第81話 限界突破
2人を煽る口上が終わると同時に、人形が一斉に突っ込んで来た。
人形の心臓部分にエレメントコアが仕込んでいるのが見え、
クロはアレスを掴み、無造作に後方に投げ飛ばした。
「いきなり何するんだ、クロ!」
「こいつらは俺の能力を基に作られた存在だ。相手するのは俺しかいないだろっ」
横目で様子を伺うと、青の人形が地面に手を当て、氷の柱を作り出し、黄の人形がそれを足場に電光石火の高速移動で迫って来ていた。
俺の能力を基に作られた人形だからと言って、戦略まで真似てくるとは。
初見だと余りの速さに苦労するだろうが、
次にとる行動が、手に取るようにわかるので、防御は容易い。
黄の人形が、電撃を纏わせた蹴りをクロの頭に喰らわせようとしたが、
両腕でガードして致命傷を難を逃れた。
まだ終わらないだろ。雷の攻撃は牽制するため、次にでかい攻撃を仕掛ける準備だ。
赤の人形が拳に炎を纏って殴って来る。
やっぱりそう来るよな。良いコンビネーションだ。
だけど、こっちもわかっていれば...。
赤の人形の拳がクロに直撃し、炎がクロの体を通り抜けた。
炎が静まる頃には、赤の人形の腕はローブで動きが封じられていた。
エレメントコアを取り戻すためとはいえ、直撃は流石にキツイ。
だが、そのおかげで絶好のチャンスを得た。
「逃がさねえよ」
俺の元に帰ってこい。
クロは赤の人形の心臓部に目掛けて手を突っ込み、赤のエレメントコアを抜いた。
エレメントコアを自分の胸に当てると、吸い込まれるように無くなった。
ああ、この熱い感じ懐かしく感じる。
心臓の鼓動が跳ね、爆炎のように音を鳴らす。そうだ、この熱くなる感じ、良いぞもっと熱くなれ。
そして、燃やし尽くせ。
凄まじい熱気がクロの周囲を包み込む。
氷の柱が耐えきれずに解け始めた。
次のターゲットは決まっている。
クロは青の人形に突っ込んでいった。
青の人形は大きな氷の壁を作った。
そうだ、てめえは自分の防御に専念してろ。
黄の人形が背後から攻撃を仕掛けてきた。
来るとわかっていれば、簡単に対処できる。
黄の人形の心臓部目掛けて拳を打ち抜く。
黄のエレメントコアを抜き取り、自分の中に取り込む。
あぁ、ワクワクが止まらねえ。この好奇心が抑えきれない感じが堪らない。
残るは青のエレメントコアだ。
ここまで来たら、楽勝だ。
クロは電撃を足にため込んで、青の人形の上に飛び上がり、拳に炎を纏って、構えた。
氷の壁を作り、攻撃を防ごうとしているのが見える。
それだけで、俺に勝てるわけねえだろ。もう詰みだ、諦めろ。
「ファイアー・ストレート」
氷の壁だけでなく、青の人形の胸部をも溶かし、青のエレメントコアを奪い取る。
最後の1つを体に取り込むと、全てを掌握するような力が溢れてくる。
やっと、本来の自分を取り戻せた。
「全部返してもらった。悪いな、ピエロ野郎。こんなんで俺を殺せると思ってるのか」
エニグマは大玉から降りて、ゆっくりと歩いて、近づいてきた。
「ボクを誰だと思ってる?君が対処できるのは織り込み済みだよ。でもね~。こんな簡単にやられちゃうとは、君の遺伝子を組み込んだ人形も役に立たないね~。どいつもこいつも役に立たねえ、ゴミばっかり。オレのために動けっての。ったく、どいつもこいつも使えねえ。」
「てめえが無能だからだろ。ピエロ野郎」
クロとエニグマは手を出せば、届く距離で睨み合った。
「欲しい能力は手に入れた。楽に死なせねえ。オレは最強だ」
エニグマは底なしの狂気に満ちた殺気を放った。
「最強?俺に勝ってから言えよ。この、クソピ...」
クロが言い終える前に、突然エニグマの凄まじい強力な一撃が腹部を貫き、数十m先の壁に叩きつけられた。
「クロ!大丈夫か」アレスは突然の出来事に驚いた。
