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数年ぶりに見た彼

数年ぶりに見た彼は相変わらず素敵な人だ。


 どうやらこの舞踏会、私が参加すると知らせが入ってから王宮では警備を一層強化することになったようだ。


そっと私達の近くに私服の騎士達もいて場を乱す輩に目を光らせていたみたい。


「なんでだよ? 俺達ブランシュちゃんに声を掛けただけじゃん!」

「そうだ!」

「おやおや、マイク・ウィンド伯爵子息、王宮の舞踏会で数名の男が一人の女性を取り囲み、名も名乗らずに声を掛け、有無を言わさず連れ出そうとするのはマナー違反ではありませんか?」


ノルヴァン様の言葉に一人の子息がチッと舌打ちをする。


「それにカインゼル殿下から直々に命令を受けているのですよ。マルリアーニ侯爵令嬢を警護するように、とね」

「俺らは何にもしていないからな!」

「どうぞこの場はお引き取り下さい。何でしたらあちらの方へお連れ致しますが?」


ノルヴァン様は会場の出入り口の方を指差して言うと、子息達はチッと舌打ちしながら離れていった。


「マルリアーニ様、無事で良かったです」

「ノルヴァン様、お久しぶりです。とても助かりました」


私がそう笑顔で言うと、ノルヴァン様は胸を苦しそうにしているし、彼の後ろにいた人達も何故かバタバタと倒れている。


「こらっ、ブランシュ。人前でそんなに笑顔を振りまいたら駄目だよ? 天使の笑顔は全ての人を魅了してしまうんだから微笑んではいけない」

「天使の笑顔だなんて。でも、わかりました。お兄様の言う通りにします」

「そうだね。じゃぁ、食べにいこうか」


私達が軽食を取りに歩き始めると何故か距離を置いて一定数付いてくる人達がいる事に気づいた。


気にしてはいけないと思っている。


ロラ姉様もモニカ姉様も食べ物を私の口に運んでくる。


「ブランシュ、あーん」


私は姉様達されるがままもぐもぐと食べ始める。


「姉様! 美味しいわっ」

「もぐもぐしているブランシュも可愛い♪」


その様子を見ていた人達がまた何人か跪いている。


「ブランシュ、気にしてはいけないわ?」


 みんな私の美しさで倒れているように見えるけれど、二人の従妹を見て倒れる人も一部いる事は知っているわ。


 刺繍クラブの人達がこっそり教えてくれたんだけど、姉様達や兄のファンクラブという物が存在するらしい。


ロラ姉様は私を守るために婚約者は要らないと断っているらしいが、水面下でカインゼル殿下の婚約者に内定しているのではないかと言われているようだ。


姉様なら立派な王太子妃になると思う!


因みに倒れてしまった人達はすぐに衛兵や騎士達によって会場の外へ運ばれていく。


それを見越した人員配置をしているのだろうか??


「食べる姿も可愛いな。ブランシュ嬢、久しぶり」


私達に声を掛けてきたのはコーウィン様。


「お久しぶりです。コーウィン様」


私達はコーウィン様に礼を執る。


「コーウィンさん、久しぶり。領地の方はどうですか?」

「あぁ、領地の方はかなり落ち着いたよ。五月蠅く言う者はもういないだろうな」

「あの女傑達をどうやって黙らせたんです?」

「あぁ、周りを叩いて埃を落としただけだ。綺麗になれば小言を言われることもないだろう?」

「まぁ、そうですが……」

「そろそろ次の曲かな。ブランシュ嬢、私と踊っていただけませんか?」


私は兄を見ると、兄は踊っておいでと言う。


初めて家族以外のエスコート。


震えながらホールの中央近くまで歩いていく。曲の始まりと共に礼をしてダンスが始まった。


「ブランシュ嬢はダンスが得意なのかな?」


大きな身体をしたコーウィン様は微笑みながら話し掛けてくる。

私は兄達と離れた不安と初めての異性とのダンス(父と兄は別)で緊張しながら足を動かすので精一杯だ。


「い、え、兄と踊るためだけに練習をしてきました」

「そうか。学院の生活はどうかな? 楽しいかい?」

「えぇ、皆様とても良くしてくれて楽しい毎日を送れています。学院が始まるまでは外に出たことも無かったし、学院でも最低限の事しかできないですが、クラブにも入ってとっても楽しいです」

「そうか、楽しんでいるようで良かった」

「コーウィン様は領地に戻ってから大丈夫でしたか? 両親も兄も私には何にも教えてくれないんですよ? 過保護ですよねっ」


「ブランシュを守りたいという家族の気持ちは痛いほど分かるよ。私は傷が癒えた後、君を迎えるために辺境伯の仕事を全力で取り組んで厄介事を片づけてきたんだ。もちろんヴェルナー殿やマルリアーニ侯爵の手を借りてね?」

「まぁ。父達が? 全然知りませんでした」


彼がそう言ったところで曲が終わってしまった。私達は礼をしてまた兄様の所へ戻っていく。


「ブランシュ嬢、近々邸に行ってもいいかな?」

「お父様達が良いと仰るなら、私は構いません。お客様なんてめったに来ないですし、歓迎します」


コーウィン様は兄と少し話をした後、すぐにその場を立ち去った。

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