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第6話 特訓終了

特訓最終日

朝4時、訓練場にて


「今日で、この面倒な特訓も最後になる。午前中に終わらして、午後は教室に集まっての授業だ。疲労のピークがここにきてある。だが、その極限状態の先にこそ、能力の向上がある」クロが厳しいことを言う。アレスとテツオは連日の過酷な特訓のせいで今にも、押せば倒せると思うぐらいに、足元に力がないのが見てわかる。


「疲労のピークだ?英雄になる僕にこんな程度でバカを言うな」アレスは虚勢を張っているのが、誰が見てもわかるほどに疲労していた。


「俺は鉄の男だ。心も鉄で出来ているんだ。こんな特訓程度で倒れてはみんなの盾になれない」テツオもアレスに引っ張られ、虚勢を張るが、実際は体の感覚すら、ほとんどないほどに疲労していた。


「まあ、元気なら、今日は氷像を1人4体相手してもらう。頭を破壊しろ。そうすれば、動きが止まる。終わればお前らの楽しみにしていたパーティーとやらが待っている。せいぜい、集中力を切らさないようにしろよ。今日は手加減なしだ。」クロは8体の氷像を出して、アレスとテツオの二人を囲む。


「さあ、来い」2人がそう叫ぶと4体ずつ氷像が同時に向かっていく。


アレスは両手に剣を出すと、目の前の氷像に向かって、飛びかかり、氷像が殴ってくるのがわかっていたかのように避けると、氷像の頭を切り落とす。残りの3体が向かってくるが、焦らずに、一回深く息を吸う。そして、一気に間を詰める。3体一斉に殴り掛かるが、一番左の氷像の腕を切り落とし、その背後に飛んで、剣を横に構える。頭を切り落とし、すぐに近くの、もう一体の頭を切り落とす。残るはあと1体だ。力いっぱい膝を曲げ、踏ん張る。一気に氷像の正面に間合いを詰め、頭を狙い切りかかる。しかし、何か嫌な感覚がある。氷像の胸元から拳が出て来て、アレスを吹き飛ばす。


「ああ、くそ。」アレスが悔しそうに呟く。テツオを見ると同じように3体まで倒したが、あと一体の所で同じようにやられていた。


「2人とも相手の腕が2本だから避けたら、終わりじゃない。能力者相手ならどんな攻撃が来るか、警戒しながら、戦わないといけない。最後まで気を抜くな」


「はあ・・・。はあ・・・。わかっていたが、動かないんだよ」悔しそうにアレスが呟く。


クロはアレスの能力のアドバイスを始めた。


「まったくしょうがない。アレスお前は剣をもう1本出せ、地面に刺して、自分の身体能力をさらに上げろ。現状だと短期決戦なら3本までならいけるだろ」


「なめるなよ。限界は3本じゃない。4本だ。使うと魔力消費が多くて動けなくなるがな」両手に剣を持って、その剣を地面に刺して、再び両手に剣を持つ。クロは氷像を4体出す。


「見てろ。これが僕の本気だ。」今までの動きより比べ物にならないほど、素早く動く。一瞬にして4体の氷像の頭を落とす。


「これでどうだ」アレスは力が抜けて、その場で倒れる。


「次はテツオお前の番だ。全身鉄化をしろ。今のお前なら動けるようになるだろう」


「その言葉を待っていた。今ならやってやるぜ。」テツオは全身を鉄化させた。だが、以前より鉄の比率が下がっていた。そうテツオは以前までただ闇雲に鉄になるだけだが、この特訓で強度の調整が出来るようになった。クロはそれを見て、4体の氷像を向かわせる。


「これが今の俺の戦い方だ」テツオは殴られる瞬間、当たる部分のみをより固い鉄にし、受け流せる攻撃は手を動かして、流している。隙を見つけ、1体ずつ頭を壊していく。最後の1体になると、テツオは少し遅いながらも氷像に向かって走っていく。氷像との殴り合いが始まる。攻撃を受けては殴りを繰り返し、頭を狙う隙を伺う。大きく氷像が後ろによろけた瞬間を、見逃さず突っ込んでいく。しかし、先ほどのように胸元から拳が顔面に向かって飛んでくる。テツオは常に相手の魔力を見ていた。冷静に顔面の強度を上げ、真正面から受ける。受けてもなおテツオが後ろには下がらない。右拳が氷像の顔面を捕らえた。


