第40話 ギルド証発行
クロ一行は中央貿易都市まで着いた。ここに来るまで二週間もかかった。当初の予定は一週間だったが、クロとウィッチが魔獣を見つけるたび、突っ込んでいくから、時間がかかってしまったのだ。そのおかげか素材は大量に集まった。
「やっとついたのだ。クロが寄り道ばかりするから遅くなったのだ」ウィッチが不満げに言った。
「お前のせいだろ。ウィッチお前が魔獣相手に魔法打ち込むからこっちまで襲われるんだ」クロが言い返す。
ロウが二人に鉄拳制裁をかました。ゴツン、ゴツンと鈍い音が響く。
「このバカたれどもが!どっちも反省せんか!こんなに遅れて着くとは思っとらんかったわ」
ロウに怒られて、関所に向かった。分厚い城壁に設けられた門には、武装した防衛隊が待っていた。
「ギルド証の確認をさせて下さい」防衛隊が話しかけてきた。
「そういえばじじい。お前のギルド証ランクいつだ?」
「わしはFランクじゃ」ロウは錆びた金属のようなギルド証を見せた。
「じゃあ、金よろしく」
「しょうがないやつじゃな。三人分でいいな」ロウは慣れた手つきで金貨を払う。
「はい。確かに三人分の通行税いただきます。それではどうぞ」
こうして関所を通った。危ない、カゲの分払わなくて済んでよかった。この手段はあんまり使えないか。
相変わらず中央貿易都市は人が多い。石畳の通りは荷車や露店でごった返している。とりあえず宿を取るか。
「小僧。宿代は出すんだろうな」
「わかってるよ。宿取るからついてこい」
こうして安めの宿についた。木造で軋む音がするが、一泊するには十分だろう。クロはギルド証で支払いを済ました。この宿のコンパスを三つ貰った。
「とりあえず部屋に行って、話し合いだな」クロが部屋に向かう。
部屋に入ってクロの影からカゲが出てきた。宿代も節約できて財布事情が助かった。
「小僧それでこれからどう動くのじゃ。資金がないのは困ったもんじゃ」
「そうだな。とりあえずギルド支部行って、資金の共有化をするか」
「クロのお金使っていいのか。うちは欲しいのがあるのだ」ウィッチは目を輝かせる。
「いいけど、ギルド証作らないといけないだろ。カゲとウィッチは持ってないんだから。ロウも共有しないといけない」
カゲとウィッチはすぐに書類を記入した。
「主、ギルドを結成されるのですか?」
「ああ、とりあえず酒場ギルド作りたいけど、ギルドマスターがな……」
三人は驚いた。すっかりクロがギルドマスターをやると思っていたから、ついてきたのに何を考えているのか。
「俺は酒場のマスターになりたいけど、ギルドマスターになる気は最初からねえよ」クロは言い切った。
「小僧がやらんで、誰がやるというんじゃ」ロウは眉間に皺を寄せた。
「これから誘う。もう決めてるんだ」
三人はクロからギルドマスターにしたい人を聞いて驚いた。ロウはクロの頭を拳骨で殴り、ウィッチも杖でクロを何度も殴りつけた。クロは痛がる素振りも見せない。
「主の考えのままに」カゲだけは動揺せず同意した。
「でも、面白いだろ」クロは笑って話した。
「まあクロらしいのだ」ウィッチは諦めたように肩をすくめた。
「わしは小僧がそういうなら止めはせん。だが、どうする気だ?」ロウはため息をつく。
「とりあえず今日は金を作る。そして明日行ってみる」
こうして四人はこれからの動きを話した。まずはギルド支部に行って、ギルド証を作る。そこからはカゲとウィッチで酒場を作る建材屋と装飾品の売っている店を確認、ロウは酒屋がどこにあり、何が売っているかの確認、クロは魔獣素材の売却である。この予定はクロが換金できないと何も始まらないのである。
「じゃあ予定も決まったし、早速ギルド支部に向かうとするか」
