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第17話 新料理と独特なにおい

これまでの登場人物

●神城 冬夜 (かみしろ とうや) 15歳 男性

 交通事故で死んだ後この世界にやって来て

 トマトを作っていたら2つの国の戦争を終わらせ

 5人の新規同居者に恵まれた。


●セラ・トミーガーデン 195歳 女性

 悪魔の村で暮らす少女。見た目は冬夜より少し年上ぐらい。

 人間と触れ合うのは実は初めてだが

 『学校の男子たちと同じように話せばいいでしょ!』の

 気持ちで話しかけているため、時々距離感がバグることがある。

 冬夜のことがますます気になってきたようだ。


●セリカ 年齢不詳 女性

 蜘蛛族で下半身が本物の蜘蛛のように変身できる。

 額にも目が2つあり、視力はかなり良い。

 おっとりした性格で大抵はニコニコしている。


●シルビア 年齢不詳 女性

 手先が器用で裁縫が得意なダークエルフ。

 何に対しても興味を持ち、常に元気。

 作った服を村人たちに着てもらい

 喜んでもらうことを夢見ている。


●ティアール 年齢不詳 女性

 ヴァンパイア族で見た目は冬夜を除いて1番幼い。

 控えめで素直な態度をとる性格で、血を扱う魔法が使える。

 自己主張をしたがらないので

 相手に押されてばかりなこともしばしば。


●インテグラ 年齢不詳 女性

 猫耳を付けた獣人族。主に治癒の薬を作ることに専念している。

 だが用途通りに使われないことが多く途方に暮れている。

 暗い性格でよく自分を卑下するが

 本人は少しでも何とかしたいと思っている。


●アテンザ 年齢不詳(205歳以上) 女性

 元天使軍の兵士として天使の国を守っていた…が

 実際は拠点の門番役だったらしい。

 大空を飛ぶことに憧れ、自力で曲芸飛行を覚えた。

 いつか冬夜を抱えて雲の上の世界を見せてあげたいと考えている。



 翌朝、冬夜が目を覚ますと、机の上にあの虹色の種が30個置いてあった。


冬夜「また増えてる……。種が尽きた次の日にはもうあるんだよな…。

   ってあれ…、こんな本あったっけ…?」


 その本にはどうやら転生前の世界で言うインド人らしき人が

 それはもうまぶしい笑顔でカレーを作る写真が見開きにあった。


冬夜「なんか動画で見たことあるな…この人。

   ダジャレを言いながらカレーを作ってたような…。」


 冬夜は1階に降りて朝食を摂る。

 その最中にシルビアの悔しがる声が部屋中に響く。


シルビア「…んがぁああ…!もぉーずるいよ!なんでティアールとインテグラが

     冬夜くんの隣なの!? 私も隣がよかったー!」


セラ「でもシルビアちゃん、私の隣だから一番お得だと思うけど?」


 セラのちょっとしたささやきにシルビアは顔を赤らめる。


シルビア「そ、それは……!ちょっと違う意味で

     心臓に悪いんだからっ!」


 アテンザはトマトをかじりながら呆れる。


アテンザ「部屋割りごときで争っても何も変わりませんよ。

     もっと別のことで争ってみたらどうです?」


冬夜「できれば争いはしない方が助かるんだけど…。」


 セリカは昨日の初対面時から変わらず笑顔で振る舞う。


セリカ「えへへ、私はどの部屋でも平気。

    夜はぐっすり眠れましたぁ。」


冬夜はトマトスープをすすりながら、頭を抱える。


冬夜 (……平和なはずの共同生活、もうすでに波乱の予感しかしないが…。

   よし、アレを作るか…!!)


 冬夜にはある考えがあった。それは昨晩夢で見たあの料理を…!!


 冬夜は朝食後、みんなの前で少し照れながらも告げた。


冬夜「みんな、聞いてほしいんだ。今日から新しい料理を作ってみる。

   その名前は…。カレーだ!」


セラ「か、かれぇ……?辛いの?」


シルビアは眼を輝かせる。


シルビア「未知の料理!?どんなの?どんなの?」


 するとティアールが小さく手を上げる。


ティアール「でも材料は……あるのですか? 初めて聞く料理ですし…。」


冬夜「それがね……昨日夢で食べたんだ。すごく濃厚で香りが爽やかで……。

   で、今朝起きたら、部屋にカレーの本が置いてあったんだよ。」


 すると6人は「えぇぇーー!?」と揃って声を上げる。


アテンザ「夢と現実を繋ぐ導き…ですか。これはただ事ではない…。」


セリカ「夢のご飯かぁ……。素敵だねぇ。」


 冬夜は仲間たちを畑の新しい区画へ案内した。

 そこはまだ何も植わっていない囲い付きのスペース。


冬夜「ここに頭の中で浮かべたスパイスを植えてみる。

   ターメリック、クミン、コリアンダー……。」


 畑に膝をつき、ひとつひとつ名前を唱えて種を植える。

 数分後、土がわずかに震え、芽がポツリと顔を出す。


 生えてきた芽を見てインテグラは眼を輝かせる。


インテグラ「すぐに生えてくるなんて……植物学的に見ても前代未聞……!

      スパイス畑、すごいことになりそう…!」


 こうして冬夜のカレー作り計画が始まった。


 数日後――。


 冬夜が囲った畑からは、色鮮やかなスパイスたちが芽吹き始めていた。

 黄色い花を咲かせるもの、背の高い草、そして独特な香りを放つ葉――。


 セラが鼻を抑えて冬夜に迫る。


セラ「ちょ、ちょっと冬夜っ!この葉っぱ、すっごい匂いするんだけど!?

   鼻が…! 鼻がやられちゃう…っ!」


セラが涙目で後退すると、シルビアも苦笑しながら鼻をひくつかせる。


シルビア「ほんとだ……。なんていうの?この攻撃力抜群の匂い……。」


 冬夜は少し申し訳なさそうに答えた。


冬夜「あぁ…これはコリアンダー。別名、パクチーって呼ばれてた。

   前の世界では、好きな人と嫌いな人でハッキリ分かれる食材だったんだ。」


 セラは手を高く上げて「嫌いな人代表!」と大声で主張する。


 一方、インテグラは畑にしゃがみ込み、目を輝かせて葉をじっと観察していた。


インテグラ「この香り……ただの刺激臭ではない…。

      もしかしたら、回復草との調合に使えば

      治癒効果をさらに引き出せるかも…?」


 セラは今の発言にぎょっとする。


セラ「えぇ!? あんなのを薬にする気なの!?」


 インテグラは真剣に頷いた。


インテグラ「薬は味や匂いより、効能がすべてです…。

      もしこれで回復率が上がるなら

      病に苦しんでる人にも重宝されるはず…。」


 冬夜はそんな二人を見比べ、苦笑いを浮かべた。


冬夜「……カレーに使うだけじゃなく、薬にもなるなんて。

   やっぱりこの世界、何が起きるかわからないなぁ。」


 パクチーをめぐる「好き嫌い」と「可能性」。

 新しい食材は、思いもよらない形で村に影響を与え始めていた。

 村の誰も知らない「未知の香り」を求めて――。



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