プロローグ
こんなことになるつもりはなかった。わたしはただこの親子を助けたかっただけなのに。
(かえってこの子たちを危険に晒してしまった)
後悔が押し寄せるがもう遅い。
急ぎ母親の傷は塞いだけれど、この傷は彼女の寿命を確実に蝕むだろう。
もっと自分に力が残っていれば!
けれど、もうほとんどの力を使い果たしてしまった。
それもこれも、わたしが力を暴走させてしまったせい。
霞んでいく意識の中で、不安げに顔を歪ませている少年へ手を伸ばす。
(ごめんなさい。でも、あなたのお母様の命だけは助けてみせるから)
視界に靄がかかる。
もう時間がない。それなのにこの子のことが気になって、なかなか瞳を閉ざす気にはなれなかった。
(お願い。笑って?)
さっきまでの微笑みを忘れないでほしい。後ろ髪を引かれる思いで願った途端、真っ白な光に包まれた。
(これは何?)
怪訝に思う暇もなく、わたしの中から何かが弾き飛ばされるのがわかった。
飛びだしてしまった二つの光。あれは、わたし自身だ。戸惑うように舞う光たちを眺めながら、もう本当に時間がないことを悟る。ああ、もう力がでない。お願い、わたしの半身たち。どうか時が来るまでこの親子を見守ってあげて。懇願して伸ばした手がみるみると小さくなっていく。
(みんな、ごめんなさい)
最後の力を振り絞り心から謝罪すると、意識を失った。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
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