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キャンバス~色なき世界のアービトレーター≪仲裁人≫~  作者: ぶーたん
第1章 研究施設編

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第17話 夜の焚き火

黄の国の関所前。


Cランク昇級試験から二週間が経ち、武闘大会の見学に向け、出発の準備をしていた。


「さあ、みんな早く乗れ。まずは四日間かけて貿易都市まで行くからな」


みんなが魔獣車に乗り込む。ヘファイストス先生が手配してくれたのは、護衛はいないが、足の速い魔獣だった。魔獣車は荷馬車とほとんど変わらないが、馬ではなく魔獣が引くため、その速度は比べ物にならない。


貿易都市とは、高い壁で囲まれたグレーゾーンの街で、あらゆる国の物資と情報が集まる場所だ。今回は、武闘大会が開催される武術国家メラクレスに行くため、貿易都市で一泊するのだ。


「ねえ、この魔獣かわいいですね。ヘファイストス先生、この子、なんていう鳥の魔獣なんですか?」


ダミアは魔獣を撫でながら質問した。


「ああ、この子はレッドクックバードと言ってな。地上の移動でかなりの速さがある、人気のある魔獣なんじゃよ」


ヘファイストス先生は嬉しそうに魔獣に餌をあげながら答えた。


生徒たちは中に乗り込み、先生二人は操縦席に乗って出発する。速度が出ているせいで、かなり揺れるが、クロは出発前からすでに爆睡していた。四人は楽しそうに、貿易都市で初めて何を買うかなど、未来の光景に色を塗るように欲しい物の話をしていた。


「私は服とかアクセサリーのお店があったら見たいな」


ダミアは年頃だからか、おしゃれに興味があるようだ。


「僕は装備屋というところに行ってみたいな」


アレスは英雄願望からか、格好いい装備を見たいようだ。


「俺も銃を見たい」


ダンガンは自分の銃のバリエーションを増やしたいのか、銃を見たいようだ。


「せっかくだから色んな食べ物を食べたいな」


テツオは、各国の料理が集まる貿易都市で、珍しい料理を食べたいようだ。


時間はあっという間に過ぎ、夕方になり、野営をすることになった。魔獣車でそのまま移動もできるが、夜道は暗く、夜行性の魔獣や盗賊の心配があるため、基本的に夜は移動しない。


「ほら、みんなでテントと食事の準備だ」


クロ以外の全員で、荷車の上に積んでいたテントと調理器具を出した。


「ほら、クロ。起きろ。横の食材を取ってくれ」


ブラッドが言うが、クロはまったく起きる気配がない。ブラッドは呆れて自分で取ることにした。


クロ以外で食事の準備をし、食事を開始する。ダミアたち四人は、初めての野営での食事が新鮮なようで、焚き火の炎のように明るく楽しそうに食事をした。


「若いってのは、いいもんですな」


ヘファイストス先生は四人の食事を嬉しそうに見て笑っていた。


「お前たち、もう少し静かに食べなさい」


ブラッドはヘファイストスとは反対に、はしゃいでいる四人が心配だった。


「大丈夫だよ、先生。周りの魔獣の魔力は、みんなで探っているから」


(言われずとも動けるようになっている。本当に成長した。これなら、もう子供扱いする必要はないな。)ブラッドはそう感じ、気分良く笑った。「こうなったら祝い酒だ。」


「ヘファイストス先生、一杯どうですか?」


ブラッドは笑顔で酒を飲むジェスチャーを送った。


「ええ。いいですぞ。何か嬉しいことでもあったんですか?」


「二人だけずるい」


皆は羨ましそうに見つめる。


「お前たちも十五歳になったら、その時は一緒に飲もう」


楽しい時間は早く過ぎ、後片付けをしたヘファイストス先生と四人はテントで眠っていた。明日は日の出と共にに出発するからだ。ブラッドは見張りをするため、焚き火のそばで座って過ごす。冒険者では当たり前の光景で、慣れたものだ。


