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第2話 反省会

施設内にある食堂で6人は向かい合って食事をしている。昼前ということもあり、人がいない。


ブラッドはレバーの盛り合わせを大皿いっぱいに食べ、

クロは50人前ぐらいあろうかとういう量を自分の前だけでなく、隣の席にも置く形で食べている。その向かいの席で他の4人は本日のランチ定食である豚の生姜焼きを食べている。


「じゃあ、食べながら今日の反省会でもするか」先生は言うと、「先生その前に、いつも食べてるそのまずそうな肉は何ですか?こちらの食欲が無くなりそうなのですけど」ダミアは先生を変な目で見ている。


「ん、ブラッドは血のためにいやいや食べてんだ。知らないのか?」クロは口に物を入れて疑問に答える。


「クロ、行儀が悪いからしゃべる時は口に物を入れない。昔から言ってるだろ。まあ、ダミアが言いたいこともわかる。この肉は魔獣のレバー肉なんだ。普通の家畜の肉より栄養価が数十倍高いが、そのかわりにものすごくまずい。冒険者やってた時なんかは取れたての魔獣肉を食べていた。取れたてはうまいが、時間が経った魔獣肉は食えたもんじゃないな。だけど魔獣肉は、温度で腐ったりしないのが利点で、干し肉にしなくても持ち運べるから冒険では結構当たり前なんだ。本当はおいしく食べれたら一番いいんだが・・・」先生はため息をつきながら、現実の味を噛みしめて、吐きそうになりながら、食べる。


「俺たちも魔獣肉食べたら先生みたいに強くなれますか?」テツオが率直に聞く。


「いや、こればかりは人による、先生は血を使った能力でどうやら鉄分を多く含むと強度が上がるみたいだ。だれでも食べれば強くなるなんてことはないが、魔力の回復には効果があるな。」先生はまた、肉を一口食べて吐きそうな顔から急に真剣な顔で話をを始める。


「この世界には魔力がある。生まれる時に魔力に触れ、細胞が変化する。その時に、人は放出系・強化系・獣化系・空間系・念視系・物質系の6つの系統に大体分かれる。このあたりは派生もあったりしてざっくりしていて未だに研究中だ。遺伝での能力が引き継がれることもあれば、獣人なんかは獣化の能力をすでに持っていたりもする。逆に能力がないまま生まれてくる子=通称ナッシング=は、今でも差別されたりもする。この研究機関が施設になったのも、この系統の変化や強化がどうやってできるか研究するのが目的の1つだ。生徒として授業を受ける反面、研究にも協力してもらっている。」


「魔法都市がグレーゾーンにあると聞いたことがありますが、あれは何に当たりますか」アレスは冷静に質問をする。


「魔法は魔術の派生形なんだよ。まずは魔術から説明すると魔術は魔法陣を用いて、魔力を使う術。魔法は魔法陣を必要とせず、仕組みを理解し、魔力を使うと使うことが出来る。魔術は魔法陣さえ書ければ、周囲の魔力を使うから魔力が少ない人でも使うことができ、かつ、発動するまで、魔力感知されにくい。対して魔法は込める魔力で威力を上げられる。今だと魔法の方が戦闘向きとされているな。魔術は生活に活用されている。」


「魔術士の先生は確かこの施設にもいましたが、実際何をしているのですか」ダミアが質問する。


「ヘハイストス先生のことか?確かにみんなに先生と顔合わることしかなかったな。あの人こそがこの施設を造った人なんだ」


「え、そうなの」4人が揃って驚く。


「あの人は魔術士の中でも建築魔術という分野で活躍している人なんだ。この世界では木が折れても一日あれば大体元に戻る。これは魔力が関係している。建設するときも更地にしてもすぐに草木が生えてしまうから、そこで建築魔術で、あちこちに草木が生えないようにしている。あとは濃い魔力があると魔獣が生まれてしまうので、建築魔術で魔力を抑えているんだ。今日、訓練場を壊したが、あれも魔術で周囲の魔力を吸収して自動的に明日には元に戻っている。また、事前にヘハイストス先生に申請を出すと、今日使った訓練場の形も変えてくれたりもする。建築魔術はこの世界では使える人があまりいないから、各国で、建築魔術士は重宝される存在なんだ」先生はまるで自分のことのように自慢げに話す。4人は先生を尊敬の眼差しで見つめる。


その時「別にブラッドが威張ることじゃねだろ。魔術使えないくせに」クロが冷めた目で見つめる。他の4人も釣られて冷めた目でブラッドを見る。


「まあまあそうだが」ブラッドは焦って別の話に切り替える。


「そうそう、魔術は他にも奴隷魔術なんかもあって、人にかけるのは、キャンバスでは絶対の禁止事項だが、魔獣には使っている。馬を使って、荷物を運ぶ行者もいるが、今では、魔獣を使って、運ばせる方法が一般的だ。ある程度飼い主を守ったりもしてくれるから、遠くを移動する場合は魔獣を使う。ただ、奴隷魔術をするにはある程度弱らせないとできないようで、小さい魔獣でもかなりの値段がするらしい。先生は使ったことがないから詳しくはわからんが…」なんとか話題をそらせたと安心した様子で肉を一口食べる。


「んで、どうでもいいけど、反省会するからわざわざ昼一緒に食べてるんじゃないの。俺おかわりもらってくる」そういうとクロは50人前の食事を食べ終えており、食器を持って、おかわりをしに、配膳カウンターへ向かう。食堂のおばちゃんがいるが、慣れているようで、気さくにクロに話しかけている。先ほど食べた量と同じ分を持って席に座って無言で食べ始めた。