「これが俺の実力だ」テツオは一言言うと、鉄化が完全になくなり、その場に倒れる。


クロが二人に近寄って、飽きれた顔をした。


「おい、早く立て。ここが魔獣の住処ならいつほかの魔獣がくるか、わからないだろ。2人とも0点だ。目の前の敵だけに本気を出して、倒したら終わりか。その状態で襲われたらどうする。食われたいのか。昼までまだまだ時間はある。このまま続ける。」クロは氷像を10体出して、倒れたままのアレスとテツオに向かわる。


「ちくしょうが!」2人が揃って叫ぶと、殴られる音が訓練場の外に響く。



射撃用の訓練場にて


ブラッドとダミアとダンガンは部屋の左側の的まで柱が3本立っている場所で特訓をしていた。


「2人ともいい感じじゃないか。あと最後の柱1本を抜ければ、上手く当たるところまで来ている。ダンガンはさっきの惜しかったな、かすめるまで出来たな、その感覚忘れるなよ。ダミアは、おっと、言わなくても集中しているな」先生は笑顔で話しかける。ダンガンは冷静に銃を構える。ダミアは目を閉じて、呼吸を整えている。2人ともすごい集中力だ。これは何を言っても耳に入らない状態だと判断する。ブラッドは邪魔にならないように訓練場の外に出る。


「子供の成長は早いな」1人訓練場の外で成長を実感している。


「あぁ。ブラッド先生!どうしたんじゃ。こんな所で」頭は禿げて、首が見えないほどの白く長い髭を生やし、ローブを羽織った1人の老人が話しかけてくる。


「ヘハイストス先生。今、中で生徒の訓練中です。」


「あぁ、そうか、そうか。昇格試験あるって聞いとったな~」


「ええ。来週Cクラスの昇級試験があります」


「おぉ、そうか、そうか。そしたら昇格祝いで武闘大会一緒に行けますの~」


「先生も本当に好きですね。生徒も連れていくつもりですか」


「Cランクになったんじゃったら、褒美があってもいいんじゃないかの~」


「いや~、先生がただ見たいだけでしょう」


「人生を建築魔術の勉強に心血注いていたせいかの。戦いをみると年甲斐もなく、男としての血が湧きたつんじゃよ。この興奮を生徒にも見せてあげたいんじゃ。どうじゃ」


「確か武闘大会は来月のはずですが、全員がCクラスになったら考えてみます」


「おぉ、そうか、そうか。では、人数分のチケット取っておくとするかの」


「いやだから、全員まだ試験受けていないのですが」


「チケット取れたら、連絡するから楽しみにしとくんじゃよ」ヘハイストス先生は言いたいことを言い終えたら、ブラッドの元を楽しそうに去っていった。ブラッドはどっと疲れを感じて、まあ外の世界を見て息抜きするのもいいかと思い、訓練場に入る。


ブラッドが訓練場に入って、最初に目に映ったのは、2人の集中した姿から放たれる弾だ。ダンガンは3発連続して放つと柱をするりと避けていき、的人形の胸の同じ場所に3発当てる。ダミアは種を1個飛ばして、柱をかすりながらも、的人形の胸に当て打ち抜く。


「やったー。当たった。先生見てた。やったよ私」ダミアが満面の笑みで先生の元によって小さく飛び跳ねる。先生は少し泣きそうになったが、笑顔でごまかした。


「ああ。見てたぞ。よくやった。」先生は2人を抱きしめる。ダミアは嬉しそうに抱き返す。ダンガンは恥ずかしいのかただ抱きしめられる。


先生の喜んだ声が訓練場の外にも響き渡るようであった。

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