第72話 不安な再会
クロはディスカラーで夜を過ごした。正直寝られずにいたが、仲間の回復が優先だ。敵がいつ襲ってくるかわからない。時計の秒針をただ見つめていた。気が紛れるような気がするというより、落ち着かない。向こうはここにいるのはわかっている。何らかの手を使って、襲ってくる可能性もある。不安でしょうがない。落ち着け明日で全部終わらせるんだ。
早朝になって
クロは部屋の中で体を動かしていた。襲撃はされなかった。それだけでいい。あとは敵地に向かうだけだ。
ヒメもまだ目が見えないが、起きてきた。
「マスター。おはよう」いつも通りに接してくれる。心配してくれているんだな。
「マスター。おはようなのだ」体は治ったが、精神的なショックは1日では何ともできなかったか。元気な振りをしているが、覇気がない。
「主。お待ちしております。」カゲも心配かけないようにしているが、少し元気がない。
「小僧。何をしょんぼりしておるか。大将じゃろうが」体を治したが、一命を取りとめただけだ。正直連れては行きたくはない。だが、ロウからやる気を感じる。
「朝っぱらから、うるせえ。じじいだ。昨日は死んだかと思ったのによ」クロもロウに引っ張られ、元気が出る。
いつもの空気になった。やっぱりこいつらは失いたくない。
「お前ら死ぬなよ。生きてここに戻る。そして店を再開するんだ」
「「「「おう!!!」」」」
さっそくウィッチに転移魔術で黄の国まで行く準備を整えてもらう。黄の国には店を出していないから、今回近くまででいいから転移する。
「多少遠くても、文句言ってはいけないのだ。可能な限り近くに転移するのだ」
誰も文句など言うわけがない。近くまで行けるだけ、ありがたいことだ。ここから歩いたら、道中襲われて、時間がかかる。それだけは避けたい。
ウィッチはいつになく、真剣だ。
「出来たのだ。紋章の中に乗れば、転移するのだ」
全員が一歩ずつ思いを胸に、歩みを進めていく。
「飛ぶのだ」
一瞬の光と共に、景色が変わる。
森の中か。見覚えがあるような景色だ。
クロは無言のまま、黄の国の方へ歩みを進める。
歩いていくとやはり黄の国の前に出た。見た目だけは昔と変わっていない。
門の前には人影がある。まだ確認は出来ない。
人影は迫って来るのがわかる。顔を見えてきた。見覚えのある顔。幼い頃から嫌でも顔を合わせてきた4人の顔。忘れるわけない。出来損ないども。
クロ達の前に立ちはだかったのは、アレス・ダミア・ダンガン・テツオの4人だ。
「僕はA級冒険者アレス。君たちには昨日の中央貿易都市爆破事件の容疑がかかっている。黄の王の命令により、クロ一行を捕獲し、事情聴取するよう言われている。大人しく掴まってくれないか。手荒な真似はしたくない」アレスは警告をした。
クロは一旦みんなを静止させた。これも黄の国の罠だ。アレスは知っているのかが、問題だ。
「悪いな。アレス。こっちは王に直接話がある」クロはきっぱり断った。
「クロ。こっちにはクロが人殺しをしている証拠が多くあるんだ。断れば、こちらも戦闘するように言われている」
「そうだろうな。全部計画通り。顔を見たことがない王に尽くす意味はあるのか?」
クロとアレスは話しながら距離を近づいていた。もうわかっているのだ。
「僕は君がそんなこと理由もなく、する人間だとは思わない」
「じゃあ、見て見ぬふりをしろよ」
「それは出来ない。僕は僕の正義を守る」
もう言葉はいらない。
アレスは剣を出して、構えた。クロも手足を部分獣化し、低く構えた。
「マスター。」ヒメが心配そうに呟く。ロウがヒメの頭を撫でて、なだめていた。
クロとアレス見つめ合う両者、昔もこうしてやっていた。だが、今回は練習でもない。本気でやらないとやられる。
重苦しい空気の中、2人は距離を詰めた。2人の間に身を切るような風が吹くと、鉛色の空から大雨が降り出した。
クロは殴りかかり、アレスはそれをギリギリで回避して、切り込もうと構える。だが、クロはアレスの腹部目掛けて、魔撃を打ち込んでいた。アレスはそれも見切り、最短で避け、横一線に切り込む。クロもギリギリで避けると、次の攻撃を繰り出す。クロとアレスは息つく暇もなく、攻防を繰り返していた。大技では隙が大きく決まらないのはわかっていた。お互いの動きもわかっている。この戦いの中で決めるには、小さく動いて、相手の隙を作る。
2人は引かずに、手を休めない。周囲もいつ決着がつくのか、目が離せない。
まず息が切れたのは、アレスだった。呼吸をするその一瞬、クロはアレスの腹に見えないほど素早く一撃を入れ、アレスの体が浮き上がる。アレスの目は死んでいなかった。クロの一撃も魔力で強化し、受けきっていた。
「まだだ!まだ終わっていない『ラグナロク』」アレスの頭上には光の剣が9本現れた。アレスが剣を縦に振ると、1本ずつクロに襲い掛かる。クロは後ろに下がりながら、1本1本回避していく。せっかくの近距離戦が出来なくなり、避けるだけになったクロ。アレスは剣が9本地面に刺さると、剣の方へと動き出す。アレスの持っている剣に吸い寄せられるように、地面の剣が吸収されていった。剣を吸収するに連れ、アレスの速度が上がっていった。
クロはアレスの連撃を回避しているように見えるが、少しずつ掠っていった。
「主・・・」カゲは不安そうに見ている。
「まずいのだ。マスターがこんなに一方的なのは初めて見るのだ」ウィッチもクロの見たことない姿に驚いていた。
「落ち着いて。見えないけど、マスターの魔力は安定しているし、何か違和感がある」ヒメはクロの行動に違和感を口にした。
「小僧も何か狙いがあるんじゃろ。いつもなら無理でも反撃を返す性格じゃ。どうも相手と何かあるようじゃ」ロウはクロの不自然な行動に気付いていた。
そんな不安も関係なく、アレスの攻撃は止まらない。動きは素早く、無駄がなく、反撃の隙を許さない。
地面がぬかるみ、強く踏み込めなくなった。
だが、それでもアレスは足元の悪さを感じさせない動きで切り込んでくる。
クロは足元が滑りながらも、体を無理に傾け、避け続ける。
この戦いはもうアレスの優勢で進んでいた。
お久しぶりです。
病気になって小説アップできずにいました。
その間特にコメントもなかったので、この章を書いて、終了にするか検討中です。
読んでいる方がもしいれば、コメント頂けると継続しようと思います。
更新頻度は出来たら即アップしていきます。




