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第15話 自己紹介と過去

これまでの登場人物

●神城 冬夜 (かみしろ とうや) 15歳 男性

 前の世界では両親の虐待とクラスメイト達のいじめで心を閉ざした。

 のちに両親への反抗として財布から現金を奪ったのちに

 コンビニへ行こうとしたところ…

 信号無視のミニバンに轢かれて死んでしまった。

 新たな世界では空き家にクワとジョウロと虹色の種

 そして分厚い農業の本があったため

 1人で食を確保しようと奮闘することになる。

 ある時、セラと共に畑仕事をしていたら

 賊に殺され、白い世界へ向かったあと帰って来た。


●セラ・トミーガーデン 195歳 女性

 悪魔の村で暮らす少女。見た目は冬夜より少し年上ぐらい。

 人間と触れ合うのは実は初めてだが

 『学校の男子たちと同じように話せばいいでしょ!』の

 気持ちで話しかけているため、時々距離感がバグることがある。

 最近冬夜のことが少し気になってきたようだ。


 村長から移住者を引き受けてくれと言われ

 5人がやってきたわけだが…。


 見ず知らずの美人さんたちと1つ屋根の下で暮らすなんて

 冬夜の心臓がとても持たない。


冬夜「えっと…皆さん。ま、まずは自己紹介を、お願いします…。」


 冬夜はおそらく人生で1番緊張して言葉が思うように出てこない。

 最後の方は小声になってしまっていた。


 だが5人には伝わったようで、彼女たちはそれぞれ自己紹介を始める。


 最初に蜘蛛族の女性が優しい雰囲気で声を出す。


蜘蛛族の女性「蜘蛛族のセリカと言います~。

       おでこにも目があるので視力は良い方です~。」


 そう言いセリカはおでこを見せた後、下半身を変化させる。


セリカ「蜘蛛族なので下半身から糸を飛ばせます~。」


 変化した下半身は蜘蛛のように足が8本に増え、下腹部が肥大化した。


セリカ「でもこの姿は身体の負担が大きかったりするので

    大抵は人に近い姿で生活すると思います~。」


 変身した姿を見てセリカを除いた6人は歓声と拍手が起こる。

 拍手が鳴りやむと、セリカは元の姿に戻った。


 こうして蜘蛛族、セリカの紹介が終わり

 続けて小麦色の褐色肌をしたエルフ族の女性が元気に喋り始める。


エルフ族の女性「ダークエルフのシルビアと言います。

        裁縫が得意で服とか作るのが得意です!!」


 するとシルビアはリュックから服を取り出す。

 女性ものの黄色いワンピースで、派手さはなく綺麗な装飾が施されている。


シルビア「この服、私が縫ったんです!普段使いできるよう

     飾りは極力抑えたつもりです!」


 またも拍手が起きる。するとセラがこんなことを言い出す。


セラ「ねぇねぇシルビア!その服、私着てみたいけどいい?」


 その声にシルビアは目を輝かせる。


シルビア「わぁ…!もちろんです!絶対似合いますよ!!」


 その発言はまるで服屋の店員のようだ。


 シルビアの紹介が終わり、3人目。

 ヴァンパイア族の少女が緊張気味に喋り始める。


ヴァンパイア族の女性「えっと…ヴァンパイア族のティアールです…。

           血を吸ったり、それを道具に変えたりできます。」


 そう言うと、ティアールは手を差しだす。

 すると手の上に赤黒い球体が現れた。


冬夜「これも、魔法なのかな…?」


 冬夜の疑問にティアールはすぐに言葉を返す。


ティアール「は、はい!そうですっ。

      ヴァンパイア族のほとんどはこの魔法が使えるんです…!」


 そうして赤黒い球体は形を変え始める。

 やがてどんどん武器のような姿になり──。


 まるで死神が持つような巨大な鎌へと変化した。

 鎌の先端からは血が滴り落ちる。


冬夜「すごいけど怖い…。」


 冬夜が少し怯えると、ティアールはまたもすぐに言葉を返した。


ティアール「す、すみません…!でも、こんな感じで

      血で武器を生成しないと、ヴァンパイア族は

      生き残れないんです…!」


冬夜「護身用なのかぁ…。ちなみに血が少なくなったときは

   どうやって血を得るの?」


 冬夜はヴァンパイアに興味津々で質問を投げる。

 その質問にティアールはすべて答えた。


ティアール「えっと、基本的には首筋に噛みついて

      血を得るんですけど…。」


 どうやら直接噛みつく以外にも方法があるらしい。

 これまで冬夜が考えていたヴァンパイアのイメージを変えていく。


ティアール「凶暴な人だったり、動物とか、あと小さい子どもには

      詠唱で血を吸い取ります。ただ量は控えめですが…。」


冬夜「魔法って何でもできて便利だなぁ…。」


 冬夜は羨ましがる。

 自分にも魔法が使えたら…と前の世界でもよく考えていた。


 ティアールの紹介が終わり、4人目。

 猫耳を付けた女性が細々と喋り始める。


猫耳女性「あ、私っ…インテグラって言います…。

     猫耳の獣人族です……。」


 喋り方は先ほどのティアールより緊張しており