皆が寝静まると、クロがブラッドの元に来た。昼寝していたから、夜は眠れなくなったのだろうか。この可愛いやつめ。ブラッドは取っておいた夕食の残りをそっと差し出した。


「いや、別に飯いらないし」


前言撤回だ。なんでこんなに生意気なんだ。さっきまで四人の生徒の成長にほっこりした気分だったのに、酔っているせいか?いつもより生意気に見えた。


「酒飲んでんのか。見張り代わるから寝ろよ」


「いいや、やだね」


ブラッドは酔いのせいか、いじけたような態度をとった。本当はすごく嬉しい。気を使ってくれていることに、胸が熱くなる。


「じゃあ、俺ももらう」


クロは近くのコップを取り、自分で酒を注ぎ、飲み始めた。


「馬鹿。お前まだ未成年だろ」


「大丈夫。俺は酔わない体質なの。知ってるだろ、エレメントコアの火の力」


そうだ。クロは火の力で、どんなに食べてもすぐに体内で燃やし、魔力だけを吸収する。酒も同じなのか。エレメントコアの話をされると、何も言えなくなる。本当だったら俺が犠牲になっていたのに、代わりに引き受けてくれた。


「クロ。お前、エレメントコアのことで後悔してないか?」


「なんだよ、突然。自分で触れて取り込んだんだ。別に後悔してねえよ。まあ、研究棟に成長過程を見せたりするのが面倒なぐらいだ。けど、この施設に入ってるんだから、当たり前だろ」


「そうなんだが、もしお前がエレメントコアの実験の成功者だと各国に知られれば、最悪、戦争になるかもしれない。お前はそれだけ貴重な人間なんだ」


ブラッドは酒を一口飲んで話した。


「それがどうした。どうでもいい」。


「!?」ブラッドは言葉を失った。国の運命に関わる重大な話に関心がないのか、と。


「エレメントコアが貴重なのは知ってる。だが、この先、国に従う気も、誰かに縛られる気もない。俺は俺だ。自由になる」


クロは酒を一気に飲み干した。


ブラッドはクロに酒を注いだ。なんだ、クロも大人になったんだな。今なら対等に酒が飲める気がした。


ふと、クロは周囲の闇に視線を向けた。


「酒のせいで血の匂いに鈍くなっている。野盗どもがいるとしたら、今夜あたりが潮時だ」


クロは小さく呟いたが、ブラッドは酒を飲んでいて気づかない。


「なあ、クロは将来、何がやりたい?」


「悪党を裁くこと」クロの声は焚き火の音に紛れることなく、冷たく響いた。


「いやいや、他にはないのか?」


少しでも大人だと思った自分が馬鹿だった。


「じゃあさ、ブラッドは冒険者以外に何がしたかった?」


クロは酒を飲みながら聞いた。


「何って、そうだな。考えたことなかったな」


まずい。人に聞いておいて、自分はなかったじゃないか。


「いや、あったぞ。よくギルドメンバーと酒場に行っていたんだが、そこは酒も料理もすごくうまくてな。悩んでいるときも、マスターがよく話を聞いてくれてな。こんなにいい場所を冒険者に提供できるってのは最高だと思って、酒場のマスターになってみたいと思ったことはあるな」


「ガキみたいな理由だな」


「悪かったな」


ブラッドは恥ずかしそうに酒を飲んだ。


「いや、でも悪い夢じゃないな」


クロはコップの中の酒に反射する夜空の月を眺めて、飲み干した。


こうして三日間、ブラッドとクロは、野営の夜は二人で飲んだ。四日目の昼、ブラッドは眠そうに、クロは爆睡して、貿易都市の前に着いたのである。

いつも読んでいただきありがとうございます。

クロとブラッドの酒を飲み交わし、会話するシーン

個人的に好きなんですよね。

対等な感じがあってなんか好きです。

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