冬夜「ようやくオリーブオイルが役に立つときがやって来た…!」


 冬夜はフライパンとボウルを用意し、まずボウルに小麦粉を入れた。


冬夜「ティアール、水をカレーに使った分より

   少し多めに入れてくれないかな?」


ティアール「は、はい…!」


 ティアールはボウルの上に手をかざし、水を少し多めに出す。

 いい感じに入ったところで冬夜は水を止めるよう指示する。


冬夜「ストップ。すごい、ちょうどいい量だよ。」


ティアール「本当ですか!えへへ…!」


 冬夜に褒められ、ティアールは上機嫌になる。


 そして微量の塩と、そこそこの量のオリーブオイルを入れると

 冬夜はそれをこね合わせ始めた。


 ある程度こね続けると、今度はボウルに叩きつけながら

 さらにこね始めた。


冬夜「んっ…!んん……ッ!!」


 その様子を見てアテンザは顎に手を当てる。


アテンザ「冬夜の動きが急に力強くなった。

     まるで何かに恨みでもあるかのように見えるわ。」


 数分経過し、最初はベタベタしていた生地が

 だんだんまとまり滑らかになってきた。


冬夜「次に、これをラップするんだけど…。

   ラップがないからフタでいっか。」


 フタをすることおよそ15分。

 冬夜は包丁を出し、丸めた生地を7等分にした。


 そして生地をまな板の上に置き、めん棒を取り出す。

 冬夜は少し力を入れて生地を伸ばしていった。


冬夜「だいたいこれぐらいかな…。」


 伸ばした生地を2つ目のフライパンに2つほど置き

 再びセラに火を灯すようお願いする。


冬夜「さっきカレーを炒めたときと

   同じ感覚で火をつけてほしいな。」


 セラは言われた通り、小さい火をフライパンの下に灯した。


冬夜「そうそうそんな感じ。」


 フライパンからジリジリと音が鳴り始める。

 数分が経つと、ナンにこんがり焼き色がついてきた。


冬夜「あとはひっくり返してもう片面も焼けば…。」


 同じ手順で裏面もしっかり焼くと…。


冬夜「…これで完成かな。」


 カレーに合う『ナン』が出来上がった。


 冬夜はナンを1つちぎり、カレーに浸けて一口。


冬夜「…!おいしい!いい感じに辛みがあって食べやすい!」


 その言葉を聞いて6人は目を輝かせる。


セラ「冬夜だけ独り占めしないでよね!私たちも食べたいんだから!」


冬夜「分かった分かった…。ほら、セラもこのナンを

   カレーに浸けて食べてみて。」


 そうしてセラは冬夜から受け取ったナンをカレーに浸けて

 口に運んでみる。


セラ「んんッ…!?何これ!?すごく美味しい!!」


 セラはさらに目を輝かせ、冬夜の肩をつかむ。


セラ「おいひいわこれ!ふぉーやのひぇふぁいには

   ふぉんなひょうりがあっふぁのね!!」

   (美味しいわこれ!冬夜の世界には

   こんなおいしい料理があったのね!!)


冬夜「お行儀悪いから食べるかしゃべるかどっちかにして……。」


 セラの反応を見た5人は残った1つのナンをちぎって分けた。

 あまりの反応に理性が耐えられなくなったようだ。


 するとセラが冬夜の肩をポンポンと叩く。


セラ「冬夜!後ろ、見てみて!」


 言われるがままに冬夜は後ろを振り向くと…。


冬夜「えっ…!?いつの間にこんなにたくさんの人が…!?」


 なんとそこには長蛇の列が。

 しかも丘のふもとにある村まで一直線に続いている。


冬夜「どうしよう…7人分しか作ってないんだけど…。」


 冬夜は行列に向かって頭を下げる。


冬夜「…本当にごめんなさい!

   このカレーは僕たち7人分しか作ってなくて…。」


 すると、行列の先頭に立っていた(たぬき)耳の老齢男性は

 状況を察したのか優しいほほえみを見せた。


狸耳男性「いいんじゃよ冬夜くん。ワシらこそ、匂いに釣られて

     カレーを欲しがってすまなかった。」


 その声に後ろにいた犬耳男性も明るい声で話す。


犬耳男性「本当はそこの家族で堪能したかったんだよな。」


 暖かな声が冬夜を包み込み、村の住人や移住者たちのやさしさに

 冬夜はあまりにも嬉しかったのか目から涙がこぼれ落ちる。


冬夜「み、皆さん…っ。」


狸耳男性「ちょ、冬夜くん…?悪かった!泣かせたかったわけでは…。」


 狸耳の老齢男性が慌てて冬夜に謝ろうとするが

 冬夜は涙を流す中、笑顔になった。


冬夜「違うんです…。僕の作ったものが誰かに求められたという事が

   人生で初めてだったので嬉しくて…。」


 嬉し涙だったことを伝えると、行列の一行は

 全員笑顔になった。


冬夜「今度、スパイスをたくさん作りますので

   よろしければレシピの方を教えます!」


 それを聞いた行列は冬夜から次々とレシピを教わった。


 すると突如として村の広場に重苦しい気配が走り

 ざわめいていた村人たちが一斉に黙り込む。


 空を裂くようにして現れたのは、あの魔王。

 以前、冬夜の“トマト”を求めてやって来た、あの威厳ある存在だ。


村人「ま、魔王様……!」


 村人たちは恐れながらも深々と頭を下げる。


 魔王の赤い瞳が辺りを見渡し、鼻をひくつかせる。


魔王「……なんだ、この芳醇な香りは……。

   ただの料理ではないな。まるで魂を揺さぶるような香りだ。」


冬夜「実は、この料理には僕のトマトを使っているんです。」


 その言葉に、魔王の瞳がぎらりと輝いた。


魔王「……な、なんだと!?あのトマトが、この料理の中に

   隠れているというのか!?信じられん……全く気が付かないな。」


 興奮した魔王は、冬夜の持っていたレシピ本へ視線を移す。

 表紙には、例の笑顔のインド人がポーズを決めている。


 魔王は手をかざし、魔力を込める。


魔王「……よし、この作り方を我が記憶に刻み込む!

   これぞ魔族の未来を切り(ひら)く“知識”だ!」


 本がぱらぱらと風にめくられ、光の粒子となって

 魔王の脳裏に吸い込まれていく。


 その姿に村人たちは唖然する。


冬夜 (え、そんなすごい能力あるんだ……。)


 と心の中で突っ込まずにはいられなかった。


魔王「早速我が城でも作ってみるとしよう!

   冬夜よ、材料はあるか?」


冬夜「ごめんなさい。他の人に分け与えるほどの量はできていません…。

   用意が出来ましたら、そちらにお送りします。」


 冬夜の言葉に魔王は笑顔で頷いた。


魔王「うむ。待っておるぞ。」


 そう言って魔王はお城に向けて羽ばたきだした。


 そして行列の最後尾までレシピを教えたことで

 あたりは星と月が輝く夜になっていた。


冬夜「なんだか、今日は星空がきれいに見えるね。」


 その言葉を聞いた6人は少し顔を赤らめる。


ティアール「冬夜さん、その言葉の意味…知っていますか…?」


 何やら6人の様子がおかしい…。

 冬夜は6人の体調を心配して家に戻すことにした。




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― 新着の感想 ―
Xの方から伺わせていただきました! ネット小説という媒体で受け入れられやすい物語をストレートに踏襲した作品という印象をうけます! 主人公がそれなりに辛い目に遭ったりトラブルに遭ったりしつつも基本的に…
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