第79話 血だまりの中で
クロとアレスが吹き飛ばされる少し前
クロとアレスは王を倒すために城を登っていた。
最上階へ続く階段を登っていくと、足元におびただしい量の血が伝って流れていた。
「クロ。この血の量...尋常じゃない。慎重に行った方がいいんじゃないか?」
「問題ねえ。時間が経って乾いてる、そして、血の匂いは一番上から来てる。死んだのは階段じゃねえ。さっさと行くぞ」
クロとアレスは急いで階段を上っていくと、目の前には王への扉の前の広場に着いた。
周囲には防衛隊のものと思われる鎧や武器が散乱し、無残な肉片が周囲に散らばっていた。
「これは...?」アレスはあまりの悲惨な景色に戦慄し動揺した。
「防衛隊だろうな。国の中に1人もいなかったのは、これのせいか」
柱の影から1人の男が出てきた。
「よくお分かりで」
「お前がこのようなことをしたのか?」アレスは激怒していた。
「ええ。防衛隊が魔獣を倒してしまったら、計画が失敗してしまいますので、先に集会と嘘をついて、皆殺しにしました」
「許せない。人の命を何だと思っている」アレスは剣を持ち、いつでも切り込もうとした。
「落ち着け。アレス。ここは任せて、お前は先に王を倒せ」
「わかった。またあとで会おう」
お前は英雄になれ。王を倒すのはお前だ。
アレスは王への扉の中に入ると、扉が重い音を立てて閉まっていった。
「おいおい、簡単に行かしてよかったのか?」クロは敵を相手に煽った。
「いいんですよ。私はここで死霊を作って、王のいるところに送るのが、仕事なもので」
「はっ、お前はここで終わるけどな」
「いいでしょう。ネクロマンサーとして面白い物を呼び出しましょう。きっと喜んでいただけるでしょう」
ネクロマンサーはブツブツと呪文を唱えると、周囲の血と肉片が不気味に集まり、人の形を作っていく。
マントを羽織り、大鎌を持った男が隣に現れ、禍々しい異様な雰囲気を漂わせる。
「さあ。あの生意気なガキを殺して...」
突然、ネクロマンサーはその男が持っていた大鎌で首を切り落とされて、ゴツンと鈍い音が響く。
マントを脱ぐと、そこには血塗られたよく知る男が立っていた。
「久しぶりだな。クロ」
忘れるわけがない。その声、笑顔、余裕のある立ち姿、何より以前赤の王に殺されたことを。
「...ブラッド」
恩師の名前を呟くが、こういった時は何を話せばいいんだ?
言葉が出ない。
クロはよくわからないまま、ブラッドに近寄って行った。
ブラッドはクロが近づくと、静かに抱きしめた。
クロは反射的にブラッドを引き離した。
「ガキ扱いするんなよ。俺はもう17歳だ」クロは照れ隠しをした。
「そうか。悪いな」ブラッドは笑顔で答えた。
そこからは2人で話をした。
ブラッドが死んだときの話。
結婚した話。
酒場を作った話。
口数は少ないものの、ブラッドに伝えたいことを話した。
ブラッドは驚いたり、笑ったりと話を聞くことに専念してくれた。
「クロが結婚か~。プロポーズも突然すぎるし、まあ、お前らしい。なんかうれしいなぁ。てっきりバリバリの冒険者でもやると思ってたのに。こんな時は酒でも飲んで祝ってやりたい気分だ」
クロはローブのポケットから酒のボトルとコップを取り出した。
「あるけど飲むか?」
「おおー!便利だな。そのローブ。じゃあ乾杯するか」
2人はコップに酒を注ぐと乾杯をして酒を飲んだ。
「うまいな。この酒。場所が良ければもっとうまいんだろうな」
「だな」
大量の血だまりの中2人は楽しく酒を飲み交わした。
久しぶりだな。こうして酒飲むの。
でも、もうすぐ終わりだ。
「ご馳走様。うまい酒だった。さてそろそろ帰らないとか」ブラッドは悲しそうな表情でクロを見つめた。