「クロも戻ってきたし、反省会をする。結論からいうとみんなまだまだ自分の力が使えていない」ブラッドは単刀直入に切り出した。


「しかし、先ほどはよくやったと褒めていたじゃないですか」アレスが食い気味に答える。


「まあそうなんだが、落ち着け。お前たちは12歳にしてはかなりの実力だ、連携も取れている。しかし、今回言いたいのは個の力だ。まだまだ荒削りで予想外の動きに弱い。その点クロは自分の力の使い方をわかっている。クロ、今回の4人の戦い方を見てどう思った?」ブラッドがクロに質問を振る。その時にはクロの目の前にあった食事は完全になくなっていた。今にも寝たそうなクロは自分に振るなという顔をして、「能力を理解してないから弱い」と一言だけ言う。


ダミアが苛立った顔をしたのを見て、ブラッドは「もっと丁寧に説明しないと伝わらないかな」と焦った口調で話す。クロは立ち上がって上から物を言う。


「まあ、一人ずつ言うならダンガンお前はただ弾を打っていただけだ」


「俺の能力は銃だからそれが仕事だが、それが悪いのか」いつも冷静なダンガンだが、クロの一言に突っかかった。


「あながち間違っていないが、実際の銃なら弾はまっすぐ飛ばすだけだ。だが、お前の銃は魔力で出した銃で弾も魔力で出来ている。なら、銃弾を不規則に飛ばしたり、少しは変化させれたはずだ」ダンガンは何も言い返せないのか黙ってしまう。


「お前は放出系なんだから、空中に滞在する魔力で軌道を変えるなんてのは、出来て当然だ。そして、接近されてからの行動もなっていない。遠距離攻撃だけ出来ても、今回みたいに、間合いを詰められたら、何にも出来ませんじゃ。戦闘の足手まといだ。放出系は応用がかなり効く能力だ。遠距離と近距離両方出来なきゃ。実践では使いものにならない。結果、弱い」クロの話を聞いて、4人の顔が強張る。次は自分が言われるのか、怯えている。


「テツオ」クロが名前を呼ぶ。


「はぃ」びっくりして弱弱しい声で返事をする。


「今日の戦い方はなんだ」クロが鋭い眼差しで見る。


「えっとアレスを先生に近づけたくて、自分が壁役になろうとしました。」


「お前は鉄になると動けなくなる、そんな小さい壁が戦闘で役に立つのか。物質系で鉄だから動けません?次々から次々へと状況が変わる実践で鉄になったら動けなくなる奴はただの置物と変わらないね」クロがやや興奮気味に言うが、誰も言い返せない。


「それでダミア、お前はもっとも論外」ダミアを見てきっぱり言う。


ダミアは唇を噛みしめ、悔しそうな顔する。「わかってる」そう小さく呟く。


「わかってる?ならなぜ、援護の時、木の根を1本だけ飛ばした。もっと複数飛ばせば、妨害できただろう?弾かれてそのまま動けないで、まだ、隙を突くチャンスはあっただろう。一回防がれたら、終わりなのか。そんな援護はいないのも同じ。ダンガンと同じで接近されたら、何もできない。一番弱いお前は人質にでもなりたいのか」いつもならクロに言い返すダミアでも今回ばかりは言い返せない。


「アレスお前の能力はなんだ?」今度はアレスを睨みつけ、質問する。


「俺は、出した剣に応じて身体能力が上がる強化系だけど・・・」いつも自信に満ち溢れ、リーダーシップを発揮するアレスだが、今回ばかりは弱腰で返事をする。


「テツオを踏み台にして、切りかかる時に剣を出した意味がわからない。テツオの後ろにいる段階で剣を出していないで、お前の能力は本領を発揮するのか?そもそもお前の力なら一人でもブラッドに対抗できたんじゃないのか」アレスは悔しそうな顔をして下を向く。

ブラッドが間に入ろうとするが、クロは止まらない。


「魔力の使い方がなってなさすぎる。お前ら4人とも自分の体の中の魔力だけを使って、空間に存在する魔力を使ってないから、その場しのぎの動きしかできないんだよ。もっと使い方を考えろ。何となくで能力を使うな。魔力を意識して戦え。こんな弱い連中に背中は任せられない。」4人は泣きそうな顔をする。無理もないまだ12歳の子供なのだから。


クロは言い終えるとブラッドを見て、早く終わらせるように、睨みつける。


「そうだな。みんな。午後は反省を踏まえて実習にするから自由行動だ。あとパーティーの件だが、来週授業後教室でやろう。食べ物と飲み物は先生で用意するからな。今日は解散。」明るく話す先生だが、4人は小さく頷くだけで精一杯だ。4人は食器を片付け、食堂を後にする。それを見てクロも立ち上がり、ブラッドから立ち去ろうとした時、「待て、クロ」呼び止めるが、クロは振り返らずにただ立ち止まる。


「今日、最後の蹴りの瞬間、手を抜いただろ。」ブラッドは真剣な顔でクロに問いただす。


「なんのこと?」クロは白を切る。


「あの時のこと。まだ気にしているのか?」


「何のことだかわかんないや」そういって食堂から去っていく。


ブラッドは一人申し訳なさそうにただただ天井を仰いだ。


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