ビバ☆沖縄っ
武 頼庵様、主催の個人企画「夏の遊び」参加拙作になります。
不意に訪れた機会、沖縄石垣の旅。
若い男女は何して遊ぶ。
太陽がまぶしく照りつける夏。
どこまでも続く青い空そして透き通る海、白い砂浜。
ビバ沖縄っ。
7月のある日、倉野碧と明石環は南国の島へとやって来た。
それから、白石静と流星綺羅々の仕事仲間と保護者役(保護者がいる年でもないが、2人がどうしてもと言った)を買って出た、川田茜と矢留健司の婚約カップルである。
表向きは3泊4日の石垣島の旅だが、碧たちは仕事も兼ねていて、がっつりとした休みは3日目と最終日だけであった。
そんな中、茜と健司はプレ新婚旅行だとおのぼりさん気分で、石垣島を満喫している。
一方、碧と環たちは仕事に追われる2日間だった。
宿泊はフサキリゾート・ビレッジというリゾートコンドミニアムホテルで行動の拠点にしている。
コテージ風の部屋から、すぐ歩くとプライベートプール、プライベートビーチが広がっていた。
初日、二日目は、環たちとバカップル(あえていおう)は、食事ぐらいでしか顔を合わさない。
バタバタと慌ただしい南国での非日常が過ぎ・・・。
3日目を迎えた。
ピーカンに晴れた真夏の日差しが眩しい。
健司が借りたレンタカー、ハイエースに皆は乗り込んだ。
「やっと、この車の見せ場が来たね」
ここ数日、車の大きさには全く見合わない、茜と健司だけの仕様車だった。
そのふたりの内のひとり茜は助手席に座り、もうひとり運転席の健司にそう言った。
「まあな」
運転する健司は少しおどけた調子で答える。
「すいません、お二人とも、わざわざ車まで出していただいて・・・」
碧は身を乗り出して二人に頭を下げる。
「やめてよ」
「やめてくれ」
「・・・・・・」
健司はアイコンタクトで茜に譲る。
彼女は頷き、
「こっちが勝手についてきただけだから、むしろこんな機会を作ってくれて感謝してるの・・・ねっ」
「ああ」
二人は顔を見合わせて頷いた。
そのシンクロ具合に後ろの席の4人は思わず笑ってしまう。
「羨ましいお姉様」
環は碧を押しのけて、さらに身を乗り出す。
「おい」
「ふふふ、羨ましいでしょ。環ちゃんも幸せになるんだよ」
「はいっ!」
そう言う環に、茜、静と綺羅々は一斉に碧を見た。
「な、なに?・・・ナンデスカ」
思わず、どもる碧に一斉に笑う一同。
「じゃあ、今日はお兄さん、お姉さんにまかせときんしゃい。君たちが仕事中、こっちは目一杯遊んどったけん、よかベストスポットを案内するけんね」
茜は急に地元筑後弁口調になり、胸を叩いた。
「おおお!」
はんぶん仕事組は歓声をあげる。
石垣島は比較的都会な港近くから離れると、渋滞はほぼない。
ゆらゆらとアスファルトが蜃気楼で揺らめく、海岸線の道路を走らせ、御神崎の灯台までやって来た。
一行は断崖から見えるコバルトブルーの海と、熱気を一掃する吹き抜ける心地よい風を楽しんだ。
田舎道を走り、ランチは海がみえるおしゃれなカフェで、それぞれソーキそば、タコス、スイーツにぜんざい氷、シークワーサージュース等を堪能した。
それから川平湾でグラスボートに乗り、美しいサンゴ礁や熱帯魚を観賞した。
帰りの車の中、環、静、綺羅々が疲れて眠っているのを、隣の席の碧は愛おしそうに見つめていた。
「お疲れ様。碧君」
茜の声に、我に返った彼は、
「今日はありがとうございました。きっと皆、いい思い出になったと思います」
「あら、保護者が板についちゃって」
「彼女たちを巻き込んだのは僕ですから」
「そう」
「はい」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
少しだけ会話にセンチメンタルになったのか、互いに無言になる。
