臆病で何もできない自分
時間が作れない時は少し短めになります。
よく加筆修正します。
ここが天界だということを忘れてしまいそうなほどの灼熱。気管が火傷がしたのだろう、俺の喉と肺が痛む。
火だるまとなった人間らしき物体が俺に向かって助けを求めてくるが、目の前で力尽きた。元凶と思われる長身の紫髪の女は俺に強い殺気を向けてくる。
「お前、なんで生きてんだよ?召されなw?」
白い床を思い切り蹴り、ものすごい勢いで飛んでくる。踏ん張ったところが破壊されて粉々になる瞬間を、今まで生きてきて漫画でも見たことがなかった俺は、反応できなかった。
精神世界から意識が戻り、この状況。理解が追いつかないながらも、打開策を考えようとする。催眠状態にかかるか試して応戦するか、掻い潜って扉を目指すか。どちらにしても、賭けの要素が強かった。
一か八か、食らえ!
そう思って、手のひらを見せるが、催眠にかかった素振りもなく襲いかかってくる。俺は、腰が抜けて尻餅をつく。
「これ以上は止めろ、一条魅火、兵を減らしすぎだ。」
天使が、魅火と呼ばれる女性の振りかぶった右手を掴み、静止させる。魅火は「離せ!」と抵抗するが、全く動かない。天使は腕を掴みながら悟すふうに言う。
「いいか、貴様らは今、身体という実体を伴わない存在、つまり魂が生前の記憶を頼りに作り出した偶像だ。この天界で死んだ者、つまり、魂が死んだ者に輪廻転生はない。無になるのだ。貴様は人として、罪悪感は無いのか?」
その問いに、魅火は悪びれる様子もなく返す。
「知らねぇよババァ。あたしが攻撃した瞬間に止めにかからないで、何正義ぶってんだ?こんなに力あるくせに止めれないわけなかったよな?つーか、はよ離せ。」
天使はため息を吐きながら、掴んだ手に力を込めて無理矢理捻る。その瞬間、魅火の肘と肩の関節が外れ、「ひぎぃ!!」と情けない声が漏れる。
「即死だったからな、流石に救えなかった。殺気に気づいた時点で止めるべきだった。我の失態だ。……貴様のその力は、異世界で存分に振るえ。」
そういって天使は強引に扉に向かって投げ飛ばす。魅火は姿を消していった。俺はそのやり取りを見て、震えるしかなかった。単純な、生物としての危機を覚えるだけだった。呆然としている俺を見て、天使が俺の手を見て、話始める。
「《盲信の紋》か、悪く無い。恩寵自体、神しか与えられぬ賜物だが、貴様のそれは、人類から神と呼ばれていた人間の能力だ。大事に使え。」
俺は「は、はい!」と若干後退りし、引き攣った笑顔で白紙の魔導書を抱える。天使は基本無表情だったが、この時は少し哀れむような表情になっていた。
「……あの、女とは違う場所に転移させよう。何、心配するな、きっと協力者は現れる。王都からもそう遠くはないしな。…行くぞ。」
この時俺は、この人が天使だということを優しさのもとで再認識した。俺の真下に魔法陣できる。刹那、俺の身体は飲み込まれていく。若干の浮遊感とともに。
ん?浮遊感?
俺は垂直に落下していった。
いつか他の部分と結合させるかもしれません。