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キャンバス~色なき世界のアービトレーター≪仲裁人≫~  作者: ぶーたん
第1章 研究施設編

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第22話 2年後

黄の国の武闘大会から二年程が経ち、五人の生徒はそれぞれ成長し、背が伸びていた。


テツオは筋トレを頑張っており、筋肉がかなりついて、一回り男らしい体格になった。ダンガンは相変わらずクールで、見た目に大きな変化はない。ダミアは武闘大会で手に入れた髪飾りとネックレスを常に身に着け、どこか大人びた雰囲気を漂わせていた。


クロとアレスは武闘大会以降、二年間欠かさず、夜明け前の訓練場で特訓を挑み続けていた。


アレスは、六本の剣を出したまま、長い時間、魔術を維持できるまでになっていたが、クロは相変わらず獣化せずに、拳一つで相手をしていた。アレスは渾身の力で切りかかるが、すべて紙一重で避けられ、的確なカウンターを食らう。大きな隙を見せると、容赦なく吹き飛ばされていた。


「……くそっ。なんで勝てない!」アレスは息切れしながら、土埃にまみれて悔しそうに言った。


「いつまで続けるんだ。この遊びは」クロは呼吸一つ乱さず、冷酷に問いかけた。


「僕がお前に勝てるまでだ」


「なら今のままなら無理だ」


「何故だ?」アレスは素早く起き上がり、問い詰めた。


クロは右手の人差し指の先に、マッチで燃やしたような小さな火の玉をつけた。


「これがお前だ」


「?」アレスは理解できない。


クロはさらに残り四本の指にも火をつけ、計五つの小さな火の玉を空中に浮かべた。


「これが今のお前が限界だと思っている力だ」


「???」アレスは依然として意味がわからない。


「だから、お前はこれしか出していないんだ。火の力でこれだけしか出してない」


クロは五つの火の玉を空中で自在に操り、掌で一つの眩しい炎の塊にした。


「これが覚醒した能力だ。お前は、剣を出してそれを操っているだけだ。それ以上がない。だから、そこで限界にきている」


「じゃあ、どうしろっていうんだ!」アレスは自分の情けなさで苛立ち、八つ当たりするように叫んだ。


「イメージが足りない。自由に能力を操る魔力の練度もない。だから無理だとさっきから言ってるだろ」


クロは炎を体に纏うと、その炎は瞬く間に体に吸収され消えた。


「じゃあ、俺は寄っていくところがあるから。自主練でもしてろ」クロは訓練場を後にした。


早朝の教室にて。


一同が教室に揃うとブラッドが口を開いた。


「今日は新しく入ってきた子供たちと顔合わせしてもらおう」ブラッドはいつもの人好きのする笑顔で言った。


STFは今年になって、孤児になった五歳の子供を五人引き取った。今年は施設内で遊ばせて、来年から教室で授業をする方針のようだ。


「え?でも突然なんでですか?」ダミアが尋ねた。


「お前たち一応は先輩なんだからそりゃするだろ」何の説明にもならない言葉が、笑顔で返ってきた。


これはだめだと一同は思い諦めていたが、アレスは一人ボーッとしていた。朝のクロに言われた「イメージが足りない」という言葉が、頭から離れなかった。


研究棟の保育施設にて。


一同が保育施設に向かうと、子供たちがクロ目掛けて喜んで寄って来た。


「「「「「わーい!!」」」」」元気いっぱい走ってきた。


ブラッドとクロは慣れたように出迎える。他の四人は意外な光景に困惑した。


「クロ兄ちゃんまた来てくれたの?」一人の幼児がクロに声をかけた。


「授業の一環でな」クロは乱暴な仕草でその子の頭を撫でた。


「いつも悪いね」


そこにいたのはディーテ副所長だった。今は研究の傍ら、園児の教育をしているようだ。


「で、今日はなんで呼んだんだ。顔合わせは建前だろ」クロはディーテに呼んだ本当の目的を単刀直入に聞いた。


「そうね。クロはたまに顔を出してくれるけど、実は……」


ディーテの話では、最近になって子供たちの能力のコントロールが著しくできなくなったという。そのため、十四歳になった自分たちに力の使い方を教えてほしいというものだった。


「こんなことお願いするのは申し訳ないんだけど、受けてくれる?」


ここまで来て断る方がどうかしている。だが、四人は教えたことなどないため、どうしていいかわからないという表情をしていた。


「まあ、ほら。教えるのも勉強だしな」ブラッドは他人事のように笑顔で言った。


「ぼく、クロ兄ちゃんがいい」


「ずるい。ぼくもクロ兄ちゃんがいいの」


「だめだよ。クロ兄ちゃんにはぼくが教わるの」


意外にもクロが子供たちから好かれていることに四人は驚いた。毒舌で性格が悪いこんな奴のどこがいいんだと四人は同じことを思っていた。


「おいガキども。言うこと聞かないともう能力見せてやらないぞ」クロはいつもの調子で容赦なく一喝した。


「「「「「やだ!!!」」」」」皆が口をそろえて言った。


結局ディーテが、子供たちの能力と五人の能力の相性を考え、マンツーマンで教えることになった。みんなまずは悩みの話を聞いた。


クロに割り当てられたのは、石を出す能力を持つ男の子だった。


「クロ兄ちゃんあのね。ぼくこのまえせんせいとあそんでて、石を飛ばして脅かそうといたの。そしたら、ぴゅーっていきおいよくせんせいにとんでっちゃったの」泣きそうな顔で申し訳なさそうに話をした。


「わざと勢いよく飛ばしたわけじゃないんだろ」クロは先ほどとは一変して、頭を撫でて優しく聞いた。


「ぅん」今にも泣きそうだ。


「じゃあ、俺に飛ばしてみろ」


「!。けど、ケガしちゃう」男の子は心配な表情をした。


「大丈夫。怪我してもすぐに治る。約束だ」クロは頭をぐしゃぐしゃと撫でまわした。


少し距離を空けるとクロは「来い」と言わんばかりに両手を広げた。男の子は手から石を出して、クロに向かって放つ。しかし、クロはそれを受け止め、軽く捕って見せた。


「ほら、ケガなんてしないだろ」クロは近づき、頭を撫でる。


「まあ原因はわかった。ちょっと手を出してみろ」クロは男の子の手を取り、説明をした。


無意識で能力を使う分、身体的な成長で感覚が変わったのだ。石を出した瞬間、掌の一点に集中していたから、出力が上がった。そのため、掌からもう少し大きく魔力を出すイメージにしてあげれば、威力が落ちると考え、男の子の手をなぞり、その感覚をイメージさせた。


「じゃあ、もう一回やってみろ」


「うん、いくよ」


手から出た石は先ほどよりはるかに遅く、優しくクロへ向かって行った。クロは石を捕ると、駆け寄り抱きかかえた。


「できたろ」


「クロ兄ちゃんの言うとおりにしたら出来た!」男の子は満面の笑みを浮かべた。


「じゃあ、ディーテ先生の所に報告しに行こうか」


クロは男の子を抱きかかえたまま、ディーテに終了を告げた。

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