第80話 ピエロの檻
クロは王がいる部屋に入っていった。
部屋の中はまるでサーカステントの中にいるような円形型で天井が高く客席まで用意してある。
周囲には切り刻まれた人間サイズの人形があちこちでバラバラになっていた。
王のいる部屋とは思えない異様な、現実感のない部屋だ。
人と会うことなんかを考えてないのが、一目見ただけでわかる。
人形が辺り一面に散らばって、部屋の中央では大量の人形の上にアレスが倒れ、ピエロメイクにピエロ衣装を着た金髪の男に笑いながら、踏みつけられていた。
クロは一目見ただけでわかった。こいつが黄の国の王、今回の首謀者だ。
なんだ、そのふざけた見た目、バカにしやがって。
クロは完全獣化のまま飛び込んで殴りにかかった。
このむかつく顔面に一発ぶち込んでやる。
だが、殺気が読まれたのか、ふわりと、曲芸のように後方へと避けられ、大玉の上で踊り出した。
「キャハハ。ちょっと待ってよ~。いきなり襲ってくるなんて、少しはこの運命的な出会いを堪能しようじゃないか。アーハハハッ!」
腹を抱えて高らかに笑っていた。
このふざけた奴を今すぐ黙らせたい。
こんな奴のせいでオニが殺されたのか。
「あ~ごめんごめん。まずは挨拶からだよね。ボクはね、エニグマ・ドーン。この国の王だよ。さあ、君の名前を教えてくれよ。プフフフ」
口元を抑えて、笑いをこらえる。
「そんなの言わなくても知ってるだろ。ピエロ野郎。なんだその汚ねえ中身」
「やはりオレの能力が見えるのか。やっぱり欲しかったな。その赤い目。そうさ、お前の大事に育てていた鬼の力をこの体に入れてある。オレの能力は人形使いに加え、気にいった能力を着せ替える能力だ。便利だろ。お前の再生能力も入ってる。この2つが欲しかったんだ。わかるか?鬼の力は本人すら扱いきれなかった。肉体が壊れちまうからな。いいよな。自分が壊れるほどの超パワー、そこに再生能力も加われば、オレは最強だ」
ピエロ野郎そんなくだらない理由でオニを殺したのか。
「何のために強くなるんだ」
「ん~?なんでそんなことを聞きたいのか、ボクにはわからないな~。ボクはこの世界を新しくしたいんだ。君が生まれる遥か前、この世界は朱雀・青龍・白虎・玄武の4つの国しかなかった。ボクはその頃から王だったけど、3か国には興味がなかった。確か200年から300年前だったかな、ブラックという魔獣が現れ、4つの国を跨ぐように、中央を乗っ取った」
「はっ、ブラックなんてとうの昔に滅んだ存在、今は関係ねぇだろ。」
「残念だね~。クロ君。彼らは滅んでなんかいない。ここからは教科書に載っていない歴史の授業だ。ブラックは強すぎた。各国の強者どもが挑んだが、成果を上げる者は誰もいなかった。最終的に、奴らが乗っ取った中央部分ごと異界転移魔術で異界に送るしか対抗策なかった。転移させた中央部分ってのが、そうさ今でいうグレーゾーンだ。いつ復活するかわからないブラックのために、中央貿易都市という名ばかりの檻を作ったんだ。俺は異界転移で黄の国の中にブラックを呼び出し、この世界を壊そうとした。それなのに、お前らが邪魔したせいで、今回は呼び出せなくなった。まあ、今となっては、自分でカラーズを全滅させれば問題ない。」
「てめえ、本当に王か」クロは怒りで体が震えぶち切れ寸前だった。
「ボクは王だよ~。だからこそ、人を駒として扱える、王としての特権。全部役立たずな駒だったけどな~。君達なら配下にしてもいいよ。」
「断る」アレスが震える足を抑え込みながら、決然と立ち上がり、エニグマを睨みつける。
「やっぱりわかってもらえないか」
エニグマはベルを取り出すと、チリンという音と共に上から赤・青・黄の不気味な人形がすっくりと下りてくる。
「レディース&ジェントルマン!ボクのサーカスにようこそ!
諸君らに、見るも無残な殺戮ショーをご覧に入れましょう!
今回の哀れな仔羊は、馬鹿げた正義感を持って、既にステージに上がっているこの2人。
何と浅ましく、愚かなことか。
さあ、彼らの残酷で無様な死に様をとくとご覧あれ!
レッツショータイム!」




