第1話 僕は死んだ
デビュー作にして最初が異世界転生モノとベタァーなものですが
よろしくおねがいします。
僕の名前は 神城冬夜。15歳。中学3年生。
僕の人生は、優しさとは無縁だった。家庭では怒鳴り声と暴力が当たり前。
学校では見下され、殴られ、笑われる。味方など、どこにもいなかった。
僕はこの腐りきった世界に少しでも抵抗するべく
親の財布から計6,000円を盗み取った。
親は毎日酒に酔っぱらって危機感もなくグースカ寝ている。
警戒心が全くないから盗りやすいのはものすごく助かる。
お金を手にした僕は、凍てつく夜風を受けながら
少し遠くにあるコンビニへ足を運ぶことにした。
信号が青に変わる。周囲にクルマがいないことを確認して
横断している時だった。
ギャアァアァアァッッ
プァップァア────ッ!!
確かに歩行者用の信号は青だ。それは間違えるはずない。
だけど、なぜだろう。僕の身体は宙を舞っている。
そして僕は勢いよく地面に叩きつけられた。
ミニバンドライバーの中年男「おいクソガキ!
大事なクルマに何しやがるんだ!!」
ミニバン助手席の若い女「てか、こんな時間にガキが出歩いてんじゃねーよ。」
この時間なのにボディが真っ黒で無灯火運転をしていたミニバンが
僕を轢いたのだ。
しかも信号無視。おまけに搭乗者は暴言を吐いて僕に近づく。
身体が持ち上げられ、首が痛む。
男の人は僕に暴言を何度も吐いているようだが
僕にはノイズのようにしか聞こえない。
どうしてこの世界は、誰もが僕のことを、ここまで敵視するんだろう。
親のお金を盗んだのがいけないことなのは十分理解している。
だけど──。
ちょっとしたことに対してここまでの仕打ちをしないと
世の中は満足してくれないのだろうか。
冬夜 (僕の人生、何もかも上手くいかなかったな…。
何のために生きてたんだろう…。)
そう心の中でつぶやいたのと同時に、僕は意識を手放すしかなかった。
──────
いったいどれほどの時間、眠っていたのだろう。
僕はゆっくり目を開けて立ち上がる。目の前に広がっていたのは
紛れもなく見知らぬ世界だった。
青空は驚くほど透き通り、果てしない草原が広がっていて
鳥のさえずりが聞こえる。
けれども、そこには先ほどのドライバーによる罵声や
両親の怒号も、同級生の嘲笑もなかった。
冬夜「……ここは、どこ?」
誰も答えない。ただ、少し離れた丘のふもとに小さな村が見えた。
煙突からは白い煙が上がり、人々の生活があることを示している。
そして、僕の背後には一軒の空き家。
扉や壁は半ば壊れかけているが、屋根はまだ形を保っている。
冬夜「……とりあえず、ここで……。」
行くあてもない僕は、その家を自分の居場所に決めた。
そうとも知らず、あの村に暮らすのは“人間のような姿をした悪魔たち”だった。
その頃、天界では───。
創造神「あっれェ!?嘘だろ…やっべ、やっちまったよォ…!!」
光の玉のような存在――俗にいう“創造神”は、慌てふためいていた。
創造神「いやいやいや、もっとこう……チートスキルだとか、ハーレムだとか
楽園的な世界に送る予定だったんだよ!?
なにより、この子の人生を救済ルートに回すはずだったのにィ!!」
握りこぶしを何度も机に叩きつけ後悔する創造神。
だが、いまさら送り先を変えることもできない。
創造神「す、すぐにでも迎えに行って別の国に転生させ直したい……。
でも、もう始まっちゃったし……。ごめん、冬夜くん。
もし死んじゃったらここに来るように手配しておくからさァ!!」
創造神の懇願が届くことはなく、冬夜は草原にひとり立っていた。




