第49話 本店を作ろう
クロは本店をダンジョンの地下三階層に作ることを提案した。
「ここは、結構開けてるから店作るには絶好の場所だな」
クロはローブから大量の建材をどんどん出すと、ウィッチに作るようにお願いした。
「天才魔法使い様どうかお力をお貸しください」クロはウィッチをおだてた。
「任せるのだ。この天才魔法使いに出来ないことはないのだ」ウィッチはノリノリになった。
ウィッチは魔術の刻印を地面に描くと、建材がひとりでに動き出し、自在に形が変化していく。
あっという間に小さなコテージが出来上がった。
「ウィッチさんちょっと小さくありませんか?」クロはこれで店は狭いと思った。
「わかってないのだな。中と外は大きさが違うのだ」ウィッチはしたり顔だ。
一同は中に入ると、縦横100メートルの広さであった。ウィッチは満足そうだが、他は唖然としていた。
「でかすぎるだろ。狭くできるんだろうな」クロは呆れながら尋ねる。
「マスターは文句が多いのだ。これが一番大きいサイズで、人の数でサイズが変わるように魔術を今から描くのだ。ただ、ヒメちゃんちょっと魔力が欲しいのだ」
「わかった。ゆっくり流すからね」ヒメはウィッチの背中を優しく触った。
「行くのだ」
よくわからないが、ウィッチはすごい勢いで杖を動かしている。それと同時に建物の中に家具や部屋がどんどんできる。さすが天才というだけのことはある。
「どうだ出来たのだ」ウィッチは満足気に言った。
店内はテーブルが三つ、機能的なカウンターキッチンが一つ、男女別のトイレもあり、小さな店が出来上がった。その先には扉があり、開けると個別の部屋がある。風呂・トイレも男女別にあり、従業員用の部屋というよりまるで旅館のようだ。
「どうなのだ。さすがに疲れたのだ。一応部屋は一定時間できれいになるようにしてあるのだ。それでも気になる時は魔力を流せばきれいになるようにしたのだ。マスターもういいか」ウィッチはぐったりしている。
「さすがだな。今日はここまでだ。ウィッチは部屋で寝ろ。他は今後の話をする」
ヒメはウィッチの指定した部屋まで連れて行くと、ウィッチは安堵の表情でベッドに倒れこんだ。
とりあえず、店の方のテーブルに椅子を置いて、ヒメが来るまで待った。こうしてみると落ち着く作りだ。木で出来ているからか、やはりぬくもりがある。
「お待たせ。マスター」
「じゃあ、ヒメが戻って来たし、今後を話すか」
店内の装飾をカゲとヒメが担当し、キッチンをウィッチとロウが話し合って理想の物に作る。
「明日はこれでいいか」
「小僧、お前さんは何をするんじゃ」ロウが鋭い目で尋ねた。
「ん?何もしないけど」クロはきょとんとしていた。
「このバカもんが、みんな働いとる中で休むとは何事じゃ」ロウの説教が始まった。
「わかったよ。装飾手伝うよ」クロはしぶしぶ承諾した。
今日の所は疲れもあり、作業をせずに各々休みに入る。
クロは自分の名前が書かれた扉を開ける。ベッドがあるだけのシンプルな部屋だ。好みに合わせて作ったのか。ダブルベッドは余計だが広いからいいか。
クロは大の字で横になった。このベッド寝心地いいな。久しぶりに寝むれる。見張り役で寝ていないせいで疲れた。
ふと、ノックの音が聞こえた。ん?誰だ。面倒だから寝るかな。静かに扉が開く、足音が聞こえる。小さい歩幅だ、そうかヒメか。クロは起き上がった。
「わ!びっくりした。なんだマスター」ヒメは寝ていると思っていたらしい。
「ここ俺の部屋なんですけど、なんだよ?」
「何ってその一緒に寝ようかなって」ヒメは目をそらさずに言った。
「1人で寝れるだろ」
「そうじゃない。夫婦でしょ。一緒に寝よう」
「いや、無理にそういうのは、いいんじゃねえかな。夫婦の形は色々あっていいと思いますが、どうぞお部屋にお戻りください」クロはそっけなく返した。
「ん~もう私が寝たいからいいでしょ」
ヒメは飛びかかって来て、ベッドの上で駄々をこね始めた。ダメだ言うこと聞いてくれない。何なんだこの幼女は。しょうがない、たまにはいいか。クロはヒメを抱きしめた。風呂上がりのせいかいい香りがする。
「ちょっと待って心の準備が……」ヒメは赤くなった。
そのまま横になり、ヒメはドキドキしていた。しかし、クロはそのまますぐに寝てしまった。
「そっか。一週間寝なかったもんね」ヒメは愛おしそうにクロを見つめた。
ヒメはそのまま抱きしめられたまま眠りについた。
朝七時。
いきなり爆発音がした。クロとヒメは飛びあがり部屋を出た。何があった。周囲を見るがわからない。魔獣が来たのかと思ったが、気配は感じられなかった。ウィッチが部屋から呑気に出てきた。
「ウィッチこれはなんだ?」クロは低い声で尋ねた。
「ん~あ。これは目覚ましなのだ。朝はきちんと起きた方がいいのだ」
クロはウィッチに強烈な拳骨を食らわせると苛立ちで怒った。
「このバカ。誰が部屋全体に爆音鳴らすんだよ。止めろ、二度と鳴らすな」
ウィッチは悲しそうにした。毎朝こんな爆発音を聞いてられるか。結果的に全員が集まった。
さっそく昨日の打合せ通り作業を始めた。
ウィッチとロウは話し合いをし、効率の良いキッチンの配置を決めていた。
カゲとヒメは事前に買っておいた装飾品を店内に付けていた。カゲは高い所を担当し、足を伸ばして、装飾を飾り付ける。ヒメは低い所を飾り付けて進めていた。
クロは正直することがなかった。飾り付けていない装飾品を見て回っていると、文字を書いて飾る額縁があった。これに何か書こうとテーブルに持って行った。
クロはいざ何を書くか迷っていた。ギルド名。店名は表に貼るからいいとして、こういうのはコンセプト的なのを書くべきか。一体どうすればいいんだ。
クロは目を閉じて、お客が入って楽しそうにしているのを想像した。これが理想だな。ブラッドもそれが望みだろうし、楽しくするにはこれか。決まったぞ!
『店内ケンカ禁止!』クロはこれがいいと書いて額縁に入れた。
色んな国の人が来る。それでケンカになったら、楽しくない。
この店の中だけでも仲良く、国なんて関係ない、そういう時間を過ごしてほしいと思い書いた。
クロはカゲに目立つように飾ってほしいとお願いした。扉から入ってすぐにわかる正面に飾ることにした。
「いいじゃん、これ。店のコンセプトに合う気がする」
クロは満足そうにし、あとはこっそりサボった。




