第24話 必殺技を考えよう
とある日の教室にて。
クロは一人机で寝ていて、残りの四人は話をしていた。いつもの変わらない日常だ。
「私たちもう少しで成人だよね」ダミアが切り出した。
「ああ、そうだな」ダンガンが答える。
「なんか俺、実感わかないよ」テツオが率直な気持ちを漏らした。
「僕は早く成人になりたいよ」アレスは世界への焦燥感を滲ませた。
成人とは、大人になることと同時にSTFにおいて自由を意味する。施設に残って研究を手伝う仕事、施設から出て自分のやりたい職に就くこと。選択肢はいくつもあり、皆それぞれに悩みを抱えていた。アレスは世界を見ることを望み、他の三人は施設で恩返しがしたいと考え、残ることを考えていた。
そうこう話をしていると、笑顔のブラッド先生が教室に入ってきた。
「今日は授業の前に話がある。クロ、起きろ」
「ん?聞いてるから大丈夫」クロは眠そうに答えた。
「いいから。起きて聞くんだ」ブラッドはクロを軽く叩き起こした。
「Bランクの昇級試験の話が来たぞ」
「「「「!!!」」」」四人はついに来たという表情をした。
「Bランク?俺関係ないや。寝る」
「待てクロ。お前はCランクを受けてもらうぞ」
「いや、俺はいいよ。別に困らないし」
「将来どうなるかわからないんだ。取れる時に取っておいて損はないだろ」
「面倒」クロは再び寝だした。
「まあ、クロは強制的に連れていくとして、四人は今回、ここから北西にある赤の国の付近に出現したレッドワイバーンの討伐をしてもらう。一週間後に出発だ」
話を聞いて四人の表情が引き締まった。
「この魔獣は空を飛びながら、様子を見て攻撃してくる。遠距離攻撃が重要になってくる。もちろん、近距離でとどめをしっかり刺さないと消耗戦だ。それでだ……」
ブラッドは黒板に紙を貼り付けた。内容は大きく『必殺技を考えよう』と書かれている。言葉で伝えればいいものを、余程強調したかったのか、視線でアピールしてくる。
「これから大型の魔獣相手でも使える技、すなわち必殺技を全員一つは出来るようになってもらう。今まで小さい魔獣しか相手にしたことないから、戦い方は一から考えることになる。今までとは、まったく別物だ」
「先生、飛行した魔獣を想定して考えるのですか」ダンガンが質問した。
「いいや、地上に降りてきた想定でいい。余裕があるなら、空中での対策も考えていいぞ」
「空の対策ってどうすればいいんですか?」テツオが焦りを見せた。
「今回は自分たちだけで考えていけ。お前たちもそろそろ成人だ。自分で考えないといけない時が来る。試験には先生も立ち会うけどな」
「先生も一緒に戦ってくれるんですか?」ダミアが尋ねた。
「いや、手出しは一切しない。Bランク以上は監督役として、そのランクを持っているか、それ以上のランクの者が一緒に同行して、無理だと判断したら、撤退させる決まりがある。先生が監督として付き合うから、無理だと判断したら撤退だ」ブラッドは笑顔で言った。
「僕は試したい技があるんだ。さっそくやろう」アレスは自信に満ち溢れていた。
「訓練場は、今頃ヘファイストス先生が、大型魔獣戦用と飛行魔獣戦用の二つに変えてくれている頃だ。とことん失敗して、頭を使え!」ブラッドは笑顔で言い終わると教室を後にする。
四人は作戦会議を始めた。まずは空中戦をどう対処するか、話し合っていた。
「俺とダミアなら空の敵を狙い打てるが、大型となると今のままではダメなんだろう」ダンガンが冷静に分析する。
「私もそう思ってた。小型に対しての攻撃しか練習してこなかったし……」ダミアも同意した。
「俺は空中戦となると正直無理だ。力になれそうにない」テツオが自らの短所を認めた。
「大丈夫。僕たちならなんとかなるよ」アレスは皆を鼓舞した。
クロは起きて、教室から出ていこうとしていた。
「おいクロ。どこに行くんだ?」ダンガンが呼び止めた。
「Bランクとか俺には関係がないから、散歩してくる」
「ちょっと待ちなさいよ。当日はあんただって行くんだから、一緒に訓練でもいいでしょ」ダミアが苛立った。
「俺はいいよ。それより自分の役割を勝手に決めるな」クロは言いたいことを言って教室を後にした。
四人はクロの言葉の意味を考えた。確かに、遠距離はダンガンとダミア、近距離はアレスとテツオという役割分担が定着していた。
そのことが言いたかったのか?小型戦は役割を守っていれば問題ない。
だが、大型魔獣になれば、いやでも役割を変えざるをえない時が来る。自分たちは熟練の冒険者じゃないからなおさらだ。
クロが言いたいのは、全員が全てに対応できるようになれということか。
「今まで僕たちは自分の長所を生かして戦ってきた。だが、これからは短所を長所に変えるんだ」アレスが気づきを得た。
「そうね。私も賛成」
「俺も出来るなら頑張りたい」
「ああ、そうだな」
四人は一致団結して取り組む決意を固めた。そこから議論は白熱していった。
一方クロは、施設の園児に絵本の読み聞かせをしていた。
だが、ただの読み聞かせではない。
氷像を作って、それを動かしながら物語を読み進めていた。
子供たちは熱心に、絵本の中の物語をクロが作り出した氷像の世界で見ていた。
「クロの能力には感心するわ」ディーテがブラッドに話しかけた。
「まあな、俺もあれは真似出来ない。先生失格かな」ブラッドはクロの成長と、自分の情けなさにしんみりした表情を浮かべていた。
こうして必殺技を考え、特訓する期間が四日間続いた。出発まで、残りあと三日。