すると、
「まだまだ楽しむぞっ!」
健司の勢いのある一言に、思わず碧と茜は爆笑してしまう。
「むにゃむにゃ・・・うん?」
「くかーあんあん?」
「なんですかっ!」
3人娘はめいめい寝言を呟き叫ぶ。
「はい」
碧は笑顔のまま頷いた。
「ふふふ、そうね。本当は街灯煌めく石垣夜の町を、れっつエンジョイもいいと思ったんだけど、せっかくのリゾートホテルのシチュあるし、パリピしなくっちゃね」
「はあ」
碧は急に真顔となり頷く。
「・・・碧君、真面目すぎ。若いんでしょ。エンジョイしなさい」
「茜」
健司が嗜めるように言う。
「ごめん、ごめん」
茜は自分の頭を軽く拳で叩いた。
フサキリゾートに戻ると、もう夕暮れ時だった。
気温も多少下がり、海水浴するにはよい頃合いとなった。
水着へと着替えた女子勢は一斉にビーチへと走りだす。
先頭を駆けだす環は、ちょっぴり背伸びした感のある真っ赤なバンドゥビキニ。
静香は清楚さを感じる白のフリルワンピース。
綺羅々はそのお子ちゃま体型には若干似合わない黒の三角ビキニ。
最年長26歳の茜は、その褐色の肌が良く似合うクロスデザインのマッドグリーンの水着。
皆は砂浜をまっしぐらに走り海へ。
波間に足をすべらし跳ね上げると、夕日に水飛沫が煌めく。
若いみんなは日が沈むまで海を堪能した。
一方、碧と健司の男子はホテルからバーベキューセットを借りて、火を起して調理準備へとかかる。
「お疲れ~」
と、そこに遊び疲れた茜がビール缶を健司の頬にあてた。
「つめたっ」
「ははは」
驚く健司を茜は笑う。
「さささ、女子も手伝うわよ~」
年長者である茜の声かけに、
「はい」
と、3人娘は答える。
やがて、網の上に肉などの食材が焼かれ、美味しい匂いが鼻腔をくすぐる。
プシュ。
みんなはビール缶のプルタブを開け、
「かんぱーい」
皆んなはお腹いっぱい食べ、語りあう。
それから、許可された砂浜で手持ち花火を楽しむ。
海に映るは様々な色に煌めく光。
最後は打ち上げ花火、ドラゴン、大筒、そして落下傘など。
落下傘をゲットすべく砂浜を走る皆、青春しているという言葉が相応しい。
そして線香花火、碧は放つ小さな光りが環の横顔を美しく照らし出すのを見てドキリとした。
〆にはナイトプール。
真上の夜空には、月と満天の星々が輝く。
プール脇のちょっと控え目な灯りと相まって、碧と健司は女の子たちが、いつもと違って、美しく神聖なものに見えた。
凛とした不思議な気持ちと興奮、相反する感情がそこにはある。
楽しんだ一同は、コテージに戻るなり爆睡と相成った。
ジージー。
夜中、環は虫の音で目が覚めた。
ぼんやり眼で外へでて、なんとなくプールサイドを歩く。
「うわあ、綺麗」
思わず彼女は呟く。
それは蛍のような小さな光が、あたりを舞っていた。
やがて目も慣れてきて、少し離れたところに人影があった。
彼女はすぐに分った。
「アオちゃん」
「おう」
碧も分かっていたかのように片手をあげた。
それからふたりは、月あかりと星の光が輝く砂浜に並んで座った。
「アオちゃん」
「ん?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
沈黙続き、
「私、これから友達じゃなくて・・・えっ」
碧は環の意を決した言葉に、そっと口づけをして返した。
朝日が島の朝を告げる。
コテージ横、花壇のひまわりが大輪の花を咲かせている。
環と碧は手を繋ぎ、ビーチの白い桟橋を歩いた。
桟橋の行き止まりには、鐘があった。
それは幸せの鐘。
「アオちゃん」
「うん」
一緒に紐を引き、幸せの鐘を鳴らす。
青空に海に幸せの音が響き渡った。
ベタかなあ~ベタでいいじゃん。
こんなに遊んだら、おじさんは倒れちゃうよ(笑)。