「ああ、もう戻って来ねえように、ボコボコにしてやるよ」
クロはブラッドから距離を空けていった。
「じゃあ、六道の地獄担当代理ブラッドが相手をしてやる。早く殺せよ。人格がもうすぐ無くなりそうだ」
「わかってるよ。だけど手抜きするなよ。本気であの世に戻してやる」
「わかった。せっかく手加減してやろうとしたのに」
「言ってろ。本気の俺に勝てねえだろ」
クロとブラッドは話終えると殺気をむき出しに構えた。
沈黙がしばらく続いた。
「来い。クロ」全身の血を凝縮し血の大鎌を作り、構えをとった。
「ああ。遠慮はしねえ。完全獣化」
クロは部分獣化から全身が毛皮に覆われた完全な獣化に変わった。
本気の決意。
自分がブラッドを殺さないといけない。
覚悟を決めろ。迷うな。速攻で片をつける。
「いくぞ。ガイア・ストレート」
クロの一瞬で距離を詰める直線の高速移動からパンチを打ち込む。
「螺旋」
ブラッドの周囲に血の螺旋状の塊がブラッドを守る。
クロのパンチを血の塊がまるでゴムのように弾力を持って、力を吸収した。
前は硬化して受け止めていたのに、やりにくい。
なら、蹴りならどうだ。
上段回し蹴りもさらりと受け流し、拳でラッシュをするが、全て巧みに受け流される。
ブラッドは狙いを定めて、首目掛けて、大鎌を振り下ろした。
反射的に避けたが、左頬が深くぱっくりと切れた。
クロは一旦距離を取った。
頬の傷を右手の親指で傷口をなぞると、高速で傷が消えた。
「やるな。ブラッド」指に付いた血をぺろりと舐めた。
「厄介な再生能力だな。これでどうだ。ブラディ・パーティー」
血の塊で50体もの人形を作りだした。
血だまりだった地面は人形が出来るたびにして血が減っていき、いつの間にか地面から血が消えた。
「どっちが厄介な能力だ」クロは身構えた。
血の人形は一斉に飛びかかって来た。
殴っても何とも言えない弾力があり、決定打にならない。
地の利は向こうが有利だ。
どうする。このままじゃ...。
「クロ。このままで終わるわけないよな。ブラディ・サイズ」
ブラッドの大鎌から血の刃が飛んで行った。それと同時に人形も飛散し、鋭い刃になり、クロを襲う。
激しい血しぶきが噴き出し、血が雨のように降り注ぐ。
その中からクロが立っていた。
全身血まみれで傷一つなく立っていた。
「さすがだ。クロ」
「こんなんで終われねえ。勝ち筋は見えた」
クロはブラッドに突っ込んでいくと、螺旋目掛けて、殴った。
「ガイア・シュート」
ブラッド本人は防いだと思ったが、内側から弾けるように吹き飛んで、壁に激突した。
ゆっくりと立ち上がってくる。
死霊のせいかダメージを感じないのか。
「いや~。普通の体だったら意識が飛んでたな。魔力を飛ばせるのか。次は効かねえぞ」
大鎌を構えて、クロが飛び込んでくるのを待っていた。
「いや、終わりだよ」
クロはブラッドの懐に入ると構えた。
ブラッドも大鎌をクロ目掛けて振る。
「ガイア・ショットガン」
クロは左手の掌を前に出して、自らの手で一瞬の壁を作った。
右拳が左手に当たると無数の貫通するような魔撃の無数の衝撃がブラッドに直撃する。
ブラッドの体は風穴だらけになり、体を維持できなくなった。
「さすがだな。クロ。幸せになれよ」
「言われなくても十分幸せだ。のんびり休め」
ブラッドの体は崩壊し血に変わり、クロの足元に広がっていった。
幸せか...あの野郎がいるかぎり、それはねえ。
まずはむかつく王の顔面に1発ぶっ飛ばしてやる。
クロは王がいる扉を開けて中に入っていった。
読んで頂きありがとうございます。
あと3話ほどで話を終わらせ、アレスの外伝を書いて見ようと思います。
アレスの強さ、この後の空白の戦いを書いていこうと思います。




