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キャンバス~色なき世界のアービトレーター≪仲裁人≫~  作者: ぶーたん
第3章 暗褐色な魔の手編

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第63話 最恐の王

クロは黒の国の前まで来ていた。


他の国と違い、建物は洋式ではなく、和式だ。壁はレンガを使わずに、木と石を積み上げて作られていた。水堀で周囲を囲い、入り口は一つのみ。門の前には着物姿で刀を腰に差した防衛隊が立っていた。


クロは防衛隊に紹介状を渡すと、しばらくその場で待たされた。


「お待たせいたしました。ご案内致します」


居眠りをしているクロにサル顔の男が声をかけてきた。(しかも名前がモンキーときた、流石に出来過ぎだろ)


クロはモンキーに丁寧に挨拶され、その背中を追って行く。木の門を抜けると、妙な感覚を覚えた。何か見られているような感覚。だが、視線は感じない。


違和感を覚えながらも進んでいくと、今まで見たことがない景色が広がっていた。建物は和式のものばかりだ。そのうえ、建物を建設魔術を使わずに、全て人力で一から造っていた。


「なあ、モンキー。なんで建設魔術を使わないで、建物造っているんだ?わざわざ壁を塗ったりするの面倒だろ」


「そうですよね。初めて見る人はみんな同じことを考えます。これは受刑者の仕事なのです。見てわかる通り、スキンヘッドで革ジャンに肩パットをしているのが、受刑者です。着物を着ているのが、我が国の防衛隊です」モンキーは優しく教えてくれた。


「黒の国は重犯罪者が集まるんだろ。建物造るだけでいいのか?」


「いいえ。建物を作るのは模範囚だけです。他にも色々あるんですよ」


模範囚になると建設以外に武器・装飾品・料理など生活に関わる部分の仕事に就くそうだ。


「な~んだ。結構良さそうな国じゃねえかよ」クロは呑気に思ったことを言った。


「そうでもないんですよ。この国では王の影響で生物が生きていけないのです。家畜も生きていけません。草木一つも育たないので、他から仕入ないと食べ物がないのです」モンキーは深刻そうに答えた。


「王の影響ってのはなんだ?」


「クロ様もこの国に感じていると思いますが、この国には恐怖が蔓延しています。生物はこの恐怖で生きていけないのです。ですが、重犯罪者をまとめるには仕方がないことでもあるのです」


モンキーから話を聞いてから見る国は、景色が変わって見えた。木造建築にしている理由、少しでも景色を温かみがあるようにするためのものだ。建物がなければ、砂煙が立ち込める世紀末のような景色になってしまうだろう。


城まで着くと、着物姿の防衛隊が各々の階を警備していた。


階段を上り、モンキーに着いていくと、少しずつ、妙な圧力が増していった。


畳の部屋を案内されると座布団が一つあり、座って頭を下げて待つように指示された。部屋にいる防衛隊の人たちも頭を下げて、静止していた。


クロはあぐらを掻いて、座布団に座った。モンキーは引きつった顔をしたが、そのまま王を呼びに行った。


クロは裏社会に行きたくてここに来たのに、なぜ王に会うのか。ここにいて意味があるのかと疑問に思った。だが、そんな疑問も一瞬で消えることになった。


凄まじい存在感がクロを押しつぶす。全身の毛が逆立つ。


クロの目の前に黒いダークエルフが現れた。


「赤の王を殺したというのは本当か?」


言葉を発しただけなのに、大岩でもぶつかったような衝撃が襲って来た。


「本当だ。文句あるか!」クロも負けじと圧をかけた。


ものすごい圧が部屋を包み込む。余りの圧に部屋にいた防衛隊が気絶して倒れだした。


「そんな過去はどうでもいい。貴様は『ブラック』か?」クロを見つめて問う。


「『ブラック』ってなんだ?知らねえよ」クロはやる気満々で返した。


「そうか。違うか。ならいい」


圧は弱まり、空気が軽くなった。


「クロと言ったか。俺はロック・ドラゴスト。この国の王だ。俺にビビらないとは大したもんだ。どうだ家臣にならないか?人手が足りてないんだ」


「俺は誰の下にもつく気はねえよ。それより裏社会の話を聞きたい」


「わかった。案内しよう」


ロックに案内され城から出た瞬間、話しかけられた。


「お前はジョンドゥを知っているか?」


「手配書を作るように裏で動いた奴だけど、それがどうした?」


「そいつから手紙が届いてな」


昨日の夜にロックの元にジョンドゥと名乗る手紙が届いたそうだ。クロは赤の王を殺し、『ブラック』で必ず脅威になるから殺せと書かれていた。


「『ブラック』ってなんだ?」


「本当に知らないんだな。『ブラック』はキャンバスを黒く染める古の存在だ。赤の王のことは家臣に調べさせた。殺されてもしかたない。俺の恐怖の前では誰も嘘はつけない。手紙を出してきたジョンドゥとかいう顔も知らない奴の言うことなど聞く気はない」


「俺が『ブラック』だったらお前は勝てるのか?」


「俺はカラーズの中で最強だ。ゆえにキャンバス内で俺が一番強い。お前など一瞬で消してくれるわ」


「面白れえ。やってみるか」


「赤子をいたぶる趣味はない。ほらここだ。この酒場の下にお前のいう裏社会がある」


話をしながら歩いていたら、オアシスという酒場に着いた。ありふれた名前だ。


「ではクロ。俺は少し城の周りを散歩するのでな。たまには、家臣の働きを見てやらないと」そういうとロックは去って行った。周りからしたら散歩というより監視にしか思えないだろうな。