「ゴボッ」
胃が潰れて、血が出て、返事できねえ。
あの距離で瞬間移動の能力使って殴って来るかよ。
思いっきり喰らっちまった。
クロはゆっくりと立ち上がった。
というより思ったよりダメージが大きく、素早く立ち上がれなかった。
「こんなパンチで俺が殺せるかよ」
「そりゃそうだろうね~。ボクはまだオニの力を使っていない。ボクの純粋な力だよ」
マジかよ。あのピエロ、素であの力かよ。どうゆう体してんだ。
「まだオニの力が馴染んでなくてね~。ボクはまだ全力は出せないんだ。殺すなら今だよ~。あっでも、無理か君は弱いからね~。キャハハハ」
「そいつは残念だ。本気のてめえをぶっ飛ばしてやろうと思ったのにな」
どうするエレメントコアを取り込んだが、まだ全力では使えない。
本気でやらないとさすがにキツイな。
なんとか胃は治った。
一瞬で決めろ。
「ガイア・ストレート!」
氷の柱を出現させ足場にし、高速移動で、攪乱する。
「すご~い。早いね~。でも...」
クロは殴りに行くタイミングを見ていた。
次のタイミングで行く!
「遅いよ」
エニグマが残像を残して目の前に現れて、顔面に一発、そして、瞬間移動でさらに追撃をした。
ふざけんな!この速度でダメか。
こうなったらヤケだ。
クロは大量の魔力を放つと、集中した。
「見せてやる。限界突破」
体から黒いオーラが噴き出し、神化によってクロの中に黒い感情が湧き出てきた。
...ころせ。コロせ。コロセ。殺せ。殺セ。
この感じ前にもあった。
いつだ?そうかエレメントコアを取られた時か。
今何してたんだ?まあ、いいか。気分がいい。
このまま眠っちまうか。
『シメイヲハタセ』
あ?何だ?聞いたことがあるような声だ
『シメイヲハタセ』
声のする方を見ると人型の黒い靄があった。
『シメイヲハタセ』
同じ言葉が繰り返される。
シメイ...使命?使命って、なんだよ。
俺は眠いんだよ。いいから寝かせろ。
『シメイヲハタセ』
いい加減鬱陶しい、ここから消えやがれ!
そう思い、黒い靄を振り払うと、微かに笑う気配と共に消えた。
あれが何だったのかはわからないが、これでやっと眠れる。
「...ロ、おい!目を覚ませ、クロ!」
次はなんだ。一体誰だ、人が気持ちよく寝ようとしている時に。
ん?胸が痛む。
何度も名前が木霊する。
誰だお前は?いやこの声...。
アレス?何だよ、うるせえな。何回も大声で呼ぶなよ。
...ああ、そうか。あのピエロ野郎と戦ってる途中か。
クロは目を覚ますと、血と汗で傷だらけのアレスにより自分の剣で胸を剣で突き刺され、壁へ磔にされていた。
何があった。なんでアレスが俺を刺してる。
よく見るとピエロ野郎が血まみれで立っていた。
あいつ、何で血まみれなんだ?誰がやった?
「...クロ。目を覚ませ」アレスが死にそうに呼びかけた。
「うるせえ、起きてるよ。剣抜けよ」
アレスはクロの顔を見ると剣を抜いた。
「良かった。戻ってきてくれて」アレスの目には涙が溢れていた。
「よくわかんねえけど、悪かったな。意識飛んでたんだな。やるぞ。アレス」
「ああ、やってやろう。クロ」
2人はエニグマに向かって構えた。
「なんだよ。意識戻ったの?戻らなくて良かったのに。まあ、いいや。俺の今ならオニの力100%で終わらせられるから、覚悟はいいな」
エニグマの傷は高速で瞬間的に治り、右腕が10倍以上筋肉で肥大化した。
「すぐには死ぬなよ。嬲り殺し出来なくなる。オーガ・フィスト」
エニグマの拳によって、クロとアレスは城の外へ吹き飛ばされていった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
暗き太陽編も次で最後になります。
良い感じに終われるといいなと思ってます。