 追加で怯えも見える。


インテグラ「薬の研究をしていますッ…。なので…。

      追い出したり見捨てたり、しないで下さい…っ…。」


 インテグラは両腕を交差させて顔を隠す。

 まるで「殴らないでください」とでも言っているようだった。


冬夜「えっと…。そんなに怯えなくても大丈夫だよ。

   ひどいことをする趣味はないから、研究に情熱を注いでほしいな。」


 冬夜はこの家に危険がないことを説明すると

 インテグラの表情は明るくなった。


インテグラ「ぁ…!本当ですか…!!」


 そして冬夜は彼女がどんな薬を作っているかを聞き出す。


冬夜「ところで、どんな薬を…?」


 インテグラはおどおどしながら答えた。


インテグラ「えっと…治癒関連の薬を作ってます…。

      毒や麻痺を鎮めたり、体力の回復をしてくれるものを…。」


 インテグラが話し終えると、冬夜は眼を輝かせる。


冬夜「すごいものを作ってるなぁ…!!村には薬屋さんがないから

   きっといろんな人から頼りにされると思う!」


 だが彼女の眼は再び光を失う。


インテグラ「でも…。その薬を悪用する人がいて…。

      特に体力を回復するものは、事務のお偉いさんが

      たくさん購入してて…。」


 ──ブラック企業じゃねーか!と冬夜は心の中でツッコミを入れる。

 それでも冬夜はインテグラに優しく言葉を投げかけた。


冬夜「でもそれだけ功績があるってことは、インテグラのことを

   頼りにしてくれてるってことだよ。

   本来の用途は休めない体を少しでも落ち着かせるためだもんね。」


 インテグラは再び眼に光が宿る。


インテグラ「そうなんです…!これからは用途のために使ってほしい薬を

      がんばって作ります!!」


 インテグラがやる気に満ちたところで、紹介が終わる。

 そして最後の5人目は落ち着いた雰囲気を持ちながらも

 どこか戦闘狂的な雰囲気がある天使の羽を付けた女性だ。


天使族の女性「私はアテンザ、元天使軍の兵士です。

       天使なので一応空を飛べたりはできます。」


 元天使軍。つまりは前線で配備されていた…ということなのだろうか。

 するとアテンザはうつむいて話す。


アテンザ「ただ、戦場では飛ぶ機会はほとんどありませんでした…。

     私がまだ80歳ぐらいの頃、私を救ってくれた天使軍が

     大空で戦う姿を見て、軍にあこがれてたんですが…。」


 80歳でまだ。やはり真人間以外の寿命はとても長いと冬夜は感じる。


アテンザ「でも、訓練はちゃんと受けました!

     135歳から退役する205歳までの間は毎日飛行トレーニングをして

     低空飛行や失速からの立ち上がりまで、何でもできます!」


冬夜「空を飛べるっていいなぁ…。」


 冬夜がそうつぶやくと、アテンザはぶっ飛んだことを思いついた。


アテンザ「なら、私に抱かれながら空を飛んでみない!?

     翼を持っていなくても、抱えられれば翼を持ったのと一緒よ!」


 だが冬夜はいきなり大空を飛ぶという未知の領域には

 恐怖を感じていた。


冬夜「また死にたくないので遠慮します…。」


 アテンザは今の発言に疑問を持つ。


アテンザ「『また』?私は今幽霊と話しているのか。」


 無駄に冷静すぎる…。そこにシルビアと戻ってきたセラが話に入る。


セラ「冬夜は2か月ほど前に、ならず者に襲われて命を落としちゃったの。

   だけど『神様のもとに行ってきた』とか言って戻ってきたのよ。」


 セラが説明するとアテンザは不思議そうに冬夜を見つめる。


アテンザ「なんとも不思議ね…。死んだはずなのに帰ってくるなんて…。」


 そこに冬夜は補足を入れる。


冬夜「この世界に来る前、僕は自動車、この世界で言う馬車よりも速い

   鉄の塊にぶつけられた挙句、乗ってた人に暴言を浴びせられたんです。」


 それを聞いた6人は全員驚きと恐怖が混ざった顔になった。


冬夜「まぁ、あの件が無かったら僕はここにはいないわけだし…。

   この世界もまだ悪魔と天使で戦争が続いてるだろうし。

   ともかく前の生活には絶対戻りたくないな。」


 6人は複雑な感情が入れ混じる。


 セラはここに来た経緯を初めて知り、震える。

 セリカは「怖かったね…。」と冬夜を心配する。

 ティアールとインテグラは涙を流す。

 シルビアは口を開けて固まっている。

 そしてアテンザは下を見て涙をこらえている。


冬夜「…なんだか暗い気持ちにさせちゃったね。

   僕は今が1番幸せな状態だからあまり悲しまないで…!」


 冬夜は元気づけようとすると

 6人は一斉に冬夜に抱き着いてきた。


 冬夜の心拍数が急激に上昇し、顔が赤くなる。


冬夜「うわぁあぁあッ!?ど、どうしたのみんな…!?」


 6人に聞いても誰も答えない。

 それどころか抱きしめる力が少し強くなっていった。


 こうして冬夜を囲んだ熱い抱擁は日が暮れるまで続いていった。





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