第30話 赤の王の実力
王とクロが睨み合いを続ける中、王子のメテスは腰を抜かし、ブラッドたちも魔力の圧力に負けて座り込んでしまう。そんな中、メテスの近くにいた防衛隊は危機感からどこかへ逃げてしまった。町の住民も異常な気配を感じて、一斉に逃げ出してしまった。
町は一瞬にして静まり返った。だが、王とクロの間だけは、ビリビリとした緊張感が流れていた。お互いに睨み合ったままだ。目を閉じることすら負けだと、両者は感じていた。王からは熱気が伝わる。先に口を開いたのは王だった。
「獣の小僧。いつまで睨んでいる。そんなもので我が倒せるのか」ガウスは挑発した。
攻めて来いと言わんばかりに、両手を開いて、隙を見せた。
「そうかい。じゃあ、ありがたく。・・・死んでくれ」
クロが一瞬にしてガウスの懐に入った。事前に足に雷の力を溜めていたのだ。
「サンダー・ストライク!」
強烈な雷を纏った飛び蹴りが王の腹に当たった。
「こんなもんか。小僧」ガウスはにやりと笑った。
直撃したと思った攻撃は、ローブによって完全に防がれていた。
「クソが。魔力で動くローブか」
クロは着地して素早く、王の顔面目掛けて飛ぶと連続して殴った。
しかし、すべてローブによって防がれてしまった。ローブは硬く、時には柔らかく攻撃を受ける。ガウスが両手を組んで上げると、思いっきり地面に叩きつけた。
クロが地面とともにめり込んだ。その瞬間、地震のような揺れを感じさせた。これがカラーズの王の実力なのか。
「こんなものか。小僧」ガウスは上から見下ろした。
クロは手を地面に付き、ゆっくり起き上がろうとした。
「この程度か。王の力ってのは」クロが起き上がりながら、挑発をした。
ガウスは苛立ち、右足を上げて勢いよく踏みつけた。足を退けるとクロの姿はない。
「おい、デカブツ。こっちだ」
一瞬で移動し、避けていた。ガウスは怒り、殴り掛かって来た。それをギリギリで交わして、後ろに下がっていった。ガウスは急に攻撃を止めた。
「獣の小僧。お前逃がそうと考えているな」
「ばれた。ただのデカブツじゃないんだな」
クロはガウスを引き付けて、ブラッドたちに逃げる隙を作ろうとしていた。それにガウスが気付いてしまった。
「獣の小僧。先に忠告してやる。カラーズの王とは領地内全て攻撃が当たると」
カラーズの領地は、能力が届く範囲しか領地にしない。だが、今回逃がすとなると、山を下りて、森を抜けなければならない。一日かけて逃げることを、王の目の前でしかも一瞬でやるなど不可能だ。
「でもさ、それだけじゃないんだよ。あいつらがいると巻き込んじゃうからさ。こっちが本気出せないだろ」
「ふん。今まで本気じゃなかったというのか」
「ああ、半分も出してないね。ただ、あいつらの距離が離れたおかげで派手にやれる」
「なら安心した。我も能力を使っていなかったからのぅ」
ブラッドたちから離れた今この時が、クロにとって本気で戦えるチャンスだ。近くにいると被害が大きくなる。
「なら、力比べと行くか」クロは腕を上げて構えた。
「面白い。久しぶりに力を使ってやろう」
ガウスの全身から炎が噴き出た。周囲の火山がガウスに共鳴するかのように噴火し出し、ブラッドたちは熱波で吹き飛びそうになった。ガウスは炎の鎧を纏った。
「いい姿だ。弱虫にはお似合いの格好だな」クロは再び挑発をして、かかってこいと手で煽る。
「いいだろう。この拳受けてみろ」炎が大きく拳に纏った。
クロは水のボトルを潰すと「アイス・シールド」と唱えた。巨大な氷の盾はガウスの拳を防いだかに思えたが、じわじわと解け出す。クロは盾の上から盾を足場に、顔面目掛けて飛んで行く。
「ファイアー・ストレート!」炎を纏った拳がガウスの顔面目掛けて今度こそ当たった。ガウスは後ろによろけた。しかし、ガウスはそれほどダメージがないようだ。
「こんなものか。我に一撃入れたのは褒めてやろう。だが、その程度で我を倒せると思うな」
ガウスの熱気が一段と上がる。クロは獣の姿勢でガウスのみを見ていた。
クロの足元には氷の板が現れ、足には雷が纏った。拳には炎が燃え上がった。クロの得意技だ。「これでどうだ」一瞬にして間合いに入って殴る。「ガイア・ストレート!」と呟くと拳をガウスに向かって放った。ガウスも炎の拳を振りかざし、拳と拳が激突した。
周囲に衝撃が走った。町の岩でできた建物は衝撃でヒビが入り、すさまじい衝撃が走った。一歩も引かない拳のぶつかり合い。だが、ガウスの方が一枚上手だった。クロは建物の中に吹き飛ばされてしまった。
「さっきまでの威勢はどうした。そんなものでは足りぬわ」
建物から出てきたクロは、先ほどまでと違う殺気を纏っていた。
「第2ラウンドだ」クロは笑って言った。
ガウスは殴り掛かり、建物を粉砕した。クロは空中に回避し、上から拳を振りかざした。ガウスは右腕で防いだ。クロの一撃は重く、魔力が込められていた。ガウスの腕はクロの力に負けて、体勢を崩した。
「小僧。そこまで魔力を扱えるとは、殺すにはおしい。我が兵にほしいな」
「断る。悪は俺が裁く」一段と魔力が上がった。
二人は殴り合いになった。全力の一撃を避けずに受けては殴りの繰り返しが行われた。クロの一撃は先ほどより重い。ガウスも容赦なく殴る。我慢比べだ。
痺れを切らした王は、拳のみに渾身の力を集中させて、クロの体を打ち抜く。クロは吹き飛び、山の下の方へ落ちてしまった。
「手ごたえありだ。この程度か。さらばだ小僧」
クロの敗北である。絶望がブラッドたちを襲った。
いつも読んでいただきありがとうございます。
カラーズの王はとにかく強くと思い書きました。
強さがわかっていただけたら幸いです。
また次回もお楽しみにお願いします。