「案内してくれて助かった。良さそうな家臣見つけたら連れて行く」


ロックは背を向けたまま、手を振ると、去って行った。


クロはさっそく酒場に入っていった。


建物はぼろいが照明はカラフルに眩しい。客は居なく、バーテンダーが一人。壊れた機械のパーツや魔獣の頭骨を壁に飾ったりと、なんかセンス悪くないか。


「ここに裏社会の奴らが集まってるって聞いたんだけど」


バーテンダーは無言で地下への階段を指さした。なんだ雰囲気あるじゃん。クロは階段を下りて行った。


バーテンダーは震え出した。「王様が来たのかと思ったぜー。死ぬかと思った~」バーテンダーはそのまま力なく座り込んだ。


クロは階段を下りていく途中から音楽が聞こえてきた。なんかポップなアイドルソングが流れていた。本当にここ裏社会なのか?階段を下りると扉があった。ペンキで『裏社会への扉』と書かれていた。場所間違えたか。アイドルクラブじゃないよな。不安の中、扉を開けた。


扉の先には殺気に満ち溢れた連中が酒を飲んで騒いでいた。ギルド酒場みたいなもんか。壁には手配書が数えきれないほど張り付けられていた。


扉が開いたので皆開いた方を見ると、音楽が止まり、クロを見つめる。周囲がコソコソ話し出す。


「あいつクロだよな」

「高額賞金首じゃねえか」

「なんでこんなところにいるんだ」


「文句あるならかかってこいよ」クロはいつものように挑発した。


空気が一気に静まり返った。しかし、誰も襲い掛かって来ない。誰か一人くらい来るもんなんだが。


「コイコイ」


どこからか声が聞こえる。周りもビックリした顔をし、奥の席を見る。


奥の席にはよぼよぼの婆さんが座って、手招きしていた。


「コイコイ。ホ~ラ。コイコイ」クロを見てこっちに来るように手招きしている。


「「「コイコイババア。あいつ死ぬぞ」」」周囲も驚いていた。


クロはコイコイババアの前に座った。


「なんで周りの連中ビビってんだ。婆さんそんなに強くないだろ?」


「強さだけが全てではないの。全員私と王に従っているんだよ」


「王に従うのはわかるけど、婆さんになんで従うんだよ」


「そうじゃの~。皆この国から出たいからじゃ。ここの罪人は無断で外には出られない。かといって模範囚になるのもそう簡単ではないんじゃ。私の認めた者だけが外に出て、手配書の罪人を捕まえる名目で外に出れるんじゃ」


「じゃあ暗殺ギルドって呼ばれるのもここなのか?この間倒しちまったけど」


「やられるのは自己責任。死ぬのはここに入る前に決まっているんじゃ。こいつらはそれだけの罪を犯したバカばかりじゃ」


周囲は聞き耳を立てていたが、イラつくことなく、どんより落ち込んだ。


「婆さん。ジョンドゥについて教えてほしいんだが?」


「なんでじゃ?」


「?あんたここで一番偉いんだろ」


「あんたよそ者じゃろ。私の知るところじゃないわ」


「じゃあ、なんで呼んだんだよ」


「これを・・・」


コイコイババアはクロの前にヒメの手配書を見せてきた。


「誰がこれを・・・」


「私はこれを見せるように言われただけじゃ」


「誰がこれをやったか。教えろよ。ババア」


「ガキがナマ言ってんじゃねえよ。こっちは裏社会。タダで教えると思うかい?」


「わかったよ。何差し出せばいい?指か?内臓か?」


「命じゃよ」


「あ?命だ?なんで情報にそこまで出すんだよ」


コイコイババアは煙草に火をつけて、大きく一口吸い、吐き出した。「そんだけ重い情報なんだよ。わかるかい。ガキ。命に相当する物でいい。存在でも。この世から消えるけどね。出すものをいいな。ないならこの場から立ち去りな」


クロは目をつぶって考えた。命と同等に大事なものか・・・。正直あり過ぎてしょうがない。


「決めた。『ブラディー・プリンセス』このギルド名をやる。どうだ?」


「あんたギルドで活動できなくなるよ。いいんだね」


「男に二言はねえよ。俺の命より大事なもんだ」


「私の手を触りな。そうすればギルド名が消える」


クロはコイコイババアのシワシワの手を触れた。特に何か起きるわけでもなく、手を握られていた。


「確かにギルド名は貰ったよ。ヒメとかいう手配書の出した情報だね。これはここで出された手配書だよ。あんたと同じような格好をしたジョンドゥと名乗る男だったね」


「顔を見たのか?」


「私の見立てだよ。立ち振る舞い。雰囲気」


「それってあてにならねえじゃねえか。仮面してたんだよな?」


「ああ、仮面をしていたね。なんか笑っている仮面。正直不気味な存在だね。あんたと同じで生を感じないよ」


「そうだな。俺今心臓止まっているし、死人か何か?」


「私が知っているのはここまでじゃよ」


「ん~。手配書を持ってきたジョンドゥはここの人間なのか?」


「ここの人間ではないね。金貨出したから手配書を作っただけだね。今頃、賞金目当てで何人か行ってるかもしれないね~」


「まあそこは心配してねえよ。あいつ強いし、じじいもいるし」


クロは酒場を後にした。


ジョンドゥは黒の王を使って殺そうとしてきた。わざと来るように仕向けた。目的はなんだ?どこかで見ているのか?直接なんで襲ってこない。何の情報も無くなった。また一から調べないといけねえな。

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