第36話 自称(?)天才魔法使い
クロは森を三日歩いていた。近くを流れる清流の音が聞こえる。水が流れ始めたことは、青の国に近づいている証拠だ。
暗い夜道、魔獣の気配もない。平和な森だ。月が奇麗に見えて、夜道をかすかに照らしている。
クロは足元に何か落ちている物を拾った。これは服だ。女もので、魔法使いが着るような鮮やかな青色の服だ。なぜこんなところに落ちている。盗賊にでも襲われたか。クロは服の匂いを嗅いだ。川の近くにいるな。
クロは茂みを抜けて、川の方に向かった。そこにいたのは大人の女性が水浴びをしていた。黒髪ロングのストレート、顔は年齢より少し幼め、胸は大きく、スタイルは魔術師の割にはバランスがいい。
クロと水浴び中の女性は目が合った。お互い思った。なんでこんなところにいるんだ。
「あなた、だ~れ?」女性は純粋な目で見つめてきた。
「ああ、クロ」
「そうか。うちはウィッチ。魔術都市の魔法学園一の天才魔法使いなのだ」女性は全裸で自慢げにポーズを決めた。
「お前の服かこれ」クロは拾った服を見つめた。
「うちは伝説の魔法書を探して旅する天才魔法使いなのだ」再び全裸でポーズを決めた。
「とりあえず、服着ろよ」クロは冷静に突っ込んだ。
「ああ、そうか。裸だったな。ちょっと待ってくれ。少年には刺激が強かったようだな。あれ?そういえば服はどこなのだ?」全裸でキョロキョロし出した。
「服これじゃないのか。森に落ちていたぞ。どういう状況だ?」
「それはな。森を歩いていたら、お風呂に入ってないのを思い出して、そしたら、川に入っていたのだ」服を着ながら、説明になっていない説明をした。
「つまり、何も考えず、その場で服脱ぎだして、川に入ったと?」
「そうなのだ。よくわかるな。まるで見ていたみたいだな」関心して頷きだした。
「他の荷物はどうしたんだ?」
「ん?そんなの魔法で呼べるのだ」
ウィッチは手を森に向けると、杖と帽子と靴が飛んできた。ウィッチは身にまとい、「これでどうだ」とポーズを取った。
「パンツ穿けよ」
「そういえば、パンツ穿いてくるの忘れていたのだ。ちょっと待て。転移魔術を使うのだ」
ウィッチは杖を使い、空中に魔法陣を書き始めた。魔法陣からパンツが出て来て、穿き始めた。クロは驚いた。あの速さで魔法陣が書けるのか。転移は高位の魔術と聞いていたが、あんな簡単に出来るとは、本当にすごい魔法使いなのか。
「お前バカだが、すごいんだな」クロは本当に褒めた。
「そうだぞ。うちはすごいんだ。もっと褒めていいぞ」ウィッチはすごく調子に乗っている。
「さっき言ってた魔法書はこのあたりにあるのか」
「?」ウィッチは何を言ってるんだという顔をした。
「?」クロもこいつ何も考えていないのかという顔をした。
「何を言っているんだい?うちは魔法書の話を学園で話している生徒がいたんだ。それで居ても立っても居られずに学園を飛び出したんだ。だから場所なんてわかるわけないだろ」ウィッチは楽観的に笑い出した。
「お前本物バカだな」
「うちは天才なのだ。見てみるかうちの魔法を」
「ほう。ぜひ見てみたい」
ウィッチはクロに杖を向けた。魔力が集中していく。川の水をどんどん杖に集めていく。巨大な水の塊をクロに放った。
「これはまずいな」クロは焦った。
巨大な水の塊が勢いよく飛んでくる。とっさにマントに魔力を流して、丸くなった。
巨大な水の塊は森を吹き飛ばし、新しい川が出来ていた。クロはマントを元に戻すとウィッチに駆け寄った。
「お前強いな」クロは嬉しそうだ。
「そうだ。わかったか。君もなかなかだな」
ウィッチの話を聞いた。彼女の能力は念視系の「魔法情報」。自分で見た魔術と魔法が簡単に理解できる能力で、幼い頃から魔法学園に通い、魔術・魔法の本を読みあさっていたこと。自作で魔法を作っては学園の一部を破壊し、怒られ、実技授業ではウィッチの番が来ると皆が逃げていくこと。変わり者過ぎて、友達も出来ず、図書館で本を読む日々。そんな中、他の生徒が伝説の魔法書の話をしているのを聞いた。内容は世界のどこかに自分が覚えていない魔法が覚えられる伝説の魔法書があるらしく、一回読むとその本はまたどこかの世界に消え、次の場所に行くという伝説らしい。その話を聞いたら、居ても立っても居られずに、学園を飛び出して、今ここにいるということらしい。
「魔法書そんなに欲しいのか」
「いや、面白そうだったからつい……」
「お前建築魔術も使えるのか?」
「当たり前だ。あんなの簡単なのだ」
「お前俺の仲間になれよ」
「仲間?なんのだ?」
「悪を裁き、酒場を作る仲間だ」
「君もバカだな。悪を裁くって子供なのだ。酒場も意味がわからないのだ」ウィッチは大笑い出した。
ウィッチは嬉しかった。学園では魔法で周りに迷惑をかけて変な目で見られた。初めて聞く仲間の響きに心打たれた。自分を必要としている人がいることが嬉しかった。魔法書よりも面白そうなものがあるとウィッチは直感で感じた。
「いいぞ。面白そうだ。仲間になってやるのだ。あと足元にいるのはなんていうのだ?」
「やっぱり気づいていたか。カゲ出てこい」
クロの影から出て来て、挨拶をした。
「よろしくお願いします。ウィッチ様。私カゲと申します」
「おう。面白い能力だ。よろしくなのだ」
こうして魔法使いが仲間になった。クロ一行は次の仲間を探して旅に出る。
いつも読んでいただきありがとうございます。
おバカ魔法使いウィッチの登場でした。
どうすればアホっぽさが出るか考え、登場は裸にしました。




