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キャンバス~色なき世界のアービトレーター≪仲裁人≫~  作者: ぶーたん
第1章 研究施設編

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第5話 真っ直ぐな思い

射撃場用の訓練場にて。


特訓3日目。ブラッド先生の教えによって、ダミアとダンガンは的をまっすぐ射抜けるようになっていた。次の段階として、25メートル先に立つ柱で見えない的を当てる特訓に取り掛かっている。二人は必死に弾を撃つが、弾は柱や的の向こうの壁に虚しく当たってしまう。


「二人とも、いったん休憩にしよう。もう二時間も休まず続けている。疲労を残したままでは、うまくいくものもうまくいかないだろ」


先生が笑顔で言うと、二人は先生のもとに集まり、反省会を始めた。


「もっと目に魔力を集中させて、奥の的を見るんだ。難しいことだが、的の魔力を見るんだ」


「うーん、わかってるよ。でも、目に集中すると、手元の魔力をコントロールできなくなるの」


ダミアが焦りを含んだ声で訴える。


「ああ。目に集中するのが精一杯で、慣れてないからうまくいかない」


テツオたちに比べて遅れを取っている焦燥感が二人に重くのしかかっていた。


「どうしたものかな。本来、15歳の成人で冒険者になるものだから、お前たちにはまだ早いのはわかっていたのだが。普通はギルドの依頼をこなしていくうちに、なんとなく会得していくもんだからな」


先生は頭をひねって考える。


「よし。目に魔力を集中したまま、施設の中を走ってみよう。体の動きの中で無意識にできるようになれば、今よりは良くなるだろう」


先生はひらめいたと言わんばかりに提案する。二人はきょとんとした顔をした。


三人は施設内を走り始めた。目に魔力を集中すると、景色がいつもと違い、体内の魔力が血管を逆流するような不快感が全身を襲う。脳が揺さぶられ、視界は水中にいるように歪む。30分も経たないうちに、激しい吐き気が二人に襲った。それは物理的な疲労ではなく、魔力が脳の神経を直接掻き乱すような激しい頭痛と吐き気だった。


「先生、待って。だめ…吐きそう」


ダミアが力の抜けた弱々しい声で訴える。ダンガンも顔面が蒼白になっていた。


「ああ、わかった。休憩にしよう。ちょっとした魔力酔いだ。慣れないうちは仕方ない。だが、目はそのまま維持しておけよ。研究棟も近いし、酔い止めをもらってくる」


先生は研究棟の前で立ち止まり、中へ駆け込んでいく。


ダンガンは、地面に仰向けに倒れていたダミアに近づき、声をかけた。


「大丈夫か」


「うん。今は何も口に入れたくない。でも、なんでダンガンは平気なの?」


「そうだな…初日に教わってからずっと意識してやってたから、慣れたのかな。俺も初日は結構きつかった」


ダンガンは何気ない言葉で、ダミアを追い詰めてしまった。


「じゃあ、私の訓練不足だね。だって、訓練の時間でしか意識してなかったもん。怠けてたせいで、こんなふうに倒れて情けない。あの頃から何も変わってないじゃない」


ダミアは自分の不甲斐なさに悔し涙を浮かべ、両手で涙を拭う。ダンガンは、泣いているダミアの前でただ見守ることしかできなかった。


そのうち、先生が研究棟から出てきて、ダミアを座らせ、錠剤と水を飲ませた。


「飲み込んだら、深呼吸をするんだ。しばらくすれば落ち着くから、まずはゆっくり休め。少しは楽になるはずだ」


研究棟からゼース所長が出てきて、ダミアに声をかける。


「よかった。案外元気そうじゃないか。ブラッド君が薬をくれというから、何事かと思ったが、無事で何より。本当に若いっていいね」


所長は安心したように笑い出した。ダミアは泣き止み、座ったまま所長に頭を下げた。


所長は先生に用事があったようで、少し離れたところで話しかけた。


「実は2週間後に対能力者用の手錠の発表がありまして、ぜひクロ君に協力をお願いしたいのですが」


「そんな急に言われましても……。Cランク昇格依頼もありますし……」


ブラッドは断りにくそうに話す。


「そこをなんとか!あと一週間以内には完成するんだが、テストする相手がほしいんだよ。ブラッド君、わかるだろ?STFの未来が、いや、キャンバス全体にも関わる問題なんだよ。頼むよ~」


うるうるとした瞳でブラッドを見つめる。おっさんのそんな顔はただ気持ち悪いだけだ。だが、こうなった所長は止められないのをブラッドはよく知っていた。


「わかりましたよ、所長。ただ、今はクロもアレスとテツオの特訓をしているところです。あと4日間特訓が終わってからでもいいですか」


「ああ、もちろんだ!それまでには完成品を作っておくから、よろしく頼む」


嬉しそうにスキップしながら研究棟に向かう。途中で足を止め、思い出したようにブラッドの方を向いた。


「ああ、そうだ。ブラッド君。別件だが後でいいから研究棟に寄ってくれ。クロ君に頼まれた物を渡したいんだった。危ない、危ない。忘れるところだった」


ブラッドは、「クロ君に頼まれた物」という言葉に一瞬目を細めた。以前、クロが「俺のは後で取りにいく」と言っていたことを思い出す。あいつが誰にも知られずに何を依頼したのか、ブラッドの心に小さな疑念が生まれた。


「あいつがこんなものを?...いや、変な勘繰りはやめよう」ブラッドは内心で首を振った。


そう言うと、所長はスキップで研究棟に消えていった。


「はあ……相変わらず、研究好きな人だな」


ブラッドはため息交じりに呟く。ダミアの方を見ると、無理やり立ち上がろうとする彼女の姿があった。


「まだゆっくり休んでろ。そんな無理はよくない」


「いやだ。私だけ足手まといになりたくない。私はみんなを支えたいの」


ダミアはふらつきながらも立ち上がり、強い意志を込めた凛とした顔で先生を見つめる。


「わかったよ。まったく、お前たちは本当に言うことを聞かないな」


先生はためらいながらも、嬉しそうな表情でランニングを再開した。今日の残りの特訓は、ランニングで終わる。

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