僕は復讐を決意する
映像の中で彼女は浮気相手の男に媚びた喘ぎ声を上げていた。浮気相手の男は大学4年のサークルの先輩だった。明るい茶髪に高い身長、ガタイのいい身体つき、当然のように顔も整っていてサークル内では人気の人物だ。
ただ男からはよく思われてないらしく、悪い噂をいくつも聞いていた。彼女が複数人いるだとかセフレ自慢をするだとか、後はそう。人の女を寝取るのが趣味なのだという。
僕はあくまで噂だとたいして本気にしていなかったが、まさか自分の彼女がそのターゲットにされるなんて夢にも思っていなかった。
サークルではいつものように佐鳥先輩が女性に囲まれている。この男が僕にハメ撮りを送ってきたやつだ。僕の姿が視界に入っているにも関わらず特に反応はなかった。だが、端正な顔に浮かぶ笑みからはどこか醜悪なものを感じさせる。
おそらく僕のことを見下して優越感に浸っているのだろう。
彼女の恵美はサークルの仲の良い女友達たちと3人で楽しそうにしている。恵美は一度も染めたことがない濡れ羽色の黒髪が自慢だと言っていたことがある。胸元までたらした黒髪はほんの少しのクセもなく今日もきれいだった。
恵美は僕にハメ撮りが送られたことを知っているのだろうか。いや、多分知らないはずだ。おやすみおはようLINEがいつもと変わらずに来ているし、今日喋った感じも違和感がない。
逆に言うと、彼女にとって浮気したのは初めてではないことを意味する。もし初めてなら、僕に対していつもと全く同じ振る舞いができるなんて思いたくない。きっとハメ撮りされるのも何度も経験済みなのだろうと思うと心臓がキュッとする。
だから、常習犯なのかもしれない。
昨日の晩、ショックのあまり目眩がするのをこらえて、どうにか復讐できないか調べていた。残念なことに恋人関係でどちらか一方が浮気しても犯罪にはならない。婚約していれば慰謝料を請求できる可能性もあるらしいが、僕たちは婚約しているわけでもないので期待できない。
つまり、法的手段に頼らず社会的制裁を加えるしか復讐の方法はないのだ。
その1、ネット上にハメ撮りを公開する。
その2、佐鳥先輩の内定先にタレコミする。
その3、二人の家族にバラす。
どれも問題がある行為なのはわかっている。
だが、これが復讐だ。
自分自身に不利益が被ったとしてもやりとげたいことだった。
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