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第12話 トマト条約交渉

これまでの登場人物

●神城 冬夜 (かみしろ とうや) 15歳 男性

 前の世界では両親の虐待とクラスメイト達のいじめで心を閉ざした。

 のちに両親への反抗として財布から現金を奪ったのちに

 コンビニへ行こうとしたところ…

 信号無視のミニバンに轢かれて死んでしまった。

 新たな世界では空き家にクワとジョウロと虹色の種

 そして分厚い農業の本があったため

 1人で食を確保しようと奮闘することになる。

 ある時、セラと共に畑仕事をしていたら

 賊に殺され、白い世界へ向かったあと帰って来た。


●セラ・トミーガーデン 195歳 女性

 悪魔の村で暮らす少女。見た目は冬夜より少し年上ぐらい。

 人間と触れ合うのは実は初めてだが

 『学校の男子たちと同じように話せばいいでしょ!』の

 気持ちで話しかけているため、時々距離感がバグることがある。

 最近冬夜のことが少し気になってきたようだ。


 魔王と天使たちは冬夜の作るトマトが大好きであるがあまり

 戦争を終結させる協議と、トマトを使った条約の場が開かれた。


 冬夜は状況の理解がまだ追いついていない。

 村の人々を笑顔にすることが彼にとっての幸せだったのが

 いつの間にか2つの国を平和にする…

 という所になっているのだから。


 場所は村の広場。

 急遽、長机が並べられ、悪魔国の魔王、天使国の代表3人

 そして冬夜とセラが着席していた。


 机の真ん中には――赤く輝くトマトが一つ。


冬夜「……え、これって本当に国同士の条約の場なの?」


セラ「完全にトマト会議よね……?」


 魔王は重々しく口を開いた。


魔王「我ら悪魔国は、この冬夜のトマトを正式に

  『国家宝物』と認定し、村の保護を約束する。」


天使Aがすぐさま反論する。


天使A「お待ちください!我々天使国も、このトマトの育成に

    資金と技術を提供し、共同研究を望みます!」


天使B「いえ!まずは我々に一週間に一度

    最低でも10個は分けていただきたいですわ!」


天使C「それでは足りません!

    我が神殿の祭壇に常に供えたいので、毎日3個を……!」


冬夜「腐っちゃったらどうするんだろう…。」


 セラは机をドン!と叩く。


セラ「ちょっと待って!冬夜はそんなに大量に作れないのよ!

   畑は広げてるけど、トマトって勝手に無限に実るわけじゃないんだから!」


冬夜は苦笑いしつつも提案する。


冬夜「えっと……僕の畑は現状、週に30個ぐらいが限界です。

   悪魔国と天使国でまずは10個ずつ分けるっていうのはどうですか?

   残りの10個はこの村で分けることになりますけど…。」


魔王と天使代表たちは顔を見合わせ……そして全員、机に身を乗り出した。


4人「「その条件で条約を結ぼう!!」」


セラ「ちょっと!?あっさりまとまったじゃない!」


魔王はにっこり笑みを浮かべ、厳かに宣言する。


魔王「かくして、ここに『トマト条約』が締結された!

   悪魔国と天使国は、トマトの平和のもとに戦争を終結させる!」


天使A「戦争よりトマト!」

天使B「剣よりトマト!」

天使C「翼よりトマト!」


セラ「いや最後のはおかしいでしょ……。」


 冬夜は笑いながら、目の前の真っ赤なトマトを見つめた。

 ――こうして、一つのトマトが二つの国の未来を変えることになったのだった。


 条約締結から数週間後。


 冬夜とセラがいつもの畑を耕していると、見知らぬ人々が村にやってくる。


移住男性A「ここが……あの“トマトの村”か!」

移住男性B「戦がなくなったおかげで、ようやく安心して住める!」

移住女性A「トマトがたくさん食べられるし、空気もおいしい!」


 移住してくるのは悪魔国の元兵士や、天使国から流れてきた商人

 さらには両国の板挟みにあって居場所をなくした者たち。


 彼らはみな口を揃えて「この村なら平和に暮らせる」と言った。


セラ「ちょっと、冬夜! どんどん人が増えてるじゃない!」


冬夜「いや、僕に言われても……でも、にぎやかになるのはいいことだよ。」


 気づけば村の人口は倍に増え、道は整備され、広場には市場が立ち始める。


 悪魔と天使が同じ屋台で「トマトサラダ」を分け合っている光景に

 セラは目を丸くした。


セラ「……ホントに戦争、終わっちゃったんだね。」


冬夜「うん。きっかけは小さな畑だったけど……

   みんなトマトをきっかけに仲良くなれたんだ。」


 魔王も天使国の高位聖女も、ときどき視察に訪れては

 冬夜の畑を見て「やはりこのトマトが平和の象徴だ」と

 満足そうに頷いて帰っていった。


 こうして、戦争終結のきっかけとなったこの村は

 いつしか「トマトの村」と呼ばれ、移住者が後を絶たない

 賑やかな場所へと変わっていくのだった――。




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