クロ達は宿屋からギルド支部の場所を聞いて、向かった。中に入ると生乾きの汗と鉄の匂いが混じったような、むせるような空気が漂っていた。かなりの人数がいる。ここで食事もとれるようでテーブルにはたくさんの強面たちが集まっていた。
クロは受付に向かおうとすると、強面の冒険者が絡んでくる。顔には古い傷跡があり、見るからに厄介そうだ。
「おい。ここはガキのくる場所じゃねえぜ」クロの前に立ちふさがった。
「ああ。急いでいるんでごめんよ」クロは無視して受付を呼んだ。
「なめてんじゃねえぞ。クソガキが」冒険者はクロの胸ぐらを掴んだ。
クロは抵抗しなかったが、クロの影からカゲが出て来て、冒険者の腕を掴む。カゲの表情は能面のように無感情だ。
「申し訳ございませんが、主から離れていただけますか?」カゲは腕を折る勢いで掴んだ。
強面の冒険者は咄嗟のことに驚き、腕の激痛に顔を歪ませて逃げてしまった。
「カゲ。あんまり目立つな。こういう雑魚はほっとくのが一番だ」クロはギルドにいる全員に聞こえるように、声量を少し上げて言った。
「わかりました。弱いのは相手せずですね」カゲはすぐにクロの影に戻る。
冒険者全員がクロを睨みつける。クロは完全に無視を決め込んだ。
「はい。今回はどういったご用件で」受付嬢が聞いてきた。彼女は騒動に慣れている様子だった。
「二人にギルド証の発行と資金の共有化をやってほしいんだ」
「はい。それでは新規の二人は書類に記入をお願いします。資金の共有化ですけど、ギルド内でしますか?」
「いや、まだギルドは作らない。個人で共有化してほしい。四人で」
こうして手続きをしてもらった。何とも長い手続きだ。その間、冒険者はクロを睨みつけていた。
「これにて手続きは完了です。ご質問はございますか?」
「大丈夫。助かったよ」
クロ達は手続きを終えて、外に出ると、先ほどの強面の冒険者が仲間を連れて、路地の入り口で待機していた。仲間の数はおおよそ十人、全員が得物を隠し持っているのが見て取れる。
「おうおう、Fランク二人増やして冒険者ごっこか?」冒険者は憎々しげにクロを睨みつけた。
「誰だ?お前どこかであったっけ?」クロは興味がないので覚えていなかった。
「てめえ、どこまで舐めてんだ」
「主、どうなさいますか?私が相手しますか?」カゲが影から半分身を乗り出す。
「いいよ別に。こうなったら俺がやり方みせてやる」クロは冒険者たちに聞こえるように、ぞっとするような冷たい声で言った。
苛立った冒険者たちは、今にも殴り掛かって来そうな顔をしてクロを囲んだ。
「このガキが。謝るなら今だぞ」
「うるせえぞ。この雑魚どもが、邪魔だから消えろ」
「やっちまえ。お前ら」
一斉に冒険者がクロにかかった。クロは一瞬にして全員の頭を吹き飛ばした。冒険者は自分たちが殺されたと思った。クロの殺気が見せた幻覚だ。
「なにがおきたんだ」冒険者たちはビビって座り込んだ。体中が震えと冷や汗でびっしょりになっていた。
クロは強面の冒険者に近寄り、耳元でささやく。その目は血のような赤に光っていた。
「これ以上、目の前で動くな。次目の前に現れたら殺すぞ」
クロを囲んでいた冒険者は命乞いをする間もなく、転がるように逃げて行った。
「主、さすがです」カゲが静かに称賛する。
「問題を起こすなバカ者が」ロウは頭を抱える。
「さすがクロなのだ。すっきりしたぞ」ウィッチは満足げに笑った。
こうしてそれぞれ買い物をするために別れた。
いつも読んでいただきありがとうございます。
ギルドに入ると新参者に絡む先輩かぜふかしている、
連中がいるのは王道だと思って書いて見ました。
ぜひ次も楽しみに読んでください。




