第26話 Bランク試験出発
黄の国の関所前にて。
一同は支給された衣装を着て集まっていた。着てみると、全員意外と様になっていた。
クロはズボンのベルトに水のボトルをいくつも付けていた。
「クロ。そのボトルいるの?飲み水なら持ってきてるでしょ?」ダミアが尋ねる。
「戦闘用に使うんだよ。空気中の水を凍らせるのは大変なんだ」
「だからってそれはないよね」
「それを言ったらブラッドはどうなんだ?」
ブラッドはスーツの中に、輸血パックが胸部や腹部にぶら下がっているのが見えた。
「確かにあれよりは変じゃないけど、先生なんで、そんなの付けてるんですか?」テツオが聞いた。
「ああ、これな。自分の血しか操れないし、血を出しすぎると貧血になるから、事前に血をストックしてこうして持っていくんだ。冒険者時代の名残だな」ブラッドは苦笑いした。
「そういうもんなんですね」
「じゃあ、北西方向に向かうか。順調に進めても一週間ぐらいはかかるかな」
こうして一同は出発した。四人が前を歩き、その後ろにブラッドが荷物を持って歩く。さらにその後ろを、クロがやる気のない足取りでついて行く。
ある程度の魔獣出現場所はギルド証に表示されるため、そこに行くこと自体は困難ではない。ただ、あくまでも出現場所だ。魔獣も移動するため、そこから先は自力で見つけなければならない。
魔獣車を使って赤の国まで行き、そこから徒歩という選択肢もあったが、昇級試験だから楽に行っても意味がない。面倒だが、今回は始めから徒歩だ。
森に入れば、当然魔獣を警戒しないといけない。四人は街道までは話していたが、森に入った時には周囲の警戒を始めていた。ブラッドとクロも呑気に見えるが、しっかり周囲を警戒していた。
森は舗装などされておらず悪路のため、移動にも時間が掛かかった。
道中に小型の魔獣が出てきたが、今の四人の実力を持ってすれば、何の問題もなく倒した。クロは倒した魔獣を触って何やらやっていた。そして、その魔獣を担いで、あとをついていった。
夕方になり、四人は野営の準備をしていた。ブラッドはテントの組み立てを笑顔で眺めていた。クロは担いできた魔獣をナイフで捌いていた。
持ってきた食材で食事ができると、みんなで囲って食べた。
「うん。結構いい感じの味になったね」ダミアが嬉しそうだ。
「ああ、さすがはダミアだ」テツオが褒めた。
ダミアが味付けをして、全員がおいしそうに食べながら、ブラッドの話になった。
「先生は、なんでギルド辞めちゃったんですか?」アレスが尋ねた。
ブラッドは笑顔で楽しそうに話し始めた。
「そうだな。長くなるぞ。俺たちのギルドは少数ではあったが、前衛三人、俺が中衛、後衛二人の六人で『ブルークレーブ』って名前で活動していたんだ。全員が青の国出身でな、元から友達みたいなもんだった。なんとなくでギルドを結成して、いつの間にか色んな依頼を受けていたら、気づいたらBランクにまでなっていた」
ブラッドの表情が少し曇った。
「ある時な。大型魔獣の依頼を受けて、前衛の一人が死んでしまったんだ。そこから仲間を応募してギルドを継続する案と解散の案が出たんだ。なんかな、話をしている間に、自然に解散の流れになってしまったんだ。あいつらが今何をしているかは全く分かっていない。そんな中、たまたまゼース所長に会って、研究所の手伝いを受けて、今はお前たちの先生をしているわけだ」
「なんか、先生につらいこと思い出させちゃいましたね」ダミアは申し訳なさそうに話した。
「いいや、こうしてお前たちと出会えた。それだけで俺は今幸せだよ」ブラッドは笑顔で答えた。
しんみりとした空気が流れる中、クロは捌いた魔獣の肉を焼き始めた。
「それ、倒した魔獣の肉でしょ?」ダンガンが聞いた。
「そう。美味いかどうか試したくてな」
魔獣肉が焼けると、クロはブラッドに食べるように渡した。ブラッドは嫌そうな顔をして食べた。
「うまいな。クロ!うまいぞこの肉!」
「だろ。黙って食え」
この後、クロが全員分の肉を焼き、皆で食べた。しんみりした空気がいつの間にか和やかな雰囲気に変わった。
夜になると四人はテントで眠りにつき、クロとブラッドは見張りをしていた。
「クロ。さっきはありがとう」ブラッドが言った。
「別に、食べ足りないから焼いただけだし」
「にしても、上手い肉だったぞ。どうやった?」
「血を抜いただけ」
「それだけか?」
「冒険者は魔獣を討伐しても、そのまま食べるし、保存も適当だろ。どうせ腐らないから」
「ああ、確かに。魔力のおかげで腐らないから、下処理なんて考える奴はいなかった」
「前に考えたんだ。どうやって魔獣肉が変化していくのか。その予想が血だ。魔力で肉は腐らない。けど、血は悪くなって味が落ちる。そう仮定した。今回それを試したかった」
「すごいじゃないか。お店やれるレベルでうまかった」
「ばーか。魔獣肉なんてゲテモノ料理、誰が食べるんだよ」
「まあ、確かにそうかもな。でも、在ったらいいよな。俺なら通うな」
「ブラッドのためだけにやったら、赤字になっちまうよ」
「確かに、そうかもな」
「ああ、バカみたいな店だ」
二人は楽しそうに話をしながら、見張りを続けた。ブラッドとはケンカばかりだったが、今は仲が良かったあの頃に戻ったようだ。この時間が永遠に続くことをクロは願った。
少しほのぼのとした旅を描いてみました。
なんとなくほのぼのしたシーンは書いてて難しいです。
続きを楽しみにして頂けるとうれしいです。




