第25話 必殺技披露
大型魔獣戦用訓練場にて。
必殺技の特訓から五日目。四人は15m級の魔獣の形をした人形に、それぞれの技を試していた。
「これでもどうだ!」テツオは力任せに殴りつけたが、人形の表面が少し凹む程度だ。
「ん~しっくりこないの!」ダミアは地面に魔力を流してみたが、まだ形になっていない。
どうやらダミアとテツオは、まだ必殺技の形を掴めず苦戦していた。
「バースト・ショット!」ダンガンは至近距離で、魔力を凝縮した巨大な弾丸を撃ち込み、人形の腹部に大きな風穴を開けた。
「光波裂傷斬!」アレスは剣から放たれた光の斬撃を高速で飛ばし、人形の腕を鮮やかに切断した。
ダンガンとアレスは、うまく能力を応用して技を出しているようだ。
四人は一旦休憩を取り、訓練場の隅に座って話し合いを始めた。
「あ~もう!私どうしたらいいか、わかんないの!」ダミアは四日間の間のストレスが爆発した。
「いや、ダミアは出来るよ。僕も手伝うからさ」アレスが励ます。
「いいよね。二人はうまくいっててさ」ダミアはついに不貞腐れてしまった。
「そんなことはないさ。僕だってイメージ出来てもまだやれてないことがあるし」
「そういうのがないの!そもそもイメージが思いつかないんだもん……」
「馬鹿は考えるだけ無駄だ」
クロが訓練場に入ってきて、ダミアに向かって言い放った。
「何よ。喧嘩売りに来たの?いいわよ。相手してあげる」ダミアは立ち上がり、指を鳴らした。
「いや、相手にならないからいい。ブラッドがアドバイスして来いって」
「結構ですぅ。自分たちで考えますぅ」ダミアは完全にいじけてしまった。
「じゃあ、俺はもう戻るから」クロが踵を返そうとした。
「待ってくれ。クロ。僕はアドバイスがほしい」アレスが代表して、真剣な顔で聞いた。
「じゃあ、アレスとダンガンは今の調子でやっていればいい。能力が非常に戦闘向きな分、色々試していけばいい。けど、二人は、一人で戦える能力なのか考えろ」
「俺は地上なら力になれる」テツオが力強く言った。
「だが、今回は空中に敵がいる。誰か落としてくれるのを待つのか?」クロは鋭く指摘する。
「それは……。だな……。自分でどうにかしたいとは思うけど……」テツオは言葉に詰まった。
「ダミア。お前は一人で全部こなせるのか?」
「私は今までサポートばかりだったから、近距離でも戦えるようになろうと思って訓練してるし」
「付け焼き刃の技で大型相手にとどめが刺せるのか?」
「それは……。まだできない……と思う」
「今できることをやれ」
クロはそれだけ言うと、訓練場を去って行った。ダミアとテツオはクロの言葉を反芻し、何ができるか考えた。
「私はやっぱりみんなを支えたい。そのためにテツオ、手伝って」ダミアはやるべきことがわかったようだ。
「俺で良かったら手伝うよ」テツオも力強く答えた。
ダミアはテツオと協力技の訓練に入った。こうして訓練が再開された。
七日目 大型訓練場にて。
ブラッドは四人の必殺技が出来ていたか確認するために見に来ていた。
アレスとダンガンは問題なく、必殺技が完成していた。
まずはテツオが必殺技を見せる。テツオは大型の人形の前に立ち、魔力を右手のみに集中させた。
「アイアン・フィスト!」右手が巨大な鉄の拳になり、人形の頭を吹き飛ばした。
「いいじゃないか。テツオ。とどめの一撃にはもってこいだな。あとは溜める時間を短くできるように意識していくこと」ブラッドは頷いた。
「はい!」
次はダミアの番だ。地面に両手を置いて魔力を流していた。
「ピアンタ・コルダ!」大型の人形の手足に、みるみるうちに太い木が巻き付いていった。
「なるほど。動きを止めることに特化した技だな。実践では非常に役立つ。あとはテツオ同様に素早く出来るように、魔力を出す練習だな」
四人は地上用の必殺技を完成させていた。
残りは空中にいる魔獣をどう攻撃するかだ。一同は飛行魔獣戦用の訓練場に向かった。
アレスとダンガンは、それぞれ空中を飛ぶ的に難なく技を命中させ、クリアした。
「いいじゃないか。二人ともこれなら実践でも通用する。あとは残りの二人だが……」ブラッドはダミアとテツオを見た。
「先生。私たちは一緒にやることに決めました」ダミアが言った。
「どれ、見せてみろ」
テツオが片膝をつき、低い姿勢を取った。その後ろでダミアは魔力を溜めて、空中の的を狙っていた。
「行くよ。テツオ」
「こい」
「「アイアン・ロケット!」」
テツオの足元から巨大な切り株が突如出現し、テツオを空中に打ち上げた。
テツオは的に近づくと全身を鉄化させ、的を殴り破壊した。
「なるほど。二人で一つの必殺技だな。いい考え方だ。テツオの短所を補って、ダミアの長所を生かした技だな。捕まえることもできるし、実践で使えるぞ!」
四人は集まり、喜びを分かち合った。悩み、試行錯誤を繰り返したこの一週間は、自分たちが今何ができるか考え、自分の能力の可能性を伸ばしていた。もう十分一人前の冒険者になったといえよう。これからもっと実践経験を積んでいけば、一流冒険者になるのも、すぐにでも。
「今の四人ならなんとかBランクの試験は行けるだろう。だが、戦況は常に変わっていく。そのことだけは覚悟してほしい。大型魔獣は予定通りにはいかないものだ」ブラッドはBランクの冒険者の先輩として心構えを教えた。
教室にて。
全員教室に集められた。
「明日はBランク昇級試験のために出かけるから、みんなには専用の衣装を渡そうと思う」ブラッドは笑顔で衣装を持っていた。
アレスは英雄をモチーフにした、身軽な鎧を渡された。水色がベースで、やはりマントもついている。
ダンガンはウェスタン風の衣装を渡された。濃い茶色のウェスタンハットに、星型のバッジが付いているのが特徴的だ。
テツオは灰色の道着を渡された。袖はなく、動きやすくなっている。テツオは喜びそうだ。
ダミアは白色のキトン(古代ギリシャの衣装)を渡された。何とも言えない表情をしていた。
クロは黒色の半そでTシャツと黒色のカーゴパンツを渡された。「衣装」とはなんだという顔をしている。
それぞれ喜ぶ者と困惑する者がいて、教室はカオスな状態だ。
「先生。衣装なんて何のために着るの?」
「これは役割を担うために着るんだ。気持ちが乗るだろ。あとは丈夫に作ってあるから防具の役割にもなる」
ブラッドのセンスが何とも言えないが、四人は慣れるしかない。
「明日からこれを着て、昇級試験に臨んでもらう。みんなで合格しよう」ブラッドは満面の笑みで話した。
周囲の目は冷ややかで、明日は昇級試験に向けて出発だ。
いつも読んでいただきありがとうございます。
研究施設編もいよいよラストに差し掛かっています。
また、4人の視点が先生からブラッドに大人として見たことで変化しています。
個人的に描きたかった描写です。




