第23話 アレスの気づき
承知いたしました。第23話「アレスの気づき」の原稿より、すべての太字表現を解除し、再構成します。
第23話 アレスの気づき
クロはディーテ副所長と話していた。
「さすがクロ。もう終わったのね」
「まあ、こいつの覚えがいいだけだよ。な」クロは子供の頭を撫でて褒めた。
「他は、だいぶ苦戦しているみたいね」
ディーテとクロは、他の四人を見た。皆、子供たちの話を聞くだけで精一杯の状態だ。特にアレスはひどい。朝の特訓での指摘が頭から離れず、子供の話が全く入っていなかった。
「ねえ、アレス聞いてる?」子供は不満そうにアレスを見つめた。
「!。あ、ごめん。なんだっけ」アレスはつい今日のことを考えていた。
「だから、剣がね。短くなったり、長くなったりで、ちょうどいいのが、出せなくなったの!わかった?」
「ああ、そうだったな。それは大変だ……」アレスはうわの空だ。
「ああもう。これならクロ兄ちゃんの方がよかった!」子供はついに愚痴を言い始めた。
クロが教えた方がいいなんて、そんなことは僕が一番わかっている。でも、どうしたらいい?自分の能力すらまともに理解できていない僕が、どうやったら人に教えられるんだ。
「じゃあ、今まで剣を出す時どうしていたの?」とりあえずありきたりな質問をしてみる。
「だから、前は考えなくても出来たの」
最初の話を聞いてなかったのが、ばれてしまった。一体何が原因だ?長くするには魔力がいる。魔力量が上がったのか。だが、それをどう説明すればいい?クロならどうやって教えるんだ?
「とりあえず、剣を出してみようか」まずは現状を見てみないといけないと考えた。
「ん~。これ」1mの長さの剣が出てきた。
「これを小さくしたいの?」
「ちがう。毎回同じ長さのが出したいの」いよいよアレスの手に負えない状況になっていた。
「そうだな。そうしたらまずどのくらいにしたいか、考えないといけないな」
「え?なんでそんなことしないといけないの?」子供は話を聞き返してくれた。
「出すには魔力が必要だよ。そして大きさを決めるには『このぐらい』ってイメージが必要なんだ」アレスはジェスチャーをしながら、自分にも言い聞かせるように伝えた。
子供はその助言を受け、しばらく考え込む。アレスもその姿を見て、ふと気づいた。**『イメージ』。それは、今朝クロが僕に言ったことだ。**じゃあ、自分には何が出来る?もしかしてそういうことなのか。
「「わかった!」」二人は同時に返事をした。
二人はつい笑ってしまった。アレスは試すように促す。
「じゃあ、魔力を抑えながら出してみて」
「ん~。こう?あっ!小さいのが出た」20cmほどの剣が出た。
「じゃあ、そこから少しずつ大きくなるイメージをして、魔力を流すんだ」
「こうして……。こうだ!」剣が伸び、50cmほどになった。
「できたじゃないか!やったな!」
「うん。アレスのおかげで出来た。クロ兄ちゃんの所に行ってくる!」子供はクロの元に行き、喜びを体で表現していた。
「イメージして、魔力を流す、か……。結局クロがいつも言っていることを、そのまま言っただけじゃないか」アレスは少し悔しそうな表情を見せた。
ただ、アレスは自分の中で何か掴めた気がしていた。
自分はあの子と同じで、ただ能力を出していただけだった。イメージも足りておらず、魔力の出力も一定にしていた。
だから、自分の能力では、現状が限界だと思い込んでいた。
早く試してみたい。
そう思いクロを見ると、五人の子供達に囲まれていた。全員終わったようだ。
「「「「「クロ兄ちゃん遊んでー!」」」」」一斉にクロに掴みかかり、引っ張る。
本当にクロには勝てない。だから悔しい。自分を見ていないこと。誰に言われるでもなく、努力をし続けること。嫉妬心で胸が張り裂けそうだった。
誰か肩に手を当てる。
「良く教えたじゃないか。見ていたぞ。いい先生だったじゃないか」ブラッド先生が笑顔で話しかけてくれた。
アレスは泣きそうになった。子供たちがいるから、泣けないが、この二年間クロに嫉妬し、続けた自分が馬鹿みたいに感じた。
「先生。僕……」
「ああ、何も言わなくていい」
こうして、子供たちの能力相談は無事終えることが出来た。
放課後訓練場にて。
クロとアレスは向かい合って戦っていた。だが、アレスが持っている剣は、たったの一本のみだった。
「もっとイメージをするんだ。僕の剣はまだこんなものではない!」アレスは何か吹っ切れたように、動きが格段に良くなっていた。
今までの剣より形が変わり、輪郭がしっかりとして、強い光を放っている。強い剣をイメージし創造するほど、アレスの動きは良くなっていった。今なら何でも出来るような気がしていた。
「クロ。これならどうだ!」アレスは二本目の剣を出そうとした。
クロはアレスが二本目の剣を出そうとした瞬間に間合いに入り込み、一撃を与えた。
「ったく。二本出されたらさすがに獣化しないと相手出来ねえよ」クロは本音を漏らした。
アレスは嬉しかった。やっと認められた気がした。
自分の能力の本質がわかり、初めて全力で戦えていると感じた。
まだ戦っていたい、試したい。自分の限界をとことん時間がある限り。
そうか。クロも同じ気持ちだったのか。
一人で強くなっても試す相手がいない。
それなら、僕が彼を一人にしない。
アレスは立ち上がり、両手に剣を持つ。
クロは即座に獣化して構える。
二人の表情は真剣そうだが、どこか楽しそうだ。
アレスはクロに向かって切り込むが、素早く避けると殴り掛かってきた。なぜだ、以前なら貰っているはずの一撃が遅く感じる。これなら避けきれる、そして次の攻撃に繋げる。
互いに攻撃を避けては打ち込みを繰り返し、その速さは増していく。
アレスは身体がついていかなくなり、吹き飛ばされてしまう。
「ははは、これが今の僕の限界か。全然だめじゃないか。こんなんじゃ英雄になれない!」自分の不甲斐なさに笑ってしまった。だが、この高揚感はなんなんだ。
こうして二人は毎日夜と早朝に訓練を続けた。そのせいでアレスは授業中に寝てしまい、ブラッドに怒られる日々がしばらく続いた。




