第16話 指導者の誓いと未知なる色
黄の国の門付近にて。
ブラッドとクロは、四人の試験終了を待っていた。ブラッドは貧乏ゆすりが止まらない。
「ああ、もううるさいなあ。心配なら隠れて見に行けばよかっただろ」
「別に心配なんてしてないぞ。この日のために特訓したんだから」
「なら落ち着けって。ブルーファングなんて今のあいつらなら余裕だろ」
「そういう問題じゃないんだよ。いつだって心配なんだ」
「はいはい。俺は寝るよ」
「だめだ。話し相手になれ」
「なんだよ。めんどくせぇなあ」
「いいだろ。たまには付き合え」
「じゃあ、この試験に合格したら、武闘大会に連れて行けよ」
「なんでお前その話を……。ヘファイストス先生か……。いや、クロも合格しないとだめだ」
「なんでだよ。別にCランクになる理由がないだろ。関所はブラッドのギルド証を見せたらBランクで通るだろ。そうじゃなくても、誰かしらCランクなら全員通れるだろ。見たいんだよ、強い奴を」
ブラッドは黙ってしまった。武闘大会には連れて行きたい。だが、行くまでに最低でも四日はかかる。それまでに安全に行けるか心配なのだ。もし、一年前のように盗賊がいたら、自分一人で守れるのか。どうしても不安が尽きない。
「俺一人で守れるか、不安なんだ」
「ああ!馬鹿か。いつまでも子供扱いすんな。お前の所有物じゃねぇんだよ」
クロがブラッドの胸ぐらをつかみ、怒鳴った。
「すまん」
力なく謝る。クロは手を離し、ブラッドに背を向けて座った。
「まったくだ。ガキはどっちだよ。少しは信用してみろよ」
「ああ、その通りだな。もうお前たちを子供扱いしない。指導者としてお前たちを導くさ」
「まあ、期待しないでおくよ。前にも聞いた気がするしな」
クロはブラッドに見えないように笑っていた。
四人は昼前には帰ってきた。今回の依頼はやはり簡単だったようだ。四人ははしゃいでいた。
「案外すぐに見つかったな」
「私、今回無事に戻ったよ、先生!」
「僕たちは強くなった!」
「ああ、俺たちの連携を見せてやりたかったな!」
四人が先生に褒めてほしいと言わんばかりに、見つめてくる。子供扱いはだめだったな。いや、でも合格した日くらいはいいだろう。なあ、クロ。
「お前たち、本当によくやった。もうお前たちは一人前だよ」
ブラッドは笑顔で四人を強く抱きしめる。
クロはもう四人が帰ってきて、五人の感動を見るのも面倒なので、一人で施設に戻った。
「まあ、ブラッドはブラッドのままでいいか……」
クロは一人、食堂に向かった。徹夜の連続で、さすがに魔力が少なくなっている。早く、なんでもいいからご飯が食べたい。そう思いながら食堂に行くと、おばちゃんが一人でパーティーの準備をしていた。
「ああ、クロ。研究終わったのかい?」
「終わってから、ブラッドに付き合わされてた。飯ないの?」
「Cランク試験合格のお祝いだよ。あんたも飾り付け手伝いな」
「いや、こっちは徹夜で腹減ってんだけど」
「いいから、ほら、こっちの方持って」
おばちゃんは飾りを差し出した。
こうなったら、早く終わらせて飯を食おう。おばちゃんに文句を言っても敵わない。こうなったら全力でやるしかない。
準備が終わると同時に、ブラッドたちが昇級申請を終えて帰ってきた。
「なんだ、クロも私たちのお祝いをしてくれるの?」
「素直じゃないな」
「多い方がいいし、いいだろう」
「僕はCランクになった。次はクロの番だ」
四人とも言いたいことを言ってくれる。正直、Cランクには興味がない。別に困らないからな。ただ、上から言われると、なんだか腹が立つ。いや、それより腹が減った。
全員が席に着くと、やっとパーティーのご飯が出てくる。やっと食べられる。三日ぶりの食事だ。食えればなんだっていい。クロは勢いよく食べ始めた。
「では、Cクラス昇級を祝って、乾杯!」
ブラッドがグラスを掲げた。
「乾杯!」
四人はグラスを掲げて飲んだ。
パーティーは非常に盛り上がった。ブルーファングを討伐するために道中で何があったかという話や、皆でどうやって討伐したかという話、それに以前より全員が強くなったと褒め合っている。皆楽しそうだが、クロには無関心な話だ。
ブラッドが立ち上がり、笑顔で皆にお知らせをした。
「よし、皆いいか。今回、Cランク合格おめでとう。そこで、ヘファイストス先生からの祝いとして、二週間後に武術国家メラクレスの武闘大会に見学に行くぞ」
四人は外の世界を見られることを喜んだ。
「やったー!」
クロも表情には出さないが、内心ではどんな強い奴がいるかワクワクしていた。
この先、クロを染める色がこの武闘大会にあることは、まだクロは知らない。




